拝啓 ウツギ博士。
すごく、いい天気です。
こちらは異世界という場所です。きっと信じてもらえないかもしれませんが。
今私は、忍者が育てられる学校、忍術学園という場所で御世話になっています。
どうやらここにいる人はとても心優しい人たちのようです。私の仲間たちが、徐々に心を開き始めています。こんなに私以外の人に懐くみんなを見たことがありません。
「忍者というものは冷酷で残酷なものだ」と食満さんという恩人が教えてくれました。私にはそうは思えません。
めちゃめちゃ怪しい私を、見たこともない生き物を連れた私をここで事務員として働かせてくれています。
それと同時に、私は今帰る方法を探しています。
つい先日、もんじろうの鼻をたよりにこっちに来てしまったときに一番最初に現れた場所へ行ってみました。
そこにはシロガネ山から出てきた洞窟があったはずなのですが、その洞窟はなく、代わりに古い小さな祠がありました。御神体もなく、不思議な祠でした。
そこで、私は一つの可能性を見つけました。
もしかしたらこの異世界へのトリップの原因は、セレビィの仕業ではないかと考えてみました。
セレビィは時間を越えて飛び回っているという話を聞いたことがあります。可能性がないこともないです。と、思います。カントーには忍者の末裔がいるとか聞いたことありますし、ここはカントーの遠い昔なのでしょうか。
それに、セレビィが現れた場所は草木が生い茂るという話を耳にしたことがあります。その祠の周りは、私の記憶していた時より草も樹も多きく長く成長していました。
何の気まぐれか何のイタズラか、理由はよく解りませんが、その祠は以前ここにセレビィがまつられていると言われたことのある祠にそっくりでした。
とめももんじろうも、見覚えがあると言っていました。
もしかしたら、もしかするかもしれません。
しかし少し周りを探してみたのですが、セレビィの姿はなく、他のポケモンの気配もありません。
もし仮にセレビィが私をここへ連れてきたとして、それは何か理由があるのでしょうか?
まさか食満さんを助けるためだけに此処へ送ったとは考えられません。
何か他に私にやるべきことがあるのでしょうか。
まぁいいや。今はここで事務の仕事を一生懸命やります。
ほんでもってこの子達の心が少しでも癒えるようにと協力してくれている
忍術学園のみなさんに、主に六年生の皆さんにいっぱいお礼をしたいと思います。
あ、六年生のみなさんと私の仲間たちの名前が被っている人がいたんですよ。
以前姓名判断のおじいちゃんにこの名前をつけてもらった時
「いつかかならず会えるから」
って言われた理由はこれだったんですね。おじいちゃんは一体何者なんでしょうか。
トリップの原因はあのおじいちゃんでしょうかそれはないですねはい。
とめさんは相変わらず食いしん坊だし構ってちゃんだし
もんじろうは相変わらず饅頭ばっかり食べてるし
せんぞうは相変わらず自分の羽の美しさに見惚れているし
あ、いさくは恋をしました。
あとちょうじは此処の本が気に入ったみたいで、私が借りてくる本を夜中まで読んでます。自分が電気だから明るくして読んでるらしいんですけど、ちょっと明るくて寝れないので迷惑です。
それからこへいたはまだ気が荒いです。こへいたはまだ他の方にそこまで心を開いてくれそうにないので、まだ誰にも会わせていません。やはりあの昔話は本当なのでしょうか。早く私以外にも、心を開いて欲しいです。
とりあえずこんな感じでしょうか。
食堂のおばちゃんの御飯がとても美味しくて、とめさんが肥えないかどうか心配です。
帰り方が解ったらすぐご挨拶に伺います。
みんなの成長ぶりを見て欲しいです。
それでは、お体に気をつけて。
翔子
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「…と、暇すぎてここまで手紙を書いたは良いけれど…」
「…」
「ね。ここキャモメ郵便局ないしね」
「!」
「お焚きあげって…何処で知ったのそんな言葉……」
「…」
「そうだねどうせ送れもしないしやるだけやるか。おーいせんぞう」
「?」
「この手紙お焚きあげしてほしいんだけど」
「!?」