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「さて、今日は作文を書いてもらいます」
先生のその一言で、教室中が一気に五月蝿くなる。
大ブーイングの嵐だ。
そんな中、私はそっと欠伸を漏らす。
「作文は日本人として大切なことです。テストでも出るので、ちゃんと書けるようにして下さいね」
“はーい”とやる気のない返事で埋め尽くされる。
紙を配られて、シャーペンを持つ。
タイトルは、『自分の好きなもの』。
【授業中】
「いきなり言われても書けないよねぇ」
前の席から声を掛けられた。
「授業中なのに後ろを向いてていいんですかー?奥ちゃん」
「あ、それは言わない方向で」
奥ちゃんこと、奥浜 祐香。
私の友達だ。
「奥ちゃんは何書くの?」
「えー?芹都ちゃんは?」
「うーん…。いざ言われると難しいなぁ…」
「あたしはもちろん漫画のこと書くよ!!」
「うん、だろうと思ったよ。なっちゃんだもんね」
「それはどういう意味!?」
「そのままの意味ですが?」なっちゃんこと、相早 菜々里。
一言でいうと、オタク。あ、奥ちゃんもだけど。
「芹嬢もそういう系にすればいいのにー」
「やめて。絶対嫌」
「今更じゃん?オタクなんて」
「変態に言われたくないわ」
変態と呼ばれたのは小田切 出雲。
いっちゃんとも呼ばれてる。
オタク。うん、あと変態。
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