「クリスマスイブを一緒に過ごすくらいなんだから、さぞかし仲が良いんだろうな」
「…」

嫌味だ。
翔ちゃん達がお仕事でサンタさんになると知り、前々から見たいとおねだりしていたサンタさん衣装をわざわざ自撮りして送ってくれたのに、既読無視を決め込んでしまったことに拗ねているんだと思う。というか絶対にそう。サンタさん衣装は本当にかっこよかったんだけど、返信する暇がないくらい遊んでいたわたしにチクリチクリと言葉を刺す。

「で、楽しかった? 俺の居ないイブ」
「超楽しかった! ツリーがすっごく大きくて、イルミネーションも綺麗でさあ!」
「へえ〜、ふうん」

どうだったかと言われるとそれはもう楽しかった。刺々しい質問も気にならないくらいに楽しかった。あれこれ話したくて翔ちゃんを見つめても、いつものぱっちりおめめが半分くらいしか開いてなくて笑ってしまう。酷い態度だ。

「ごめんって。でも翔ちゃんはお仕事だったから来れなかったでしょ」
「来るかとも聞かれてないしな」
「まあ、女の子だけのパーティーだから…」
「毎年俺と過ごしたがってたのに」

あ、ちょっと寂しそう。わたしだって翔ちゃんがお仕事じゃなければ一緒に過ごしたけど、今年はスターリッシュの皆でサンタさんの格好して地方の小中学校にクッキーを配りに行くって聞いてたから。夜だけでも空けておけば良かっただろうか。

「そうだ、写真見る? ツリーの下にプレゼントの箱が飾ってあってね、」
「…ほんとに楽しかったんだな、お前」

ついに呆れてしまった翔ちゃんは、可笑しそうにわたしのスマホを覗き込む。スッ、スッ、と右へスライドして撮ってきた写真を見せながら説明した。ここで見た夜景が綺麗だったとか、ここで食べたクラムチャウダーが美味しかったとか。そしてそんな写真達の合間に翔ちゃんの自撮りをしっかり保存してあるのもバレてしまう。

「あ、俺」
「サンタ翔ちゃん可愛かったー!」
「可愛かった?」
「か、かっこよかったです」
「恥ずかしいから保存すんな」
「やだよ、せっかく送ってくれたのに」
「じゃあ返事をしろよ」

片手でぶにっと頬を潰されて、はい、とちいさく返事をする。やっぱり返信しなかったことに拗ねてたんだ。かわいい。

「サンタ翔ちゃんはどうだった? 子供に喜んでもらえた?」
「まあな! 俺らの知名度もだんだん上がってきててさ、あんなちっちゃい子供でも俺らのことテレビで見てるって!」
「翔ちゃん達、毎日テレビ出てるもんね」
「有り難いことに」

お仕事の話になるとパアッと笑顔になる翔ちゃん。よっぽど楽しかったんだろうなあ。白いお髭は付けたんだろうか。子供達にはなんて言ってもらえただろうか。聞きたいことはたくさんある。わたしの話だって勿論聞いてほしい。

「何県まで配りに行ったの?」
「そんなに遠くまでは行ってねえけど…、行く前に話したよな」
「えへへ」
「すぐ忘れる」
「ごめんって!」

翔ちゃんがガバッと抱きついてきたから、キャーッなんて叫びながら掴まった。そのまま揺すられてぐらつくわたしは翔ちゃんにしがみつきながら声を上げて笑う。翔ちゃんも楽しそうに笑ってる。

「あはは、ごめんごめん! もっかい教えて」
「別にいいよ。あんときお前眠そうだったし、半分寝てたんだろ」
「寝顔に話し掛けてたの?」
「ちっげえ〜! このお寝ぼけ娘!」
「あはは、ギブギブ!」

一通り笑ってから顔を上げると、思いの外至近距離で視線が合う。あ、と思ったら翔ちゃんもその気で、どちらからともなく軽く唇を合わせた。ちゅ、と小さなリップ音。

「今日、疲れたろ」
「うん…たくさんはしゃいだから」
「だよな。俺も疲れた」

疲れたって言いながら、翔ちゃんの手が服の中に入ってくる。するりと背中を撫でられると思わず肩が跳ね、不意打ちを食らって過剰な反応をしてしまった自分に恥ずかしくなった。

「な、に、翔ちゃん」
「…小せぇこと言うけど、疲れてても今から俺の相手して」
「えっ、」
「1回でいいから」

唇が合わさって、舌が入ってくる。なに、なに、どういうこと? 小さいこと言うけど? 理解が追い付かないまま翔ちゃんの舌を感じ、瞼を閉じた。もしかして翔ちゃん、クリスマス一緒に過ごしたかったのかなあ。

「、ん…」
「名前、ベッド行こ」

熱っぽい声で囁かれると、ドキッとする。この掠れた声に弱い。ねだっているくせに拒絶させないような圧力。今から抱かれてしまうのだと感じさせられる。嫉妬のような欲情のような、劣情を隠さない翔ちゃんが愛おしい。

「ここで、いいから…」
「いいのか?」
「うん…っ、でも、優しくしてね…」
「できたらな」

ちゅ、ちゅう、唇を貪られてソファに押し倒される。足をソファに上げてわたしの脚を割り、体を密着させながら覆い被さってくる翔ちゃん。見下ろされるような目線が、ちょっと興奮する。

「電気は、消してね…」
「はいはい、注文が多いお姫様だな」

ピッ、とリモコンを押す音と共に視界が暗くなる。翔ちゃんの大きな手がわたしの肌に触れ、恥ずかしさを誤魔化すためにわたしは翔ちゃんの首に腕を回した。

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アイドルとして売れてきたら一緒にクリスマスは過ごせませんよね。名前様、お付き合いありがとうございました。
20171226
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