(( 愛に溺れる ))




「なあ、口開けろ」

翔ちゃんの伏せられた睫毛が長くて思わず見とれてしまった。距離が近すぎて上手く見えないけど、目も綺麗で、熱を帯びたように少し濡れている。光の反射でキラキラ光ってずっと見ていられるけど、短気な翔ちゃんは待ってくれなかった。

「こーら」

翔ちゃんがわたしのほっぺを潰すように片手で持ち上げ、ハッと我に返る。彼氏の顔が綺麗すぎるのも問題で、たまにこうして見とれてしまうことがある。翔ちゃんは肌までキメが細かい。

「なんか違うこと考えてたろ」
「そ、そんなことない」
「今は俺に集中しろって」

翔ちゃんのこと考えてたんだけどなあ、なんて言わせてもらえないうちに翔ちゃんの唇がわたしのそれへ重なった。ちゅっ、ちゅっ、と何度かバードキス。わざとリップ音を立てて何度も啄まれ、その心地好さに思わず翔ちゃんのシャツを握った。翔ちゃんはわたしの唇を舌でなぞり、ここを開けろとばかりに熱を擦り付けてくる。おずおず開くと舌を引き摺り出され、遠慮がちな吸引と無遠慮に絡み付く舌に直ぐに翻弄された。舌と舌が擦れ合うぬるっとした独特の感触に未だ慣れずにびくっと肩を跳ねさせる。翔ちゃんはわたしの髪を優しく撫でながら角度を変えてさらに深く貪ってきた。

「ん、む…っは」
「…ん」

熱い。翔ちゃんの舌は熱くて絡んでるわたしの舌まで蕩けそう。舌の根本まで絡めてくるから唾液まで絡む。わたしのか翔ちゃんのか分からない口から溢れそうになった唾液をこくんと飲み込むと、翔ちゃんは優しくわたしの頬を撫でて唇を離した。翔ちゃんの唇が唾液で濡れている。

「…もうそんな顔してんのかよ」

えっちな目をした翔ちゃんが嬉しそうに笑う。まるでわたしが翔ちゃんを欲しがってるような言い方をするけど、翔ちゃんだって欲情してるのバレバレだ。翔ちゃんの指が首筋に降りてきて、そっと項をなぞってきた。

「っ…」
「なあ、したい?」

翔ちゃんはたまにこうやってわたしに恥ずかしいことを言わせたがる。前にこういうのは嫌だって言ったら男のロマンなんだから仕方ねえだろって言われたことがあったっけ。翔ちゃんの艶っぽい唇が形良く弧を描いて、わたしの返事をじっと待っている。したい、なんてはしたない言葉を女の子に言わせるなんて信じられない、のに。

「し…たい…」

顔から火が出そうで翔ちゃんから視線を外した。翔ちゃんが嬉しそうにわたしの額に自分の額を合わせてきてぐりぐり揺れる。真っ赤であろうわたしの頬を両手で包むと唇まで一緒にくっ付けた。

「っ…ふ」

頬に添えられる手も出会った頃に比べれば一回り大きくなっていて、舌を入れるのとほぼ同時に翔ちゃんの手がわたしの頬から離された。わたしの後頭部の裏でカシャンと音がする。

「ん、…んん、ん」
「…は」

ちろちろと舌先を遊び、歯裏をぞろりとなぞった。歯列を丁寧になぞっていって上顎を掠めながら舌へ戻り、わたしの舌に熱を絡めるように根本までねっとり愛撫される。翔ちゃんの手はゆっくりわたしのバレッタを外して自由になった髪を梳くように撫でていき、心地好い刺激と口腔への刺激とのギャップにどきまぎした。口内から翔ちゃんの舌がゆっくり抜き取られる。

