翔ちゃんの膝の上に乗って向かい合うように翔ちゃんを眺めているけど、翔ちゃんは呆れたように目を細めている。最近こうして翔ちゃんを観察することが増えたからきっとうんざりしてるんだと思う。でもわたしは翔ちゃんを定期的に観察せずにはいられなかった。
身長は変わっていない。はず。

「おい今なんか失礼なこと考えただろ」
「えっ」

翔ちゃんは勘が鋭いのでこういった観察は慎重に行わなければならない。15歳の翔ちゃんと今の翔ちゃんがどう違うのか。肌も白いし、くりくりのお目目も一緒だし、体だって細いまんま。何も変わってないように見える。あのときより体作りを頑張ってるように見えるけど、翔ちゃんは一般男性よりやっぱり華奢で色白で、どこか可愛らしさが拭えない。確かに手は骨張ってるし、腹筋も固いし、男性らしさが全くないわけではない。

「何でだろうねえ…」
「何がだよ」

わたしは疑問でならなかった。翔ちゃんはここ数年でぐんと男らしくなった。言ってしまえば、あんなに可愛かった翔ちゃんが途端に可愛くなくなってしまったのだ。でも可愛い要素はいくら観察してもあのときのまま健在で、じゃあ何が変わってこうなってしまったかの説明がつかない。彼女として失格だ。

「翔ちゃん睫毛長いね」
「…何だよ」

ムッと翔ちゃんの唇が少し尖った。翔ちゃんは自分の男らしくないパーツを指摘されるとすぐ拗ねる。昔はそれが可愛くてよくからかったりしたし、その反応ですら今でも健在。何が男らしくなったか本当に分からない。

「翔ちゃん…」

名前を呟きながらシャツから覗く鎖骨をゆっくり撫でた。何だかすごく色っぽくて、大人な感じがする。鎖骨ひとつがこんなにセクシーなのは、彼女のフィルターがかかっていなくても関係ないと思う。翔ちゃんの眉がぴくっと動く。

「そろそろ止めねえか?」
「あと、ちょっと」

翔ちゃんの胸板をそっと右手で押して感触を確かめる。まあ、固い。でも薄い。それにガチガチに固いわけでもないし、押すと体が揺れる。ひょろい。

「むー…」
「あのなあ」

翔ちゃんは急にわたしの手首を掴んできた。こう見えてわたしより大きな手で、わたしより強い力で。

「な、に」

急に翔ちゃんがわたしの手首を引っ張るからバランスを崩す。翔ちゃんの膝の上に乗ってたわたしは翔ちゃんに倒れるように体が傾き、そして、唇が重なった。びっくりして目を見開くわたしと、薄く目を開いてわたしの様子を窺う翔ちゃん。僅かに開いてるその目が熱っぽくて妙に色っぽい。こんな目、15歳のときには見たことなかったなあ。

「は、んん」

翔ちゃんの手はわたしの頭の後ろへ回り、ぐっと力を入れられることでさらに深く翔ちゃんとキスを交わすことになってしまった。舌が、わたしの舌をなぞって、熱い。恥ずかしくなってきゅっと目を閉じると翔ちゃんは口腔を動き、優しく愛撫するようにわたしに熱を与えた。顔が火照ってくる。唾液が混ざり合って唇の端へ流れそうになるものを翔ちゃんが時折ぢゅくっと啜る。この音は何だか変な気分になるから苦手だ。
暫くして翔ちゃんが顔を離した。そろりと目を開けると翔ちゃんは相変わらず薄く目を開いていて、今開けたのかずっと開いていたのか分からない。翔ちゃんの目がえっちな目をしていた。

「しょう、ちゃ」
「今日はもうおしまいだ」
「ん…わかったあ…」

翔ちゃんはわたしの腰へ手を滑らせる。それに過剰にびくんと反応してしまい腰が跳ね、翔ちゃんは逃がすまいと両手でわたしの体を押さえ付けた。ああ、また中断かあ、今日も結局翔ちゃんがかっこよくなった理由が分からなかったなあ。翔ちゃんが唇から舌を覗かせてわたしへくいっと顎で合図した。わたしはそれに従うように、翔ちゃんへ静かに口付けていく。彼女、失格だなあ。

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ちょっとずれてる夢主ちゃんと、見つめられるとムラッとする翔くん。
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