「苗字、ちょっといい?」
「え、あ」

放課後。名前ちゃんは音也くんに引き止められてしまいました。翔くんに助けを求めたいのは山々ですが、翔くんは今龍也先生に呼び出されて不在です。きっとこの前やった小テストの点が悪かったとお説教をくらっているのでしばらく帰ってこないでしょう。名前ちゃんは罪悪感を感じながら音也くんに向き直りました。

「ど、どうしたの?」
「話があるんだけど、ちょっと来てくれる?」
「ここじゃだめ?」
「だめ、だと思う。聞かれたら困る内容だし」
「…そっか」

名前ちゃんは時計を見上げます。あの龍也先生です、40分は絶対戻ってこないはず。名前ちゃんは小さく笑顔を見せました。

「うん、いいよ、校門裏でも行こっか」




校門裏に着くと、音也くんの言葉を待ちながら名前ちゃんは手悪戯をします。指先を見つめ、なるべく音也くんと視線が合わないようにしています。

「苗字、単刀直入に訊くけどさ、翔と付き合ってるの?」
「え」

音也くんの言葉にびっくりして、指先から音也くんの顔へ視線を移します。音也くんはじっとこちらを見ていました。

「な、何言ってんの一十木くん、ここ恋愛禁止なんだよ?」
「うん、でもそうかなって思って」
「え、と…」

名前ちゃんはちろちろ視線を泳がせます。そんな姿に音也くんは確信しました。やっぱり2人は両想いだったんだ、と胸が潰されるくらい苦しくなります。

「そうなんだ…」
「え?」
「ねぇ、苗字」

音也くんの呟きを聞き返した名前ちゃんの肩を掴み、音也くんは名前ちゃんのことを見つめました。

「俺、苗字のこと好きだよ」
「えっ?」

名前ちゃんはびっくりします。本当に友達だと思っていたのに音也くんは違ったのですから動揺が隠せません。翔が言ってたこと本当だったんだ、とますます視線が泳ぎます。

「困らせてごめんね…?でも、もう我慢できないよ。翔に独り占めされたくない。俺、苗字のこと本気で好きだから」
「えっ…ま、待って一十木くん、ほんとに、待って…」
「苗字」

音也くんの目は真剣でした。名前ちゃんは変な汗をかいてきました。

「俺のこと、本気で考えて」

名前ちゃんはついに耐え切れなくなって逃げ出しました。音也くんの顔が見られません。翔に会いたい、翔を裏切りたくない。名前ちゃんは教室まで休むことなく走り続けました。


(( 困らせてゴメン ))
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