彼は、枠外


会議が終わり、ルッチは本島のレストランにて元CP9の男と約束していた食事も終えた。そして現在、司法の塔へもどっているところだが────。

「いやはや、面白い話を聞けたのう」
「…………」

なぜ隣に、並んでカクが歩いているのか。

誰が呼んだわけでもない、カクは二人を尾行してきた上に図々しくも同じテーブルに加わったのだ。ちょうど『本題』について話し始めたタイミングで。「『スペッキオの昔話』?それは気になる、わしにも聞かせてくれんかのう」。元CP9の男からの了承を取られてしまえば、ルッチが追い出す理由もなくなった。そのまま共に話を聞く流れとなったのだ。


「そんな目をせんでも」

ルッチは何も言っていないのに、カクは眼光ひとつで意を汲みとる。歓迎されないことは分かっていたらしい。なら来るな、と舌打ちしたくなるルッチなのであった。

「どうしてお前が来た」
「わしの経歴について、あの人に相談したいことがあってのう」
「ほう……?」
「ま、嘘じゃ。小耳に挟んだもんでのう、面白そうな会が開かれるのを。あれこれツッコんで訊くのはわしの方が得意じゃし、損はなかったじゃろ?」
「……」

かなり掘り下げて聞き出せたのは事実だ。何十年も前のこと、しかも当時はこれといって交流のなかった人物の記憶であり、さほど自信はないが──。そう前置きしていたわりに、次から次へ質問せずとも、カクがリアクションを返すごとに男はあれこれと細かく思い出し、情報をもたらしてくれた。ルッチ一人では尋問の様になっていたかもしれない。

「にしても、意外じゃったのう」

カクが腕を組んで視線をあげる。何を指しての言葉なのか、ルッチはすぐさま予想がついた。収穫と呼べるか定かではないが、それ≠ヘあまりにも意外な事実────。


「まさかスペッキオが、落ちこぼれ≠カゃったとは」



さて、この情報をどう活用したものか。ルッチは考える。かの男の心臓に、なんとしても爪痕を残していきたかった。


  
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