彼のことをじっと見詰める。白い肌に金髪がよく似合っていて、綺麗な顔立ちをした彼はいつ見ても惚れ惚れするような容姿だ。アイドルを目指すだけあり、普通の男の子とは違う雰囲気が出ている。




(( 相思相愛 ))




(かっこいいなぁ…)

こんな人が彼氏なんて、恐れ多い気もするが、勿論自慢の彼氏だ。恋愛禁止のこの学校では当然公表はできないが、それでも十分幸せを感じていた。じっと見詰めていれば、ついに彼が視線に気付く。バチッと目があった瞬間にドキリと心臓が跳ね上がり、びっくりして思わず視線を上へ外した。

「…名前?」
「は、はいっ」

ドキドキと心臓が煩い。ずっと見詰めていたことがバレたら、またいじられる。何より、彼よりも自分の気持ちの方が大きいように感じて嫌なのだ。
ちらりと彼に視線を戻すと、彼もじっとこちらを見詰めていた。

「翔、ちゃん?」
「こういうの、好きなのか?」
「え?」

突然の言葉に首を傾げると、彼は帽子を取り彼女の前に差し出す。

「帽子、見てたんだろ?」
「え、…あぁ、そうそう!」

咄嗟に2、3回頷いてしまった。これでバレないで済むかと思い、それにのっかろうとしたのだ。彼はふーん、と帽子を眺めてからチラリと彼女に視線を戻した。

「今日みたいなやつ、お前に似合いそうじゃん?」

彼の帽子は派手めなものが多いが、今日の帽子はシンプルなものだった。グレーで飾りがなく、ワンポイントとして少し色が入っているだけだ。

(私が派手なの似合わないって知ってるんだ…)

彼はその帽子をポスッと彼女にかぶせると、2回程頷いた。

「やっぱり」

へへっ、と可愛く笑う彼。そんな姿にまた見とれそうになるのを我慢して、帽子をきゅ、と両手で握った。

「えへへ、翔ちゃんの帽子」

言ってからハッとする。今の発言はもしかしたらものすごく変態っぽく聞こえるかもしれない。恐る恐る帽子から目を覗かせたら、彼は少し頬を染めていた。

「や、やっぱ返せっ」
「翔、ちゃん?」

今の変態発言に照れる要素なんてなかったはずだ。それなのに彼は彼女から帽子を取ると、それで照れた顔を隠すかのように口元を覆う。

「どしたの?」
「べ、別に何でもねえよっ」
「翔ちゃんー?」
「〜〜〜…っ」

彼は視線を泳がせる。躊躇って口を閉じていたが、やがて観念したかのように口を開きだして。

「…すげえ今更な話だけど、お前って本当に笑顔が可愛いっつーか、さ」
「!…翔ちゃん」
「あー!何か俺ばっか好きみてえでやなんだよ!」

がしがしと頭を掻く。最初に彼女が彼に見とれていたように、彼もまた彼女に見とれていた、ということだ。

「ふふ、そうだったんだ」
「なっ、何笑ってんだよ!」
「嬉しいなあって思って!」

こんなにも2人は相思相愛。思っていることですら全く同じカップルなんてそうそうない。

「でもね翔ちゃん、私の方が翔ちゃん大好きだよ」
「俺のがお前のこと!…だ、大好き、に…決まってんだろっ」

可愛い、なんて言ったらまた怒られてしまうが、今の彼にはその単語以上に合う言葉が見つからない。ぶすっとした彼は不満そうに彼女を睨みながら、やや強引に彼女にキスを落とした。


END
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バカップルっていいですよね。きっとこの後かっこいい翔ちゃんに変わっていくはずです。名前様、お付き合いありがとうございました。
20111015
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