「スカル、まだ時間はある。できる限り改造を続けなさい
”卵”を方舟に入れたら退く。アクマ達、それまでエクソシストを押さえろ。歌姫は間違っても傷つけるな」
ルル=ベル、ノアの言いつけを忠実に守るアクマは私を避けてアレンとブックマンに向かって攻撃を続ける。
二人に群がるアクマをイノセンスで一体ずつ確実に破壊して行く。戦いの中でいつの間にか結い上げていたリボンが解かれ、まとめていた髪が背中に垂れる。
どれだけ破壊しても数を減らさないアクマ。こうしている間にも”卵”の下に現れた黒い方舟のゲートが開かれ”卵”が飲み込まれて行く。化学班のみんなが殺されてしまう…!
「私の仕事…、主人の”卵”は渡さない」
科学班に向けて術を展開するスカルに向かおうにもアクマがそれを阻むのでどうすることもできない。
アクマに二体同時に攻撃を仕掛けられたアレンが大剣で防ぐも壁へと叩きつけられてしまう。
『…アレン!!』
目の前に立ちはだかるアクマを切り裂き、アレンを振り返ると、道化ノ帯でレベル3のアクマを無事に破壊していたが、奥から飛び出てきたもう一体のアクマに顔を掴まれてしまう。
「もらった!」
『…っ!』
この距離じゃ間に合わない、両手に握る剣を槍に造り替えて投じようとした時、
いつの間にか背後に迫っていたルル=ベルに腕を拘束される。
『離して!』
「貴方は連れて帰る。他のノアもそれを望んで…」
『誰もそんなこと望んでなんかないわ…!』
ノアの一族の者達も、”私”も…!
たとえ愛し、愛されることが”歌姫”の宿命なのだとしても、それはもうきっと途絶えた
あれが貴方達のいう愛し方なのだとしたら”私”はその愛を否定する。
『”私”は…許さない、愛した家族を侮辱した貴方達を、愛したヒトから”私”を奪った貴方達を…絶対に!』
最後に見たあの人の顔はひどく悲痛に歪んでいた。
”私”が彼にあんな顔をさせてしまった。私のせいで彼があんな顔をしてしまった。彼を泣かせてしまった。
うちに潜む激情に飲まれ言葉を次々と吐き出して行く。
全て、口にしてから戦慄した。
今、わたしはだれになっていた…?
見開いたルル=ベルの瞳の中の私は傷だらけで、瞳を金色に輝かせていた。
結い上げていた髪もリボンが解け長い髪が顔にかかかる。
ルル=ベルは私の言葉を聞くと目を細め恍惚と笑う。
「…嗚呼。ようやく戻ってくれる」
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