掴まれていた足を放されたアレンが顔から地面に落ちた。
たった一人、戦場に増えただけなのに安心感がすごい。
クロスとアレンが言葉を交わしているのが見える。
距離が少し遠くてその言葉までは聞き取れないけれど。あ、アレンがリナリーとチャオジーのいる元へと放り投げられた。
「アンジュ」
思い出したんだな
そうクロスの唇が動いた。ぞわっと背筋に悪寒がはしる。
知らない、と唇だけが動く。
「オラ、貴様もアンジュ連れてあっちいけ
美しいもんは傍においてやるが汚ねぇのはオレに近づくな…」
「酷い言われようさ……」
近くにラビもいたらしい。
クロスがぎろり、と鋭い眼光でラビを睨みつける。
慌てて足を引きずりながらもラビの元へと駆けると、二人でアレンたちの元へと急ぐ。
「ノアの一族ね…こんな崩壊寸前の舟でまだ騒いでっからどうしたのかと思いきや…正気を失ってるなお前
ノアにのまれたか…一族の名が泣くぜ?」
黒い柩に巻きついた鎖を解き、
「オン アバタ ウラ マサラカト 導式解印
聖母の柩限定__解除!!」
術を唱えると柩の中から、柩と同じ、黒いドレスを纏った女性が現れ、同時に広い空間に綺麗な歌声が響き渡る。
「これ…賛美歌…?」
『"聖母ノ加護"…』
ラビのつぶやきに返しながらアレンを見ると、肯定するように頷いた。
「なに?」
聞き返すラビにアレンが口元に人差し指をよせ、しー、と合図する。
きっと、これでティキの視界から私達が消えたはずだ。
「ティキにオレらが見えてねぇのか!?」
「"聖母ノ加護"師匠の対アクマ武器の能力で敵の脳から視覚に幻術をかけてガードする技です」
「あの人形が対アクマ武器なの?生きてるみたい」
リナリーの言葉に、アレンが苦い顔をする。
言うのを躊躇っているみたいだ。
『…あれは人形じゃなくて人の屍だよ』
「おいそれって…禁術じゃ…」
『師匠は魔術で寄生型イノセンスの女性の屍を異例に所持してるの、マリアは師匠の命令だけをきくわ』
そして、
『師匠自身がもつ装備型対アクマ銃』
"断罪者"
"聖母ノ柩"と"断罪者"
師匠はふたつの対アクマ武器を持つエクソシストだ。
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