じっとりと汗ばむ肌に触れると、彼はチラリとこちらに視線を落とした。

「名前?」
「ん、」
「…何してんだ?」

彼の鎖骨に唇を這わせ、肩口にキスを落とす。先程彼にされたように、ちゅう、と吸い上げてみたが、何ともならない。こてん、と首を傾げた彼女に、彼はキョトンと目を開けた。

「キスマーク、つかない」

もう1度口づけると、彼はやっと理解したのかクスクス笑い出した。

「あー、そうじゃねえよ」

まだ服を着ていないのにタオルケットを剥がされる。彼女は身体中キスマークだらけなのに、彼にはそれが1つもない。彼は彼女の肌に唇を這わせると、また彼女の鎖骨にキスを落とした。刹那、チクッとした感覚。

「…ほら、」

顔を上げた彼はニッと笑って見せた。そこには真っ赤な印が刻まれている。

「ずるいよ…翔ちゃんばっかり」

悔しくなって唇を尖らせた彼女に目を細め、彼は自分の胸を人差し指でトントンと叩く。

「もっと強く吸うんだよ」




(( キスマーク ))




──ちゅ、ぢゅっぅう…っ
あまり色っぽいとは言えない音が部屋に響く。必死に肌に吸い付く彼女に対して、涼しい顔で彼女の頭を撫でている彼はどこか楽しそうだ。

「ん、むっ…ちゅ、ん、翔ちゃ、」
「ついたか?」
「んちゅ、ちゅうっ、ぷは!…あれ」
「はは、下手くそ」

彼女が唇を離すと欝すらとしたピンクが見える。これでは数時間もせずに消えそうだ。彼女はこつんと彼の胸に小さく頭突きをした。

「何でつかないんだろ…」
「何でそんなにつけたがるんだよ」
「翔ちゃんに私のって印が欲しいんだもん」

悔しくてついに歯を立て始めた彼女に、彼は優しく微笑んでまた頭を撫でた。

「ばーか。そんなのなくてもお前のだろうが」
「でも欲しいもん。…名前でも書いとこうかな…」

放っておけば今すぐネームペンでも探しに行ってしまいそうで、彼は慌てて彼女を抱き寄せる。先程まであんなに汗をかいて愛し合ったのに、彼女からはふわりと甘い香りがした。

「じゃあそろそろ結婚するか」

彼女の髪に鼻を押し付けながら呟くと、彼女はぴくっと肩を揺らす。

「え?」

今何て言ったの?という顔をしている。そんな間抜けな顔まで可愛いと思ってしまう彼は、相当彼女にハマっている。

「だから、ココにお前のって印がつくだろ?」

ひょいっと彼女の左手をとり、薬指にちゅっとキスを落とす。軽く吸い上げるとほんのり赤く印がつき、彼女は思わずぽろりと涙をこぼした。

「翔ちゃん…っ」
「おまっ、何泣いてんだよ!」
「だってぇ…っ」

ぽろぽろと止まらない涙。何気ない一言だったが彼女を感動させるには十分すぎたようだ。日頃思っていたことなので嘘もなかったが、彼女の涙に弱い彼はちろちろと落ち着きなく視線を揺らしている。

「翔ちゃん、ありが、ぅ、ぐすっ」

びえええ、と泣く彼女にフッと小さく笑みをこぼし、彼は彼女の涙にキスをする。しょっぱい、と言うと彼女も泣きながら笑顔になる。泣いているのにフフフと笑う彼女は少し奇妙だ。

「名前にそんな結婚願望があったとはな…」
「翔ちゃんのお嫁さんにしてもらえるのが嬉しいの!」
「あ、そ」

ストレートな発言に少しだけ頬を色付かせると彼女は涙が止まったようで、にやにやと笑っている。

「照れた?」
「んなわけねーだろっ」
「あ、そ」
「真似すんなっ」

ムキになる彼を愛おしく思いつつ、彼の首に指を這わす。

「でもやっぱり翔ちゃんばっか悔しいからキスマークつけたい」
「…………」


END
--------------------
個人的に切羽詰まった翔ちゃんが大好きなので、たまには余裕いっぱいの翔ちゃんでも書いてみようかと思った結果がこれです。なんということでしょう。我慢できなくなって強制終了です、ごめんなさい(笑)
名前様、お付き合いありがとうございました。
20120704
(  )
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -