マドンナ


「あなた、テゾーロのお友達?」

牢屋の似合わない女性だった。容姿というよりも、その佇まいが。ゆるやかに微笑む顔はオーロの周囲にいる女性達よりずっと上品で、見る者の心をやさしく落ち着かせる。

「……そんなんじゃない」
「あら。でもテゾーロが来る日によくここに来てるじゃない?」
「彼の歌のファンだから」
「そう……素敵な歌よね。わたしも好きよ」
「君を想いながら歌ってるんだ。当然だろう」

柵の向こうの彼女――ステラは、少しだけ目を瞠った後、穏やかに笑んだ。牢屋の中に落ちる影の所為か、どこかさみしげに見えた気もしたけれど。


  
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