「は…ふ」

唾液を舐めとるように唇に吸い付いてから顔が離れた。濡れた唇を自分でもぺろっと舐めた翔ちゃんは髪を止めているヘアピンを慣れた手付きで外していく。

「とっちゃうの…?」
「だって“する”んだろ?」

ベッドサイドのローテーブルに翔ちゃんのバングルとわたしのバレッタが並んでいて、その隣へ翔ちゃんの赤いヘアピンが置かれていった。回らない頭でぼうっとそれを眺めていたら翔ちゃんがわたしの肩をトンと優しく押す。

「だーから、お前は俺に集中しろって」

翔ちゃんの手がわたしの背中を支えながら優しく押し倒された。天井を遮る翔ちゃんの顔が近い。獣のように光る瞳には熱が籠っていてこんな目を見るようになったのはいつからか考えていたらまた唇を塞がれた。何度も合わさる舌が熱くて、そっと触れられた胸が高鳴った気がする。服の上から壊れ物でも扱うように触れる翔ちゃんは焦らしているのか愉しんでいるのか分からないけど、わたしの言葉を待ってるみたいで恥ずかしい。親指が中心を撫でる。

「んっ…」

息が漏れると翔ちゃんが顔を離し、熱を纏った目でわたしに強請るように視線を絡めてくるけど先程あんな恥ずかしいことを言わせたのだからわたしは言うつもりはない。代わりにこちらも強請るように見上げたら翔ちゃんは小さく笑ってからわたしのシャツのボタンを外してきた。今回はわたしの勝ちということで。

「俺の、脱がす?」
「別にいいよ」
「そっか」

わたしをあっという間に下着姿にした後、自分の服を捲って脱いだ。見える腹筋が逞しくてまた鍛えたなあなんて感心してしまう。わたしの体に戻ってきた手が背中を這い、今ではすっかり慣れたようにぷちんと下着のホックを外した。解放された胸が遠慮がちに上を向いている。

「えろい胸」
「さ、寒いから…」
「触られたいから、じゃなくて?」

翔ちゃんが意地悪くにやついて指腹で中心を撫ぜた。素直に言わないわたしを指でも責め立てるように動き、固くなっていくそれに爪を引っ掻ける。小刻みに揺らされるとさらに固くなって背中が浮いてきてしまって恥ずかしい。まるで翔ちゃんに差し出すように胸を突き出し、それに気分を良くしたのか翔ちゃんは舌先を尖らせてつついてくる。唾液を乗せた舌が熱くて蕩けそう。

「あ、ん」

控え目に口から溢れる声が慣れなくて目を閉じてしまうと翔ちゃんは唇で咥えながら中で舌を動かした。一層激しくなっていく愛撫に腰まで浮いて、歯が先を掠める度にはしたなく声が出る。脳の芯が溶かされるようで気持ちよくて思わず翔ちゃんの襟足を握ると翔ちゃんが湿った音を立てながら吸引して、母乳なんか出ないのにわたしの反応を窺った。腰まで溶けそう。

「しょう、ちゃ」
「今日はこっちも…」
「…っは、ん!嘘っ…?」

わたしが無抵抗だったことをいいことに翔ちゃんがわたしのショーツを足首まで丸め、少し脚を開かせてからそこへ顔を埋めた。ワンテンポ遅れて押し返そうとするのに、ぢゅ、う、と下品な音を立てて吸い付くから手を添えるだけになってしまう。器用に舌で皮を剥くと露出したそこに唾液を擦り込むように小刻みに舐めた。脳に直接響く暴力的な快感に反射的に腰が跳ねる。

「あっ、ん…っやん」
「そんな押し付けてこなくてもしてやるって」
「ち、が」

びくん、びくんと舐められる度に跳ねる腰に小さく笑いながら翔ちゃんは舌を動かした。してほしくて動いてるんじゃないのに欲しがるように跳ねる腰を止められない。先程まで口内を、胸を虐めていた舌が自分の弱いところをなぞるのを見るのは視覚的にも責められている気分だった。舐めては吸い、舐めては吸いの繰り返しなのにこんなにも気持ちよくて声を抑えられない。

