ぴぴぴぴ。ぴぴぴぴ。
いつもの目覚ましが鳴り、いつもの朝がやってきます。名前ちゃんは朝が苦手です。頭がぼーっとして働きません。あまり考えもなしに目覚ましに手を伸ばし、うるさい音を止めてしまいました。

「んんん…」

名前ちゃんは隣に寝ている翔くんをぎゅうっと抱きしめ、二度寝を決め込もうとしています。これも毎朝の日課なのでちゃんと5分後にまた鳴るようにしてあるのですが。

「困ったお姫様だぜ…。こーら、起きろ!」

今日はいつもと違うようでした。いつもふかふかのクッションが何だか硬く、おまけに台詞も聴こえてくるのです。名前ちゃんは重い瞼を開けて、そして、カッと目を見開きました。

「し、しょうちゃ!?!?!?」

なんと名前ちゃんの隣には等身大のパジャマ姿の翔くんがいたのです。名前ちゃんに腕枕をして、優しい笑顔を見せてくれています。

「お、起きた。おはよう相棒」
「おはよう、ございます…?」
「なんだぁ、寝ぼけてんのか?毎晩夜更かしするからこうなるんだぞ」

翔ちゃんが、喋ってる!
名前ちゃんは動揺を隠しきれません。翔くんの腕の中でかちんこちんに固まってしまって上手く言葉が出てきません。翔くんはそれに気付き、小さく笑いました。そして名前ちゃんの頭を優しく撫でます。

「お前、俺がいないと大胆なくせに、いざ俺が出てくると大人しいんだな」
「へ…、」
「今さら何照れてんだよ、お前の彼氏だぞ?」

翔くんの言葉にぼぼっと顔を赤くした名前ちゃんを見て、翔くんはまた楽しそうに笑いました。翔ちゃん、もしかして、わたしのこといつも見てたの?名前ちゃんは恥ずかしくて消えたい思いです。

「あ、あのっ、あの、な、なんで、なんっ」
「落ち着けよ、ゆっくり聞いてやるから」

な、と翔くんは名前ちゃんの頭を撫でます。名前ちゃんは泣きそうになりました。こんな優しくてかっこいい彼氏が、こっちの世界にいるんだあ。翔くんが頭を撫でてくれる感覚が名前ちゃんをほっとさせたのです。

「翔ちゃんは、なんで、ここに」

名前ちゃんはやっとのことで声を絞り出しました。翔くんはきょとんとしています。

「何でって…、お前が出てこいって言ったんだろ?」
「!、それは、ずっと思って、ました」
「確かにそうだな、もっと早く出てきてやれなくて悪かった。でも毎晩一応出てきてたんだけど…」
「し、しらないです…!」
「あー…、だってお前、ああいうことした後、すぐ寝ちゃうだろ…?」

翔くんは大変気まずそうに名前ちゃんから視線を外しました。名前ちゃんは少し考えた後、ぼんっと顔が破裂してしまったかのような音のイメージで顔を真っ赤にします。も、もしかして、え、翔ちゃん見てたの…?名前ちゃんは完全に泣きそうです。

「あ、あの…っ」

あわあわと口をぱくぱくさせながら真っ赤な顔で名前ちゃんは涙を浮かべました。翔くんは名前ちゃんに視線を戻し、そして、声を上げて笑います。名前ちゃんはそんな余裕もないのに頭の片隅で、あーこの笑いかた大好きなんだよね、と考えていました。

「何だよその顔、俺様を無断でオカズに使っといて恥ずかしいのか?」
「し、翔ちゃんもそんな単語使うんですか!」
「あのなあ…、俺だって男だぞ…」

翔くんは名前ちゃんの頭の後ろに腕を回し、自分の方へ引き寄せます。それから一瞬、ちゅ、と可愛らしいリップ音を響かせて名前ちゃんの唇にキスを落としました。

「ゲーム内でしたこと以上のことも、俺はしたいけど?」

にやっと雄の顔を見せて笑う翔くんに、名前ちゃんはくらくらしました。こんな翔ちゃん、知らない、わたしの知ってる翔ちゃんは、救いようのないくらいのピュアピュア童貞ショタで、えろいこととかすぐ照れちゃって、ちゅーとかもすごく恥ずかしがってて、それで。名前ちゃんの頭は完全にパンクしてしまいました。

「しょう…ちゃん…」

名前ちゃんはくらっと意識が遠退いていくのを感じました。ああ、そうか、これは夢だったのかもしれない。名前ちゃんは大好きな翔くんの腕の中で、そっと目を閉じました。


(( 彼氏なのに初対面! ))
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