※翔視点 最近よく見かける2人。俺の親友の音也に、大事なパートナーの名前。音也のことは好きだし名前のことも好きだ。…けど、2人が一緒にいるのは、好きじゃない。
「音也くんって色んなこと知ってるよね」
「その分浅いからさぁ」
楽しそうに話している2人を見ると、何つーか、調子狂う。もやもやするっつーか…何だろう。
一瞬床に視線を落としたけど、刹那、名前が小さく「きゃっ」と声を上げたから俺もそちらに視線を戻す。名前に誰かがぶつかってきたようで…名前は音也の胸へダイブしていた。
(( やきもち王子 )) 気付いたら名前の手首を掴んで教室を出ていた。どこへ行くつもりなのか自分でも分からない。名前だってびっくりしているし、ちょっと痛がっている。痛くするつもりはないのに力加減ができなくて乱暴になってしまう。何だか体が熱い。何に苛々してるんだ、俺は。
「翔ちゃ、っい、ぅ…っ」
苦しそうな名前の声。違う、俺はこんなことがしたいんじゃないのに。
人がいなそうな庭まで来て、ここは何処だろうって思ったけど、名前の声が苦しそうだから手を離してやった。手首、少し赤くなってる。
「……、」
大丈夫か、と訊こうかと名前の手首に触れる。自分でやっといてアレだけど。
「どうしたの翔ちゃん?音也くん、びっくりしてたよ」
俺が口を開く前に名前が口を開いていた。音也のことは大好きなのに、こいつの口から名前を聞くと、何でだろう。
「ッきゃ…っ?!」
手首を引っ張って俺の胸へ名前を引き寄せた。ぎゅう、と抱きしめたら勝手に口が開いて。
「お前は俺様の家来だろ、他の奴にあんなことしてんじゃねえっ」
違う、怒鳴りたいわけじゃねえのに。でも今すっげえ苛々してる。何でだよ。名前を抱きしめる腕に力がこもる。俺は、何で。
「…翔ちゃん…?」
腕の中で小さく呟く声。ハッと我に返って名前を離した。結局何をしたかったんだ、俺は。
「わ、わりぃ…」
思いっ切り動揺して視線を泳がせる。名前は困ったように俺を見上げていたけど突然クスリと笑って。
「翔ちゃん、それ、やきもちみたいに聞こえるよ?」
「え?」
名前は恥ずかしそうにはにかみながら俺の手をぎゅ、と握る。
お、俺が、やきもち…?
「お、俺は…その…」
握られた手が熱い。心臓が忙しい。すげえ動揺してる。
「翔ちゃん、私のこと、好き?」
どうしたんだ俺、顔が熱い、火が出そうだ。
名前はさらに俺の顔を覗き込む。こくん、と傾げられた首とか、くりっとした目とか、全部愛おしい。
「……、」
そうか、俺はこいつのことが好きなんだ。うわ、本人に気づかされるとか、かっこわりぃ。
「おれ、は…」
言葉が続かない。視線をうろつかせたら名前がきゅ、と手に力を込める。瞬間、にやりと上がる名前の口角。
「知ってる、大丈夫だよ」
不敵に笑うこいつを見て自分のかっこ悪さに死にたくなった。穴があったら入りたい。
「良かったね翔ちゃん、両想いだよ」
「……おぅ…」
こんなの男らしくねぇ。何でこいつの前だと余裕がなくなるんだ。かっこわりぃとこしか見せられねぇ。顔、赤い。
「翔ちゃん…?」
それを隠すようにもう一度名前を抱きしめる。これ以上俺の顔を見られたくなくて。
これなら言えそうだなって思って名前の頭に手を添えて、そっと言った。
「好きだ、名前のこと」
「…うん」
いつかもっと男らしく顔を見て伝えたいな、なんて思った。
それから、名前のこともっとかっこよく抱きしめたいから、…身長を伸ばそう、とも。
END
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まだまだ子供な翔ちゃんを書きたかっただけの小説。名前様、お付き合いありがとうございました。
20120309
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