「…………いらっしゃい」

「「「お邪魔しまーす!」」」



全国の学生の殆どが夏休みに入った頃。

芹都は家のドアを開けて一つ溜息を溢した。





【勉強会in鈴日奈家】





目の前にいる友人の3人は、ニコニコと輝く程の笑顔を振り撒いている。


――今日は鈴日奈家で勉強会なのだ。

勉強会……又の名を「宿題お手伝い会」。



「麦茶でいい?」

「お構い無く!」

「いやー、芹都ちゃんの部屋涼しい〜!」

「外超暑かったよね〜。溶けるかと思った。
…あ、これ気になってた漫画の新刊!え、いつ発売されたの!?」

「嘘っ!?どれどれ?」

「あ、こっちも新刊だ。やっぱり偶に芹都ちゃん家来ないとダメだね。次々に新しい漫画が増えてる」

「一気読みしていいかなぁ…。芹嬢、漫画借りるねー」

「お前等何の為に来たんだ!!」

「芹嬢の部屋を物色しに?」



正しくはさっきも言った通り勉強会である。

芹都は呆れた様にまた溜息を吐き、机に人数分の麦茶を置いた。

一つのコップに4個の氷が入っていて、カラリと音を立てる。



「ごめんごめん、冗談だよ」

「どうせ半分又は3分の1は、だろ」

「よくわかったね!愛ですか!?」

「どうしていっちゃんは全部そっちに持ってくの…」



出雲は前からこんな感じだ。

それでも小学生の頃はまだマシだった筈なのだが…。まぁ、今更嘆いたところで仕方ない。

小学生の頃の出雲の方がおかしかった、と思っておこう。じゃなくちゃやってられない、と芹都は思った。


菜々里と祐香もそれぞれ席に着く。

暑い中、芹都の家まで来るのに体力の8割を使ったらしい。ゴクゴクと2人して麦茶を飲み干し、風呂上がりのおっさんの様な声を上げていた。



「各自、勉強道具はちゃんと持って来た?」

「あたし英語〜」

「祐香、数学ー」

「ウチは理科」

「見事に別れたね」

「芹嬢は?」

「国語。あとは終わらせた」

「「「何で!?」」」

「またこのパターン!?」



息ピッタリな3人に、芹都は頬を引きつらせる。

激しいデジャブを感じていた。


夏休み開始から丁度1週間目。それで終わっていないのは国語のワークだけという芹都。

1週間殆ど何もせず過ごし、「宿題?何それww」という状況下で生きていた祐香、出雲、菜々里。

このハッキリと出る差。理由は言うまでもない。性格の問題だ。



「…さて、そろそろ始めるか」



各々の宿題を出して、勉強会開始。



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