※とうらぶが出てきますが知らない人でも大丈夫です

「オ〜〜ラオラオラオラァ!」
「あーん今日もかっこいい…」

名前ちゃんはうっとりとパソコンの画面を見つめました。そこには最近始めたとうらぶというゲームの画面が映し出されています。大好きな清光というキャラを隊長として引き連れ、敵と戦うのです。清光が敵を攻撃する度に名前ちゃんはうっとりとため息をつきました。

「すき…」

名前ちゃんにはもう清光しか見えていませんでした。最近一気に人気者になり、同棲してるとはいえほぼ会えない毎日が続く彼を思い出すととても寂しくなるのでこうして気を紛らわしているのです。最初は暇つぶしのつもりでしたが今ではどっぷり沼にハマっています。

「これ!が!本気だ!」
「ひぃやあああ」

名前ちゃんは清光の台詞に悲鳴を上げて喜んでいます。端から見れば立派にヲタクに育っていますが、こんな姿大好きな彼氏には内緒です。名前ちゃんはにまにましながらとても幸せそうな顔。これでは翔くんがいなくても十分楽しそうです。

「清光可愛い…いやかっこいい…どっちも…」

名前ちゃんが頭を抱えていると、

「ただいまー」

翔くんの帰宅です。翔くんは随分前に名前ちゃんに帰りの連絡を入れていたのですが、パソコンばかり見つめていた名前ちゃんはそれに気づかず、ついでに翔くんの帰宅にすら気づいていないようです。翔くんの声が届いていないかのようにもう1度隊を出陣させました。

「じゃ、おっ始めるぜ〜!」
「はぁい」

清光の台詞にわざわざ返事をし、マウスをクリックします。翔くんはガチャッとドアを開けて部屋に入っていきますが、イヤホンをした名前ちゃんはまだ存在に気づけていません。

「…、ただいま」

翔くんはもう1度名前ちゃんに言いますが、やはり声は届かないようです。名前ちゃんは口許をだらしなく緩め、クリックをし続けます。

「フェイントに見せ掛けて攻撃っ」
「ああん」
「オ〜〜ラオラオラオラァ!」
「かっこよすぎ…無理…」

清光の一言一言に悶え、パソコンにかじりつく彼女の姿に翔くんは言葉を失いました。翔ちゃんおかえり寂しかった〜!なんて抱きついてくる数週間前の名前ちゃんはどこへやら。翔くんは面白くなさそうに口を尖らせます。

「清光ほんともう…っ」
「なあ、ただいま」

翔くんは名前ちゃんのイヤホンを優しく外し、空いた耳元で囁きます。名前ちゃんはびくんと大袈裟に肩を上げて囁かれた耳を手で押さえつけました。

「ししししょうちゃん!どうしたの!」
「仕事早めに終わったから連絡入れたんだけど」
「え!ごめん見てなかった!」

名前ちゃんは動揺を隠しきれないように目をぎょろぎょろ動かしながら必死に背中で画面を隠そうとしています。翔くんはますます口を尖らせます。

「随分楽しそうだったな」
「ヘアッ!な!何の話ですか!?」
「俺が帰ってきたのにも気づかねえんだもんなー」
「うっ…」

いつも優しい翔くんの言葉が今日はとげとげしています。名前ちゃんは嫌な汗をかいてきました。

「こ、これは、ちがうの」
「へえ」
「ちがうの!ゲームなの!」
「面白いんだろうな」

翔くんはムスッとしたまま名前ちゃんに背を向け、キッチンへ向かいます。名前ちゃんは慌てたように翔くんを追いかけました。

「翔ちゃん怒らないで!」
「別に怒ってねえよ」
「うそだあ…」

普段なかなかかっこいいなんて言われない翔くんは冷蔵庫から牛乳を取り出しながら名前ちゃんをじろりと睨みます。

「彼女が楽しんでるのを叱る彼氏なんていねえだろ」
「怒ってる…!」
「かっこいいキャラに楽しませてもらえて良かったなっ」

ごくごく牛乳を飲む翔くんは可愛いのに、さらにあからさまに嫉妬心を見せ付けているのです、可愛い以外の言葉など当てはめられません。名前ちゃんは吹き出しそうになるのをぐぐっと堪え、翔くんを見つめました。

「翔ちゃん、好きだよ」
「な、何だよ急に」
「翔ちゃん可愛いんだけど好きなの」
「ケンカ売ってんのか!」

悪かったなかっこよくなくて!と睨んでくる翔くんの口には白くおひげができていました。今この状況でそんなことを指摘したら3日くらい口を利いてもらえなくなりそうなので黙っていますが、名前ちゃんの中からは愛しさが溢れてやみません。名前ちゃんは思わず翔くんに抱きつきます。

「あー好き!好き!」
「だああ、急に抱きつくなっての!」
「だって好きなんだもん」
「ったく…」

翔くんは名前ちゃんの背に腕を回し、抱き締め返します。その腕や力は男性のそれなのですが、満更でもないような機嫌を直したような翔くんの染められた頬は可愛い以外に上手く言い表せられません。

「翔ちゃん今のままでいてね、ずっと好き」

名前ちゃんが呟くと翔くんは「おぉ」なんて照れている返事が返ってきて名前ちゃんは満足しました。さて、と言ったように翔くんから手を離し、部屋に戻ろうとします。

「翔ちゃんも帰ってきたし、遠征に出してからパソコン閉じようかな!」
「まだするのかよ!」

翔くんは面白くなさそうに名前ちゃんの後を追いました。

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とうらぶ沼抜け出せません。
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