「ふっ、あ…?」

自分の声にびっくりして目を覚ます。何だか寝言を言っていた気が、しないでもない。いつの間に寝ちゃったのか覚えてないけどわたしの上には毛布が掛かっていて、隣に翔ちゃんが座っていた。翔ちゃんがこれ掛けてくれたのかな。

「ん…翔ちゃん…」
「起きたか?」

ぱたん、と台本を畳む翔ちゃん。お家に居ても仕事熱心で感心する。わたしを見下ろしながら頭を撫でてくれて、まだ体が暖かいから心地好い。翔ちゃんの手のひらも暖かい。

「わたし寝ちゃってたんだね…」
「帰ってきたらソファですごい格好して倒れてたんだぜ。適当に寝かせたけど体痛くないか?」
「うん、ありがとう」

優しい、好き。翔ちゃんの手のひらに頬を寄せる。寝かせてくれて、毛布を掛けてくれて、隣に居てくれる、それだけがこんなに嬉しい。だいすき。こういうふとした瞬間に幸せを感じる。嬉しくてにまにましながら、もう少し翔ちゃんの体温を感じたくて腕を引いた。翔ちゃんが上体を倒してわたしに近付いてくれる。

「なぁんだよ、甘えんぼ」
「寒いんだもん…」
「寒いだけ?」
「んー…」

構ってちゃんしても翔ちゃんは嫌がらない。顔がくっつきそうなほど近い距離で優しく微笑んでくれるのが嬉しくて、ちゅ、とキスをしてみた。翔ちゃんが一瞬目を丸くしたけど、また笑ってほっぺたを撫でてくれる。

「まだ寝ぼけてるな?」
「起きたもん」
「どうだか」

もっかい、ちゅう。翔ちゃんの唇が柔らかくて、押し当てると安心する。だいすき。もっとしたくなる。

「…名前」
「ん…、」

翔ちゃんの舌が入ってくる。おずおずと舌を差し出すと絡め取られ、ゆっくり舐められながら翔ちゃんにしがみついた。翔ちゃんがわたしの顔のすぐ横に腕をつくと、ギシ、とソファが弱く鳴く。なんだかえっちな展開になってきてしまった。

「ん、む」

翔ちゃんの大きな手のひらがほっぺたを包んでくれて、優しく撫でてくれるのが心地好い。熱い舌で口の中を舐められるのも、すぐ近くにある体温も、全部心地好い。満たされる。翔ちゃんとキスするだけでこんなに幸せになる。もっと、もっと翔ちゃんとキスしていたい。わたしの吐息を飲み込むように熱いキスをする翔ちゃんは、息継ぎのために僅かに隙間を作りながら角度を変えて、また舌で愛撫してくる。甘い甘いキスに体が熱くなる。上にいる翔ちゃんの唾液が流れてきて、こく、と喉を鳴らしてそれを飲み込むと、翔ちゃんは少し恥ずかしそうにわたしの頭を撫でて唇を離した。

「わり…」
「翔ちゃん…」
「ん?」

キス直後の翔ちゃんは少し顔が赤い。かわいい、なんて言ったら怒られるから言わないけど、愛おしくて心臓がぎゅうってなる。わたしもきっと同じ顔をしてるんだろうなあ。

「ちゅう、やめないで…」
「えっ」
「もっかいしよ…? もっと、したい…」

翔ちゃんの服を握ると、翔ちゃんが小さくため息をついた。

「お前、やっぱまだ寝ぼけてるだろ。珍しいな」
「そう…? わたし、へんかな…?」
「変じゃねーよ。可愛い」

翔ちゃんが体勢を変えて、わたしの上へ覆い被さってくる。色気を含んだ目でわたしを見下ろし、唇を重ね合わせてまたほっぺたを撫でてくれた。舌が、手が、気持ちいい。膝で翔ちゃんの腰を挟むようにして甘えると、翔ちゃんはさらに深くキスをしてくる。舌を舐められているだけなのにどうしてこんなに気持ちいいんだろうか。頭がふわふわして溶けちゃいそう。翔ちゃん、だいすき。

「ん、…は、翔ちゃん…」
「目ぇ潤んでる、気持ちよかった?」
「おわり…? もっと、しないの…?」

翔ちゃんの指がわたしの唇に触れる。

「お前は甘えてるだけだろうけど、これ以上続けるとシたくなる…」
「だって翔ちゃんのちゅう気持ちいいから…あと1回だけ、してほしい…」
「…」

返事をしない翔ちゃんの首に腕を回すと、翔ちゃんは少し唇を尖らせて考えてるみたい。眉間にシワを寄せてて可愛い。待ちきれなくて、尖らせた唇をかぷり。そのまま舌で唇をなぞると、翔ちゃんは薄く唇を開いて舌を絡め、キスをしてくれた。でも、さっきまでの舌を深く絡めるキスじゃなくて、舌先をちろちろ舐められるキス。これはわたしが弱いえっちなキスだ。

「っ、ん、ん…っ、」

びくっと体が跳ねる。翔ちゃんの背中に腕を回してしがみつき、それでいて唇を離そうとしても翔ちゃんはやめない。小刻みに舌を動かして舌先だけを責める。声が、出ちゃう。

「ん、ぁん、ん…っ、ふ」

意地悪だ。このキスに弱いことを知ってるくせに、すぐ気持ちよくなっちゃうのも知ってるくせに、翔ちゃんはわざとやってるんだ。わたしの顔を両手でがっしりホールドして舌先で責めて、体を捩っても逃げられない。びく、びく、と体が反応する度に恥ずかしい。えっちな気分になってくる。ただ甘えたかっただけなのに、翔ちゃんの体温が心地好かっただけなのに、わたしの足の間に翔ちゃんの熱が少し当たる。翔ちゃんも、えっちな気分になっちゃったんだ。

「しょうちゃ…っ、ん、ん、っ」
「むり、やっぱ止まんねー…っ」

翔ちゃんの手がするする下りてきてわたしの胸に触れる。もしかして、ここで。考えるだけでブワッと顔が熱くなった。翔ちゃんとするのが嫌なわけじゃない、でも、決して慣れたわけでもない。恥ずかしくて目が合わせられなくなる。感じたい、でも、逃げちゃいたい。翔ちゃんの胸板を弱々しく押し返してみる。

「翔ちゃん、まって…」
「シたくない?」
「は、恥ずかしいから…」

顔を背けたわたしに優しくキスをしてくれる。翔ちゃんの手のひらが頭を撫でて、それを繰り返されると心地好くなってきて、翔ちゃんに応えてあげたくなる。恥ずかしいけど、翔ちゃんがシたいなら。

「ここじゃやだ…、翔ちゃんのお部屋でも、いい…?」
「無理しなくてもいいよ。頑張ってくれるのは嬉しいけどさ」

翔ちゃんがわたしに気を遣い始めた。シたくないわけじゃないけど、上手く伝えられない。翔ちゃんの体もわたしの体も火照ってる。あとはわたしが翔ちゃんに身を委ねるだけなんだけど、えっちはまだ慣れない。困って翔ちゃんを見上げると、翔ちゃんはわたしのおでこにキスをする。

「じゃあ、俺の部屋行こ。ベッドでキスだけさせて」
「キスだけでいいの?」
「お前がシたくなったらでいいよ。今はキスだけで満足するなら、俺もそれでいいから」

翔ちゃんはいつも優しい。わたしのペースに合わせて我慢してくれる。いつまでもそれに甘えてちゃいけないけど、少しホッとしてしまった。

「うん、たくさんキスしたい…」

わがままを言ってるのに翔ちゃんは優しく微笑んでわたしを抱き上げてくれる。そのまま部屋まで抱っこしてくれて、ベッドにゆっくり下ろしてくれた。明かりを付けない薄暗い翔ちゃんの部屋、翔ちゃんのにおい、何だか緊張する。

「お前が嫌って言うまで何時間でもキスするからな」
「そ、そんなにするの!?」

わたしの反応に笑う翔ちゃん、釣られてわたしも笑う。冗談だと分かっていても、ちょっと嬉しい。翔ちゃんとなら何時間でもキスしていたい。腕を広げて求めると、翔ちゃんはまたわたしに覆い被さってキスをしてくれた。とろとろに蕩けるまで、甘いキスを。

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糖度高めです。名前様、お付き合いありがとうございました。
20170926
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