Nightmare blue


episode 01 - サテライト










ジャックがサテライトを去り、泣いたのは遥だけだった。
あいつは全てを捨てて、サテライトを出て行った――俺のDホイールとカードを奪って。
残された仲間は皆ジャックを罵り、怒りを露にしていた。俺も、何も…感じ無い訳じゃない。だけど、





遥だけが俺に謝りながら、ただ泣いていた……――





「お前は悪くない」





遥はジャックが出て行く際に奴に会ったらしい。だから、ジャックを止める事が出来なかったと、責任を感じて、泣きながら、俺に謝る。
お前が悪いんじゃない。謝るな。本心でそう言ったが一向に泣き止む気配はない。言い方が素っ気なくて、俺が怒っていると思ったんだろうか…。





「――どうして、お前が泣くんだ」


「そんなの……あたしの勝手でしょうっ」


Dホイールとカードを持っていかれたのは俺だけだ。遥は何も取られていない。遥が泣く必要なんて、無い。
責任なんかも、感じる必要もない。「何故」と、尋ねるといつもの様に突っぱねた返事が返ってきた。


「好き、だったのか。ジャックを…」


仲の良かったジャックに置いていかれて悲しいのか。そんなにジャックが…好きだったのか。





それくらいしか、遥が泣く理由が浮かばない。自分で口にしてギリギリと胸が締め付けられ、漠然とした気持ちに襲われる。





「ばかっ」


遥は泣いたままの顔を上げ、俺の頭を殴った。今のは否定なのか図星を付かれたのか、分からない。


「あんた、馬鹿よ…」


そう言ってまた、俯いた。きっと、また涙が溢れたんだろう。


「泣くなよ…」


泣きじゃくる遥。殴られた頭を擦りながら、息を吐くように小さく呟いた。
ジャックに裏切られた事よりも、遥がジャックの為に泣いている事の方がもっと、苦しい。





どうして…。





どうして君が泣いてるの
(お願いだ)(あいつの為になんか……泣くな)


title:ユグドラシル


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