「トキヤトキヤ、今度の日曜日空いてる?」
「午前中に少し撮影がありますが短時間で終わる予定なので午後からは空いてますよ。どうしたのですか?」
「デートしよ」

PSPの画面から目を離さないまま名前ちゃんが言うと、トキヤさんは眉間に皺を寄せました。名前ちゃんはうたプリMUSICの最高に難しいレベルを淡々と熟しています。1曲が終わるとやっと顔を上げてトキヤさんと目を合わせました。

「何その顔」

名前ちゃんはそう言いながらPSPを手放します。PSPの画面からはHAYATOくんが名前ちゃんを褒めるような言葉を言っているのが聞こえました。トキヤさんはじっとり名前ちゃんを見つめるばかりです。

「ねぇトキヤ、何か言ってよ」
「あなたは何を考えているのです?」
「え?」

急にトキヤが怒り出した。名前ちゃんはめんどくさいなー、と心の中でぼやいて頭を掻きます。

「何が」
「では訊きますが、インフルエンザの予防接種は受けたのですか?」
「まだだけど」
「今の時期、風邪が大流行しているのは知っていますか?」
「あぁ、確かに風邪引いてる友達多いかも」
「マスク着用を心掛けていますか?」
「特に心掛けてない」
「そういうことです」

トキヤさんはどやぁっと得意げな顔をします。名前ちゃんはムッとしながらトキヤさんを睨みました。

「だから何」
「風邪を引いたらどうするのですかという意味です、何で分からないんですか!」
「風邪引いたらトキヤが看病してくれるもん」
「しませんよそんな面倒なこと」
「ひどい…」

名前ちゃんはショックを受けた顔をしてみました。本当は全然ショックでも何でもありませんし、そんなことを言っていてもトキヤさんは看病してくれることを知っていたので大丈夫です。ですが、名前ちゃんはトキヤさんを困らせることが大好きだったのです。

「トキヤは、いつもそうじゃん」
「はい?」
「私はただトキヤとデートしたいだけなのにトキヤは私とデートしたくないんだ…」
「…」

名前ちゃんは声を震えさせます。もちろん意図的にです。トキヤさんは少しだけ真剣な顔になり、名前ちゃんを見つめます。

「トキヤはアイドルだから、風邪引いたら困るし、私のわがままだって分かってるよ。でも、トキヤと一緒にいたいって思うのもだめなの?そんなのやだよぉ…」

しばらく瞬きを我慢していた名前ちゃんの目にはゆらゆら涙が浮かびました。トキヤさんはそれを見て思わず心を打たれます。あぁ私はなんてことを。可愛い可愛い名前ちゃんのわがままなら聞いてあげないわけには行きません。

「仕方ないですね…、では外出をすることにしましょう」
「やったあ!」

名前ちゃんは無邪気に笑って見せます。心の中ではにやりと嫌な笑顔を浮かべながら「計画通り…」と呟いています。そんな名前ちゃんも、次の言葉で真顔になりました。

「しかし風邪を引いたら本当に困ります。ですので2人っきりで過ごせる場所へ行きましょう」
「2人っきり?どこそこ?」
「そうですね、例えばホテルとか」


翌日、名前ちゃんは大人しく家でうたプリMUSICを極めていました。


(( 貴方の為の風邪対策 ))
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