「あ、あ、あぁあ…っ」
「ここほんと弱いよな」
「んあっ、やあ…っあ」

翔ちゃんの熱い息が掛かるだけでも腰が跳ねる。口の回りから顎まで濡らした翔ちゃんが顔を上げて自分の指に舌を伝わせた。綺麗に手入れされた爪は短くて艶やかな黒に包まれている。それを濡らすようにじっくり唾液を絡めて見せつけるように視線を飛ばしてくるから気恥ずかしくて見ていられない。翔ちゃんの口から指が引き抜かれると、それがわたしの中へ埋まっていく。

「ん、あああ…っ」
「今日はどっちがいい?」

翔ちゃんの指が奥まで埋まり、ゆっくり引き抜かれる。また埋まって引き抜き、埋まって引き抜く。次第にぬちっぬちっと内部から粘着音が響いてきて恥ずかしくてどうしようもない。何度体を重ねても慣れなくて、自分が翔ちゃんにはっきりと感じているのを認めさせられるようで消えちゃいたい。翔ちゃんが愉しそうにわたしの耳許で、なあ、と声を漏らす。

「ほら選べよ、浅いとこと深いとこ、どっちにする?」

指を追加して翔ちゃんが器用に中を解しながらわたしの耳を舐める。耳の中へ舌を入れられるとまるで直接鼓膜を舐められているのではないかと勘違いするほど奥の方で水音が響くので苦手だった。自分の声が聴こえにくくなったのをいいことに無遠慮に声を漏らしてしまう。

「ひゃ、あ、ああ〜…っ」
「なあどっちにする?早く」

翔ちゃんが中から指を抜き、わたしの耳を舐め続けながらベルトを外す。いつからこんなに器用に、そしてスムーズに行為を進めるようになったのか、翔ちゃんはどんどんかっこよくなっていってずるい。熱いモノをわたしの入り口にくっついてぬめらせながら蜜を先端に擦り付けた。

「ほーら、早くしないと俺が選んじまうぞ?」
「あさっ、あ、あさいとこぉ…っ」

奥に来たら長期に渡って連続でされると分かりきっていたから必死に翔ちゃんに伝えると、翔ちゃんがにまぁっと満足そうに笑った。額に掛かるわたしの髪を退けてくれる。

「浅いとこ、な!」
「んはあっう…っ!あ!あ!」

急に翔ちゃんの先端が入ってきて恥骨の裏を擦る。前回はここを何十分も指で虐められて死ぬ思いをしたというのに飽きずに腰を遣ってわたしを殺しにくる翔ちゃんが憎い。自分で選んだとはいえわたしは喉を反らしながら必死にシーツを握った。

「あっああんっん!あ…っはゃ、」
「っ…締めすぎ、もう少し我慢して」
「も、むり、あんっぃあ、い、」
「くっ…も、おまえ…っ」

いく、なんて言う前に太股が痙攣して腰が跳ねる。どくどく中が脈打って翔ちゃんのモノがびくんってしたのが分かった。わたしの弱いところを熟知してるんだから我慢しろなんて言うならもっと違うところを擦ればいいのに翔ちゃんは息を飲むように体を揺らしながらわたしの頭を撫でる。

「もう少し我慢しろって言っただろ…」
「うるさ…、翔ちゃんが悪いんじゃん」
「お前のいいとこ当てちゃうから?」
「っ…ばか!」

にやける翔ちゃんが憎らしい。でもお前が言ったんだからな、と言いながら翔ちゃんがわたしの太股を掴む。

「浅いとこがいいって、さっき強請ってきたじゃん」
「や、あ…っねだって、なんか、っ、あん…っ!」
「違わねえだろ、喜んでんだからここ」
「あっあぁ…っや、やだ…あっ」

