ぴっとり、という表現が適切なくらい名前ちゃんは嶺二さんにくっついていました。嶺二さんの腕に自分の腕を絡ませ、その腕にすりすり。嶺二さん、少し困った様子です。

「ね、ねえ名前ちゃん…」
「なあに?」

名前ちゃんは嶺二さんの腕に鼻をくっつけて匂いを嗅ぎ始めました。嶺二さん、ますます困ってしまっています。うーんと苦笑いをしていますが、名前ちゃんは全く止める気がなさそうです。

「あのね、名前ちゃん、そろそろほら、時間も遅いじゃない?」
「うん」
「だから帰った方がいいかなあって…お家のひと心配しちゃうし!」
「今日はお家に誰もいないの!」

名前ちゃんはとっても嬉しそうに伝えてくるものですから、嶺二さんは心が痛みました。何でいないの…という言葉を飲み込み、擦り寄る名前ちゃんの頭を撫でてあげます。

「そっか〜、でもそろそろ帰る時間だよね!嶺ちゃん送ってくよ!」
「ええ、何で」
「い、いやぁ」

何でって、そんなの襲いたくなるからに決まってるでしょ!
嶺二さんは心の中で叫びます。名前ちゃんに伝わるように力強く叫びましたが名前ちゃんはこてんと首を傾げたままです。そんな純粋そうな顔で見つめられたら何も言えません。嶺二さんは名前ちゃんの唇をふにふにと触りました。

「だってさ、僕も一応男だし、その、ね?」
「だからなあに?」

なかなかに手強いです。純粋1000%な名前ちゃんはずっと嶺二さんと一緒にいたいと目で訴えてきます。付き合いだして2ヶ月が過ぎた今、これ以上一緒にいるのは嶺二さんの限界なのですがそんなことは分からずに名前ちゃんはほっぺたを膨らませるのです。嶺二さんは散々指で遊んだ名前ちゃんの唇にちゅっと触れるだけのキスをしました。

「名前ちゃんのこと、大事にしたいんだよ」

ね?と嶺二さんは名前ちゃんを見つめます。お願い、分かって、という気持ちを込めているのですが、名前ちゃんにはイマイチ理解ができていません。

「大事にしてくれるなら一緒にいてくれてもいいじゃん…嶺ちゃんはわたしといたくないの…?」

じわぁ、と名前ちゃんの目に涙が溜まります。やってしまいました。嶺二さんはこれに弱いのです。純粋すぎる名前ちゃんには遠回しな言葉は無意味だったのだと悟り、嶺二さんは慌てて名前ちゃんの頭を撫でました。

「わああゴメンゴメン泣かないで?ね?」
「うぅ…嶺ちゃんのあほぉ…っ」
「うんうん僕が悪かったね、ゴメンね」
「いつもわたしばっかり嶺ちゃんが好きで、もうやだぁ…っ!」
「そんなことないよ、僕だって名前ちゃんのこと超〜〜好きだよ!ホント!」
「ほんと…?」

嶺二さんのあったかい手が名前ちゃんをだんだん落ち着かせ、名前ちゃんはスンスン鼻をすすりながらも嶺二さんを上目がちに見上げました。ほんと?すき?と何度も確認してくる名前ちゃんの鼻の頭はほんのり赤く、嶺二さんは思わずにやついてしまいそうになります。

「ゴメン僕が一方的に余裕ないだけだよ」
「余裕、って?」
「こういうこと…」

嶺二さんは名前ちゃんに再び口付けます。先程のキスとは違い、薄く唇を開いて舌を絡ませるキスです。ぬる、とした感触に名前ちゃんは思わず目を硬く閉じました。嶺ちゃんの舌熱い…。名前ちゃんはうっとりした様子です。はふはふと名前ちゃんの口から漏れ出す吐息さえ食べてしまうように嶺二さんは深く舌を絡め、時折唾液を啜ります。体から力が抜けていくのを感じて嶺二さんのシャツにすがり付く名前ちゃんですが、そんな乱れた姿に興奮した嶺二さんはいけない大人ですね。キスは続けたまま名前ちゃんの胸にそっと手を添えました。びっくりした名前ちゃんが一瞬肩を上げましたがお構い無しです。名前ちゃんの服のボタンを器用にあけ、その隙間に指を潜り込ませました。少し汗で湿る名前ちゃんの胸を優しく揉みます。

「んっ…ふ」

名前ちゃんの鼻から甘い声が漏れました。嶺二さんはさらに煽られます。少しだけ唇を離し、薄目で名前ちゃんを見つめました。

「はは、えっろい顔…かわいいよ」
「ふ、ぁん…っれい、ちゃ、?」
「もう少し脱がせてみてもいい?」

嶺二さんは名前ちゃんの胸の先端をくりくりと押し潰しながら口許だけ笑って見せました。ギラギラとした視線に名前ちゃんは戸惑います。この先、何されちゃうんだろう。純粋な名前ちゃんはその先が全く想像できないのです。

「や、はずかしい、よぉ…っ」
「でもきもちいでしょ?」
「ひうっ…それ、やぁあ…っ」

爪で先端を引っ掛かれ、それを素早く繰り返されると、名前ちゃんは情けない声を上げてしまいました。ぴりぴりとした快感と共に体の中心に響くようなじんとした熱。初めての感覚に名前ちゃんは泣き出す寸前です。

「大丈夫、お兄さんに任せて…」

嶺二さんは名前ちゃんの耳元で優しく囁くとその耳にもキスを落とし、舌を這わせました。名前ちゃんはびっくりです。そんなこと今まで1度もされたことがなかったのです。

「や、あんん…っみみ、やっ」
「名前ちゃんは耳も弱いんだねぇ」
「ひゃめ…っちがうぅ…っ」

びくびく体を揺らす名前ちゃんはついに泣き出してしまいました。こんなの知らない、何これ!と奥歯を噛み締めて耐えようとしますがその意に反してえっちな声も息も漏れまくりです。名前ちゃんはこわくなりました。

「か、かえるぅ…っ」
「…、え?」

名前ちゃんは嶺二さんのシャツを握りしめながら唐突にそんなことを言い出します。今度は嶺二さんがびっくりする番です。帰る?今帰るって言った?などと確かめたい気持ちでいっぱいですが涙たっぷりのおめめに睨み付けられては嫌でも確信してしまいました。

「ゴメン…急ぎすぎちゃったね…」
「う…っく」

目の前でぼろぼろ涙を溢す名前ちゃんを見て嶺二さんは激しく後悔をしました。やっぱり強引にでも帰せば良かった。僕がもっと我慢したら良かった。後悔しても何も変わらないのですがしないわけにはいきません。今夜はずっと一緒にいたいという純粋な名前ちゃんの気持ちを踏みにじってしまったのです。嶺二さんは困ったように眉を下げ、名前ちゃんの頭を優しく撫でました。

「もうしないよ、ゴメンね」
「れ、れいちゃ、こわかっ、たぁ」
「うん、ゴメン。名前ちゃんがあまりにも可愛い声出すもんだから、お兄さんがっつきすぎちゃった」

てへへ、というような仕草を見せたあと、嶺二さんはもう1度困ったように笑いながら、名前ちゃんの頭をぽんぽん撫で、立ち上がりました。

「さ、送るよ。夜は危ないからね」

僕みたいな男といるとさ。


(( 甘え上手喘ぎ上手 ))
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