他愛もない話をしていただけで、いつもと変わらない日常のはずだった。
飲みかけのティーカップに指をかけると、隣に座っていたアレンが食べきった食器をテーブルの端に重ねていたタワーの一番上に重ねて息をつく。
カップに口をつけて紅茶を飲みきった時、アレンが不意に顔を上げたと思うと、すぐに大きな音を立てて食堂を飛び出して行く。
『アレン!?』
「アクマだ!!」
思わず手にしていたカップを落としそうになって寸前で乱暴にソーサーの上にもどすと飛び出して行ってしまったアレンの背中を追いかける。ラビとリンクも後ろを走っているのがわかる。
「さっきリーバーさんがいた研究室からすごい数の反応がある!!」
そういうアレンの後ろを追いかけている途中、不意に耳鳴りがして耳元を手で押さえる。
__色のノアがきてる。
直感がそう言った。
先ほどまでリーバーと話していた場所にたどり着くと、先ほどまで中を見渡せていた入口が黒々と下ももので塞がれていた。
「研究室の入り口が…」
「なんだこの黒い壁は」
「この!」
ラビが建てられていた仕切りを手に持って壁を殴りつけるもビクともしない。
「どいてラビ」
息を整えててイノセンスを発動させると、同時にアレンとブックマンも黒い壁に向かって攻撃をぶつける。
「どうだ…っ」
攻撃の衝撃で舞い上がった煙が晴れて壁をみるとやはり傷一つ付いていなかった。
「内の音が全く聞こえない」
『生成工場の卵が狙いなのかも…!』
いや、それしかありえないだろう。
リンクが壁に耳を押し付けていたがそれでも中の様子がわからないのではどうしようもない
「リーバーさんが、科学班のみんながこの内にいるんだ…っ、くそっこじ開けてやる」
「まてウォーカー!」
再び壁に向かってイノセンスをむけたアレンにリンクが声を荒げて止めた
『方舟のゲートを使ってもいいんですか、リンク』
確認をするようにリンクを見つめるとリンクは僅かに顎を引いて頷いた。
ブックマンに言われてラビは放送室のある方へと走って向かう。
それを見届けながら、リンクを先頭に方舟ゲートがある間へと走る。
方舟内部へと向かうと、同時に研究室内へとつながるゲートを作り出し、扉を乱暴に開け放ってアレンが先頭に入って行く。
白いマントをはためかせる彼の後ろ姿を追って扉をくぐり抜けると、そこには大量のアクマが蔓延っていた。
研究室内を見渡すと、怪我をした科学班のみんなが並べて寝かされていた。
すぐそばには江戸でみたクロスがスカルと言っていたのがいるのがわかる。すこし視線をずらして目に入った色とモノに思わず息を止めた。
「許さないぞ、お前達」
アレンは腕を変化させた大剣でスカルを切り裂く。
そばにいたリーバーを一瞥するとすぐにイノセンスを発動させ、両腕に乗る重さを確かめて両手剣を構える。
今は感傷に浸っている暇はない。生きている人だけでも助けなければ。
すぐにブックマンが到着するとアクマが奇声をあげながらこちらへと迫ってきた。
アクマの影の隙間から、見覚えはないけれどどこか懐かしい姿を見つける。
___色のノア_ラストル…ルル=ベル!
そのノアは私を視界に捉えると僅かに表情を和ませる。
「私の仕事は…主人の”卵”の回収だけれど」
アレンとブックマンは互いに協力しながらアクマを破壊して行く。
「きっと主人も”歌姫”を連れて帰ったら喜ぶ」
僅かに首を傾げながら言うルル=ベルの足元にある”卵”の真下に方舟のゲートが開かれる。
ルル=ベルを睨み上げ、向かってくるアクマに向かってイノセンスを構えた。
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