膣内はきゅうきゅう締まって翔ちゃんのモノを象る。翔ちゃんが息を乱しながら何度も浅く腰を振って恥骨に沿うように滑るとまた目の前がチカチカしてきて必死に唇を噛んだ。

「あ、あぁあ、ああ」
「…なーんて、結局どっちもするんだけどな」

翔ちゃんが唇を舐める姿が煽情的で不覚にもかっこいいなあなんて見上げていたら、翔ちゃんのモノがずんっと奥まで入ってくる。一気に奥まで叩くから子宮が持ち上げられた気がして声すら出なかった。喉が引き攣って涙が滲んできて翔ちゃんがよく見えない。

「あ…っは、く」
「あ、わり、息できるか?ほら…ごめんな」

びくびく痙攣する身体を翔ちゃんがゆっくり摩って落ち着かせてくれる。だったら抜いてほしいんだけど息ができるようになるまで翔ちゃんがわたしの顔をじっと覗き込んでいた。ゆらゆら翔ちゃんが歪んで見えて閉まらない口から唾液が垂れる。翔ちゃんがそこにキスを落としてからゆっくり息を吐いた。

「生殺し…」
「しょうちゃんが、急にするから…っ」
「お、もういけるか?」
「いけるわけ、な、あっ、あ?」

わたしの話なんて聞いちゃいないようで緩く腰を動かし出された振動でまた唾液が垂れた。ゆっくりとしたストロークにすらびくびく内腿が引き攣って翔ちゃんの胸板を押したけど翔ちゃんは眉を歪めて膣内を割り裂いていくだけ、気持ちよさそうな顔は色っぽいし玉になった汗が額に滲み出てるのも煽られるんだけど頭に熱が籠って正直辛い。翔ちゃんの腰遣いがだんだん速くなっていく。

「あ、やぁっ…も、とゆっくり、し…んっ」
「っ…は」

奥を突かれる度に子宮まで揺さぶられる。ごりごり無遠慮に膣内を擦りながら中で抉るような動きをされると意識が飛びそうになった。喘いでも快感が軽減されることはなくて苦しいまま翔ちゃんにしがみつくと、翔ちゃんはわたしを気遣って動きを止めていたとは思えないほど深いストロークを繰り返してきて肌同士が乾いた音を立てる。ぐっちゅぐっちゅと掻き混ぜるような水音もまた羞恥を煽って限界はとっくに迎えていた。

「や、もう、い、しょちゃ…っあ!あん!」
「俺も、で、る…っ」

喉が引き攣ったのと同時くらいに膣内に熱い精液が注がれた。勢い良く奥の壁を叩く。翔ちゃんの掠れた声を耳許で聴きながら今日はあと何回出されるんだろう、なんてことをぼんやり考えた。





「毎回思うけど、わたしを気遣おうって気はある?」

結局5ラウンド。絶倫ってわけじゃないから1回1回休憩は入るものの回復はかなり早い。若さなのか単に性欲が強いのか。悲鳴を上げている腰をわざとらしく摩ると翔ちゃんが申し訳なさそうに笑う。

「なんかこう、1回始まっちまうと止まんねえんだよな」
「それで彼女が苦しんでても?」
「その顔がそそるっつーか、…おい言わせんなよ」
「いや…何でそこで恥じらうの?」

翔ちゃんが恥ずかしそうにはにかみながらわたしを引き寄せて額にキスを落とした。お詫びとでも言いたそうな可愛らしいキスだけど生憎こんなことでは許せそうにないし、こういった行為に慣れる前の翔ちゃんの方がよっぽど遠慮していて紳士的だったのに。

「お前が可愛いから欲しくなんだよ、だからしょうがねえだろ。風呂にお湯ためてくるから一緒に入るぞ」
「…それで?」
「全部洗ってやるし、髪を乾かしてやる。で、夕飯は俺が作る。今夜はお前が寝るまで頭撫でてる。どうだ」
「よろしい」

…こういう対応は手馴れてきたから善しとするか。


END
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イケ翔練習です。こんな余裕ある翔ちゃんは翔ちゃんじゃない、という方は+5年後翔ちゃんに変換していただけたら嬉しいです。名前様、お付き合いありがとうございました。
20160618
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