「みーたーくん!あーそびーましょー!」

オレが玄関口で叫ぶと、少し間を置いてバタバタと扉越しに駆けてくる音が聞こえた。

「ったいき、声でかいって!」

ドアが開いたと思ったのと同時に、眉を下げながら現われたみったんが困ったような声で言う。

「うあははは、ごめんごめんごめりんこ!DVD借りて来たよーん」
「あ、レンタル頼んでマジごめんなたいき、ありがと。中入って」
「うぃー。お邪魔しまうまー」

うながされるままに家の中にお邪魔して、小脇に抱えたDVDの入った袋を手に持ちかえぶらつかせる。

「あ、先に二階上がってて。オレ飲み物とかちょっと用意するから」
「んー分かった」

リビングへとぱたぱた引っ込んでしまったみったんを見送って、オレは何度か上ったことのある階段をゆっくりと上った。
日差しの強い中を自転車で走って来たおかげで、室内に入ってから汗がじわじわと滲み始めている。

「うがぁぁあー‥やべぇマジあっちぃー‥」

手で顔に風を送りつつ、みったんの部屋へとご到着。
遠慮なくドアを開けて部屋に入ると、クーラーをきかせておいてくれたのか冷たい風に出迎えられる。

「ウホッ!いい冷風!すっずしー‥!」

肩にかけていたカバンを下ろして、思い切り床に倒れ込む。
熱の溜まった肌にひんやりした床が気持ち良い。

「お待たせー、‥って、何してんスかたいきさーん!」
「あ、おかえりぃー‥いや、なんかもう暑いから冷たさを求めて‥」
「うちわ使う?」
「や、しばらくこうしとけばダイジョビング」
「そー?んじゃあコレ麦茶とポテチあるから」
「んー」
「DVD観る?」
「んー‥‥‥」
「‥おーいたいきー?」
「‥‥んー‥んんんー‥んんー‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥っ、いぃいよっし!!大分涼んだ!てわけで映画観ようぜみったん!」
「っおわ!び、びっくりした‥!あ、じゃあケース取ってたいき」
「はいよー」

言われて袋からDVDのケースを取り出す。
手渡すと、いそいそとこちらに背を向けてみったんがDVDをプレステにセットし始めた。

「‥?なんかみったんさぁ、」
「んー?なに?」

麦茶に口をつけながら、ふとみったんの日に焼けた首が目に入ってなんとなく手を伸ばす。

「ここ」
「っ、ひぎゃあ!?」
「、おわっ!?え、あ、わ、わり、そんなビックリすると思わんかった‥」
「う、いや、ごめ、オレ首弱いんだよー‥あと今、ちょっと日焼けしてて痛いから‥」
「あー‥いや、うん、なんかすげー焼けてんなーとか思ってつい触っちった。わり」
「や、まあ、へーきへーき。てか、早く映画観よーぜ」

そわそわ、オレが触った辺りの首を押さえて言うみったんの顔がちょっと赤い気がするのは、叫んだのが恥ずかしかったのか日焼けが恥ずかしかったのか。

(や、それかオレに触られて恥ずかしかった、とか‥)

汗をかいた麦茶入りのグラスを手に持ったまま、まあどれにしてもかわいいなあとかアホなことを考えつつオレは「んー」だとか「あー」だとか、気のない返事を返していた。

「あ、電気消す?」
「‥‥、ん?え、消す?は、いや、なんで?」
「え?なんか映画館とか暗いから‥まあ、なんとなく?」
「‥あ、ああー、うん、そゆことか。あー‥まあ、そー、ですね。よし、じゃあ、消して観っか!」
「んー、じゃあ消すよー」

一瞬、意味が分からなくて何それオレのこと誘ってんのかしらこの子あらいやだ破廉恥、とか言い掛けたけどイカンイカン、平静を装いながらコントローラを操作して、DVDのトップ画面から全編再生を選ぶ。
そして暗転、いや、電気が消えてテレビ画面だけが光々と明るい。

「はーあ、最近映画とか全然観てなかったからなんかやっぱいいなあ、こうゆうの」
「あー、部活忙しそうだったもんなぁ」
「うん、軽音の練習もだけど弓道部の走り込みとかもやってたから見事に首焼けちゃって‥風呂入ったらスゲー痛いよ」
「ははっ、みったん肌よえーもんなぁ」
「うっせー!」
「あ、薬塗ったりしとけば?」
「いや、その薬も肌に合わなかったりして‥」
「げ、マジかよ。そりゃ辛いなー‥ってやっべ、今の面白そうじゃね?」
「うあ、うん、やばいやばい、なんかアクションすげーかっこよかった」

