「翔ちゃん〜!今日は何の日だ!」

名前ちゃんはにこにこと楽しそうに翔くんに聞きました。翔くんは少し考えるように空を見つめますが答えはわかりませんでした。さあ、というように小首を傾げて見せると、名前ちゃんはにんまりと笑って勢いよくスカートを捲りました。

「じゃ〜ん!正解はイチゴパンツの日でした!」
「っ!な、な…っ」

急にぱんつを見せつけられた翔くんは瞬間的に顔を真っ赤にし、そのまま固まってしまいます。言いたいこともなかなか出てこないようで口をぱくぱくしていました。そんな翔くんの反応に小さく「あれ?」と声を漏らしたあと、心底不思議そうな顔をして名前ちゃんは翔くんの顔を覗き込みました。

「翔ちゃん?どうしたの?」
「どうしたじゃねえっ!!!」

名前ちゃんに聞かれてやっと言葉が出てきた翔くんは名前ちゃんの手首を掴んでスカートから手を離させ、真っ赤な顔をしながらぜーはーと肩をあげます。未だきょとんとしている名前ちゃんを睨みつけると、大きく息を吸い込みました。

「こんの…バカッ!!!!」

あまりにも大きな声だったのでびっくりした名前ちゃんは思わずひえっと目を瞑りました。

「何考えてんだ!本当にバカなのか!」
「ど、どうしたの翔ちゃん…」
「はあ!?」
「なんで、怒ってるの…」

本当に分かってなさそうな名前ちゃんに翔くんはため息をつきました。このド天然女は誰にだってこうなのか、と呆れてしまいます。確かに翔くんと名前ちゃんはパートナーとして仲良くやってきましたが、それ以上でもそれ以下でもなかったのです。翔くんは名前ちゃんのほっぺたを掴むと一応手加減をしながら引っ張りました。

「いでででででっ」
「男に軽々下着見せていいと思ってんのかお前は」
「いひゃいいひゃいはなひてくだひゃい」
「反省しろっ」

ぺいっと手を離すと名前ちゃんは赤くなったほっぺたをさすり、ひどいだの乱暴だのと文句を言いながら翔くんを見つめます。その顔から「何故」の文字は消えません。翔くんはもう一度ため息をついてから、今度は優しい声で言いました。

「あのなあ名前、俺とお前はこれでも異性なんだから、仲が良いといってもちゃんと一線引かなきゃいけねえとこがあんだよ」
「む、難しいなあ…」
「お前にとっては友達でも、俺が男であることに変わりねえんだよ。だから俺以外の男にもこういうことはやるんじゃねえぞ。仲良しでも」
「う、うん〜…?」

名前ちゃんはこてんと小首を傾げます。

「仲良しの男の子にぱんつなんて見せないよー?」
「じゃあ俺はなんだよ」
「それは、翔ちゃんだから」
「は?」
「翔ちゃんなら見せてもいいかなって!」

はあ、こいつ全然分かってねえ。翔くんは頭を掻きながら言葉に詰まりました。

「だぁから、いくらお前が意識してなくても、」
「意識してないっていうか…翔ちゃんだから見せたいんだけどな…」
「は…?」

名前ちゃんはとんでもないことを言い出します。翔くんがどんな言葉を選べばいいのか分からず黙り込んでいるのを良いことに、名前ちゃんはさらに続けました。

「翔ちゃんには可愛いもの見せたいし、可愛いって言われたいもん。今日のためにこのぱんつ買ったのに、翔ちゃんは何で怒るの?」

名前ちゃんは恥ずかしげもなくそんなことを言うので、翔くんが代わりに照れました。こいつ本当に何言ってるのか分かってるのかよ。恥ずかしくて名前ちゃんと目が合わせられません。

「そ、それって、逆に意識してるから俺に見てほしいってことか…?」

ぼそぼそ呟く翔くんの言葉が聞き取れずにきょとんとしている名前ちゃんを置いて、翔くんはさらに顔を赤くしていきます。

「そんなの…それは早すぎるだろ!!」

いささか話が飛びすぎているようですがどの道名前ちゃんには理解ができず、翔くんは恥ずかしさのあまり顔を両手で覆っていました。ああ、だの、うおお、だのと声を漏らし、ついに名前ちゃんを睨むように向き直りました。

「お、お前の気持ちはわかったけど、俺は一人前になるまではそんなことできねえ!今はまだ…待っててくれ!じゃあな!」

翔くんはそれだけ言い捨てると走って部屋を出て行ってしまいました。何の話か分からないまま名前ちゃんは部屋に取り残されたのです。何のことかわからないけど待ってればいいのかなあなんて能天気な名前ちゃんが翔くんにプロポーズされるのは、この数年後のお話。

--------------------
童貞はぶっ飛んだ妄想をするとフォロワーさんが言っていました。
(  )
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -