人生幸福論 | ナノ


30:幸福  




サルヴァトア・クリフデン様


久しぶり。元気か?
俺は今、いろいろあってある魔法使いの元でお世話になることになったんだ。
聞いて驚け。ホグワーツから帰ったらなんと孤児院が燃えていたんだ。何の冗談かと思ったよ。「未成年魔法使いの制限事項令」がなかったら俺が消火してたのにな。まあ、孤児院の奴らは全員無事だった。俺も、俺の荷物ももちろん無事だ。

俺も本当は他の孤児院に移されるところだったんだけど、ダンブルドアが俺を他の孤児院に移すよりは、魔法界に置いた方がいいと考えてくださったらしい。俺としても、いちいち魔法について隠すことも面倒だったし、何よりイギリスと日本はやっぱり遠すぎるから、助かったよ。

おかげで、今はリーマス・ルーピンという人のところにいる。ちょっとわけありで、最初は渋られたんだけど、まあ、それについては会った時に話すよ。

リーマスはいい人だから心配はしないでくれ。

ちょっと、家は貧乏だけどな。孤児院に居た時に比べたら、天国と地獄ほどの差があるよ。

っていうことで、教科書を買いにダイアゴン横丁に行くときはよかったら誘ってくれよ。お前の親がグリフィンドール生と過ごすことを許すなら、だけどな。

予定を合わせようぜ。


そうそう。もう一つ。面白いことを聞いたんだ。ハリーの境遇は知ってるか?夏休みに入ってから、ハリーにいくら手紙を出しても返事が返ってこなかったから、ロンがハリーのおじさんたちに監禁されてるんじゃないかって思って救出に行ったんだ。それも、空飛ぶ車(改造車)を使ってだぜ。

本当、あいつらはおもしろいよな。

夜通し、ロンドン上空ドライブを楽しんだらしい。


まあ、詳しくは会った時に話してやるよ。とにかく、予定がわかったら連絡くれ。俺はいつでも空いてるから。


じゃあな。



祐希より







一度、手紙の内容を読み直し、一つうなずく。インクに蓋をして、羽ペンを置いた。


「書き終わったのかい?」

「ああ」

「それにしても、スリザリン生と仲がいいなんて、ホグワーツも変わったね」

「やっぱり、リーマスの時代もグリフィンドールとスリザリンは仲が悪かったのか?」

「悪かったよ」

「ふーん。まあ、俺は特別じゃないか?寮を別れる前に知り合ってたし。今もその確執は根強く残ってるよ」

「そうか…」


つい、と目を逸らしたリーマス。彼はたまにこういう目をする。ここではないどこかを見つめる遠い目だ。部屋の壁もその先の丘も飛び越えて、過去へと思いを馳せているのだろう。彼がこういう目をするときは大抵ホグワーツの話をする時だ。


しかし、彼から話題を振ってくるということは、おそらく嫌な記憶ではないのだろう。


「そういえば、リーマスは在学中どうやって人狼だってことを隠してたんだ?リーマスの頃にはもう地下牢は教室として使われていたんだろう?」

「私の入学に合わせて暴れ柳が植えられたんだ。見たことはあるかい?」

「ああ、あの柳か。暴れ柳ってことは、凶暴なのか?」

「すっごくね。特に自分を傷つける相手だと容赦なく太い幹で殴ってくる。でも、暴れ柳を抑えるにはツボがあるんだ」

「ツボ?」

「今はほとんど知られていないだろうけどね。根元にあるコブに触るんだ。それだけで大人しくなる。そこが、秘密の抜け道だ」

「へえ。つまり、抜け道から学校外に出て人が来ない場所で一晩過ごしていたのか」

「ああ。そうだよ」

「友達にはバレなかったのか?」

「………」


リーマスが口をつぐんだ。それだけで、ばれてしまったことがわかった。まあそうだろう。一ヶ月に一週間ほど体調を崩すんだ。そして、ある条件の晩は必ず夜はいなくなる。敏い奴なら気づくのも早いだろう。


「友達だって言ってたぐらいだ。バレても普通に接してたんだろう?」

「ああ。そうだよ。彼らは、私を普通の友人として迎えてくれた。それだけじゃない。彼らは…」


そこで言葉を切ったリーマスはごまかすように笑みを向ける。


「ふーん、いい奴らだな」

「自慢の友達だよ」


そう言葉を締めくくったリーマスは、どこかさびしそうに笑った。


「俺にとっても、そうだよ。彼らに出会えたことは、俺の人生において最高の幸運だ」







fin.
(Next is the Chamber of Secrets ...)


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