電気を消してオレの隣に腰を下ろしたみったんと、本編前のリリース映画告知を見ながらだらだらしゃべる。
なんか、距離近くね?とかオレが思っちゃうのは意識し過ぎてるからなのかそうなのか。
で、しかしとりあえず、だ。
なんでみったんお前は今日に限って短パンなのだと。そして何故オレの視界に入る位置で体育座りとかしちゃうのだと。
え、何?なんかもうアレか?生足見せてチャームアタック的なアレなんですかああそうですかそうなんですか、てわけでなんつーかありがとうございますありがとうございま、

「‥おーい、たいき?」
「ほぁっ!?!え、は、はい!?ななな、なんスか三田くんぼかぁ別に何も‥!」
「え、いや、え‥?あ、うん、なんかたいき眠そうだから映画観るの後にした方がいいかなとか思ったんだけど‥」
「や、いやいや全然眠くねーよ!?ちょっとボーッとしてただけだって!」
「‥んー、じゃあもし眠くなったりしたら言ってくれな?どうせ今日泊まりなんだし、そこで止めといて明日観るとかでもオレ全然いいから」
「‥や、うん、なんかもう‥‥‥‥‥みったんごめんね」
「あはは、へーきへーき。気にすんなよ」
「‥‥えーと、いや、なんかいろんな意味で今オレすげー申し訳ないわ」
「え、なんで?」
「いや‥なんでもないです気にすんな」
「?あ、うん‥うん?」
「えーと、あ、ほら始まった始まった!」
「お!」
「‥‥、」

あ、‥‥ぶない危ない。
こんな調子でオレは今日お泊まりとか出来んのだろーかとかいやなんかもうそんなこと考えちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだってああもう映画頭に入って来ない‥!
煩悩を払うべく必死で違うことを考えながら、オレは膝を抱えてテレビを睨む。

(耐えろ二時間‥耐えるんだオレ‥!)

せっかく楽しみにしていたはずなのに、修行でもしているような気分になっているのは何故なのか。
まあでも、この二時間を絶えて後は意識しないようにフツーに過ごしてフツーに寝てフツーに起きてってすれば大丈夫――。











「‥で。だからどうしてこうなった‥‥?」

映画もいよいよクライマックス、というところまで進んでどうにか映画に意識が集中していたオレだったのだけれども。

「みったーん‥‥あのー‥、えーと、えーいちさーん‥‥」

小言でオレはみったんを呼んでみるも、やはり返事はなし。ただの屍のようだ、いや、そうじゃなくていやいやてゆうか何この人オレの肩にもたれて気持ちよさげにスリーピングってんのああもホントなんなのバカなのバカじゃないの、クッ‥‥ちくしょう、かわいいぃぃい!!
床に転がってじたばた悶え倒してしまいたい、が、肩にみったんが居るから動けない、動けない!!大事なことなので二回言いました!心の中で言いました!寝息が首にかかってます先生!ッアー!やややばいよあーもうホント何この拷問なんか泣きたくなってきた‥って、あ、映画とかもう終わっちゃって、る‥‥。
エンドロールが流れ始めた画面に苦笑いしか出てこない。

「おーい、三田さーん、えーいちくんやーい‥‥」

「‥‥んー‥」
「‥あーもう、ホント襲っちまいますよコノヤロー‥」

そんなことを口にして、けれど結局手も出せないオレは、肩にもたれる頭を軽く撫でて深々とため息を吐くのだった。

「‥‥あ、やべ。起っちった」























う、あ、アカン‥あー、だめだ、こらアカン(笑)

ねっちょり方面に転がるまえにたいきくんがヘタれました!つかだめだホント向いてないなー‥こっちに投下するとなったら結局この流れだぜあうあう‥まあでも風呂上がりとかに我慢ならなくなって押し倒すとかしてしまえばいいと思うよ(ノд`)

あと多分たいきはみったんの首の日焼けが気になって痛いの分かってるけどなんか舐めたりしちゃうんじゃないかと思いまげふんげふん。みったん首弱いから痛いけどなんかいろいろげふんげふん。捏造サーセン、ものすごく楽しいです‥‥‥‥‥






おれは試されている/太祈と瑛市/CP
2010/07/04 10:12



prev | next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -