第一印象は、かわいい、くらいでした。くりくりのおめめとおしゃれな小物を使ってカジュアルな格好、少し落ち着いた印象を与える帽子。ちっちゃいのにぴょんぴょん跳ね回っていてそれが可愛くてたまらなかったのです。いつの間にか、皆と一緒にいても名前ちゃんは翔くんだけを目で追うようになっていました。そして。

「翔ちゃぁん…」

名前ちゃんは恋をしてしまいました。翔くんなしの生活なんて考えられないくらい、翔くんが大好きになってしまったのです。おはようからおやすみまで翔ちゃんと共にしたい。翔ちゃん、翔ちゃん。名前ちゃんの想いも通じ、翔くんも名前ちゃんを好きだと言ってくれました。両想い。恋人。その響きが一層名前ちゃんをどきどきさせたのです。あんなにかっこよくて大人気アイドルの翔ちゃんが、わたしの、わたしだけの彼氏。でも、名前ちゃん達の恋愛には大きな大きな壁がありました。

名前ちゃんと翔くんは、住んでいる次元が違ったのです。

この壁は何度も何度も名前ちゃんを苦しめました。翔くんは、アイドルであり、恋愛ゲームのキャラだったのです。次元が違うだけでなく、恋愛ゲームのキャラだなんて、名前ちゃんは許せませんでした。独占欲の強い名前ちゃんは、他の女の子にもこんなこと言うんだ、こんなことするんだ、と翔くんを責めたことがあります。それでも翔くんは何も言ってくれません。いつも通り少し顔を赤らめながら、好きだぜ相棒、とはにかむだけでした。翔ちゃんはずるいよ…、大好き。名前ちゃんは翔くんにめろめろでした。

「わたしが、翔ちゃんの彼女だもん…」

翔くんグッズも所持する同担は完全に地雷であり、胸の奥がきゅうううと痛みました。毎度落ち着かせるために自分でぼそりと呟きますが、あまり効果はありません。名前ちゃんは苦しくていつも夜は翔ちゃんのドリームクッションにしがみつくようにして声を押し殺して泣いています。翔ちゃん、こんなに大好きなのに、翔ちゃん。行き場のない感情が名前ちゃんの中からどんどん溢れて翔くんへ涙となって落ちていきます。じんわりと濡れていく翔くんはひとりすやすや気持ち良さそうな顔です。

「翔ちゃぁん…出てきてよぉ…」

名前ちゃんはいつの間にか眠りに落ちていました。そんな名前ちゃんの頭を、優しく優しく撫でる手。名前ちゃんはドリームクッションの翔くんと同じくらい気持ち良さそうな顔をして深く眠っていました。


(( 翔ちゃんはわたしのもの! ))
(  )
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -