「えぇ!?皆宿題やってこなかったの!?」

「僕は農業体験実習の農家にたどり着けなくて!」
「ぼ、僕はこんな簡単な宿題なんてどういうことなんだろうと考えてたら…」
「私は雷蔵の付き添いで放棄しました」
「私があんな低レベルな宿題を出されるとは屈辱です!破り捨ててやりました!」

「…」


今喋ったこの子たち+摂津のくんと福富くんと善法寺さんたちは、宿題が入れ違ってた、及びやってこなかったメンバーらしい。

吉野先生に「校門にいる子たちから出門表にサインを貰ってください」と言われ、急ぎとめさんと校門へと向かった。其処にはいつもの格好とは違って私服姿の皆さんがいた。
可愛いなぁこの世界の服。私の着てる着物も可愛いデザインだけど男の子のこういう服も可愛い。神崎くんの矢印の洋服とかぴったり!凄く可愛い!

「はい翔子さん!」
「ありがとう神崎くん。これで全員、かな?」


パラリと出門表を捲り今いる人たちと見比べて数を確認。1,2,3、……うん、あってる。


「ところで、これから何処に行くの?」


「・・・僕ら、喜三太を探しにオーマガトキの城下町へ潜入してきます」


「え…?」


真っ直ぐな目でそう言ったのは、摂津のくんだった。そういえばさっき摂津のくんは善法寺さんを引っ張って何処かへ行ってしまった。その時に集められたのがこのメンバー。
これからみんな、危ない目にあうのか。

ドクリと心臓がはねて、私はとめさんをみつめた。とめさんも心配そうに皆を見上げている。


「翔子さん、出門表を」
「あ、厚木先生、日向先生…」

日向先生と厚木先生も私服姿で校門の前にいらっしゃった。手渡した出門表に手早くサインを書いて、傘を深く被る。
先生方の向こうに土井先生と、1年は組のみんなの姿が見えた。みんな山村くんが心配なのか、暗い表情で土井先生の後ろをついて歩いていた。


「…厚木先生、日向先生、宜しくお願いいたします」
「うむ」

「きり丸しんべヱ、頼んだよ…」
「「おう!」」


その言葉を合図に、校門前にいた私服姿の忍たまのみんなは校門をくぐって外へと出て行った。

…心配だ。私はこの学園とはなんの関係も無い人間。だけど、あまりにも危険すぎる。戦の起こっている場所へいくだなんて、危険だ。でも、山村くんを見捨てることは絶対に出来ない。みんなの大事な友達で、後輩で、仲間なんだから。



……嗚呼、その顔。みんなもとても心配なんだね。大事な友達が今危険な目にあっていることが。大事な友達が今から危険な場所へ行くということが。





とめさんへ視線を落とすと、とめさんも、決心を決めたような目で私を見上げていた。




「……ッ、土井先生!」
「翔子さん?どうされま……痛ッ!翔子さん!?」


私は出門表に自分の名前を書き込み、土井先生に叩きつけてボールを投げた。



「僭越ながら、私も山村くんを探しに行きます!出門表、小松田さんに渡して置いてください!!」



「えぇ!?」


ちょうじともんじろうをその場に出し、私はとめさんを肩に乗せもんじろうに飛び乗った。


「ちょうじ!あんたは中在家さんと一緒にいな!私がいない間、この学園をあんたが守りなさい!」
「ピカチュ!」

「もしも何かあったら使っていい技は『あなをほる』と『たたきつける』だけ!『10万ボルト』と『ほうでん』は絶対使うんじゃない!」
「ピカ!」


ちょうじ逞しくなった!!なんて可愛いの!!なんて逞しいの!!写真におさめておきたい!!可愛い!!!


「もんじろう!さっきのみんなの後を追いなさい!」
「!」




「「「「「翔子さん!」」」」




そんな顔向けないで。私なら大丈夫だから。








「心配しないで!」








もんじろうは力いっぱい地を蹴り上げ、前方の集団に追いつくため凄いスピードで駆け抜けた。


























さすが卵とはいえ忍者さん。みんなの走る速度が異常に早いのか、中々追いつくことが出来なかった。
しばらくガサガサと木を掻き分け、山道を爆走する。もんじろうが「掴まっていろ」と一声上げると、目の前は崖。とめさんを抱きしめもんじろうへとしっかりと抱きつき、飛び降りた。

着地して、そしてそのまままた走り抜けると


「ぅぉわぁぁああ!?」
「もんじろう止まれ!」

其処にいたのは、私服姿の皆様でした。



「あ、あれ…翔子さん…?」
「おぉ翔子さん!」

「お、追いついた…」


突然のもんじろうの登場に腰を抜かす皆さんを横目にハァァと溜息を吐き、もんじろうから降り顔を撫でてやった。ありがとうねー。


「翔子ちゃん!?何してるの!?」

やっぱり。善法寺さんには怒られるの覚悟で来ましたから。
あれ、善法寺さんさっきと服違いますね?

「善法寺さん!私も山村くんを救出しに来たんです!」
「ダメだよ!今すぐ学園に戻って!」
「出来ません!」
「どうして!危険な目にあうかもしれないんだよ!?」


「でも、私もみんなのために何かしたいんです!この子たちを拒絶せずに、優しくしてくれた、心から受け入れてくれた忍術学園の子が危険な目にあっているというのに!私だけ安全な場所にいることなんてできません!微力ですが、私も山村くん救出に力添えをさせてください!」
「エーフィ!」




此処で引くわけには行かない。私だって、みんなのために役立ちたい。













私の大事な仲間を救ってくださったんですもの。


私だって、今度は皆さんの大事な仲間を助けたい。














「…じゃぁ一つだけ約束してくれる?」

「はい」


善法寺さんは私の肩をガシリと掴んで










「絶対に、怪我だけはしないでね」


悲しそうな顔で、そう呟いた。











「はい!」
















あれ?摂津のくんと福富くんがいない。



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「エーフィ!エーフィィイ!」
「翔子さん、とめさんなんですって?」
「こっちが鉢屋でこっちが不破だろ!と言ってます」

「!?な、何で解った…!?」
「凄いねとめさん!よく三郎の変装見破ったね!」
「♪」

「(エスパーだからかな……)」
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