「…………お?」



朝だ。あれ、いつの間に気を失っていたんだろう。

苦しい。なんかにガッツリ縛られて…あ、神様に抱き枕にされてたんだったわテヘペロ。忘れてた。


パチリと目を開け、今の状況を確認する。掛け布団の代わりかと言わんばかりにふわっふわの尻尾に包まれていて、身体はガッチリと抱きつかれた状態だ。

全く、身動きとれやしない。

あ、アカーン!これち、遅刻する!アカンやつや!!

うおおおお起きてください!


「不破様、鉢屋様、あ!朝です!起きてください」

「んー…」
「……ぅ…ん…」

「ひぃい凄く可愛らしい寝顔ですが私が遅刻してしまいます故に起きてくださいませ!」


更に強く抱きしめられ、私はジタバタともがく。なんなのこの神様!豪腕過ぎでしょう!抱きしめるとかそういうレベルじゃn痛い痛い痛い痛い!!苦しい苦しい!!!


アッー!!吉野の釜じい先生の煙が上がってる!!これもう朝掃除遅刻確実ですね!!くっそー神様だからって私の仕事に影響を及ぼすとは…!!


いい加減に!と置き上がろうとしたとき、やっと不破様が目覚めになられた。


「……夏子、ちゃん?」
「はい!夏子ちゃんです!おはようございます!だから退いてください!仕事に向かわねば!」


私は本来、夜、此処でお二人の話し相手をするだけの予定だった。夜のうちに部屋に戻って着替えて今日は普通に仕事をしなくてはならなかったのに!これはとんだ時間ロス!今から部屋に戻って着替えても朝ごはんの時間に間に合わない!!


「…ふふ、夢、みたいだなぁ……」
「はい?」

「…ずっと、ずっと探してた子が……こうして隣にいるだなんて………」


やべぇぇええ!不破様絶対寝ぼけてる!凄い目がトロンとしてる!エロい!はだけた着物がエロい!そしてこの目もエロい!ヒトの姿なのに獣耳もある!エロい!


「もう少し、もう少しだけ、…時間を頂戴…」
「え、あの、……ひっ、ぁ!」


覆いかぶさるように私の上に跨り、首に顔を埋める。本物の狐のように私の首をすんすん匂いを嗅ぐように擦り寄ってくる。
わああああああくすぐったいくすぐったい仕事行きたい動けない苦しいくすぐったいふわふわ幸せ仕事行きたい不破様エロい鉢屋様いい加減に起きてくださいもうやだ帰りたい










「失礼いたします、稲荷大明神様、朝餉をお持ちいたしま……………」




「中に置いておいて。あと今すぐ夏子ちゃんの分も此処に持ってきて」

「や、もぅ、っ、ふわさ、ま!」





うわあああああ!!蛞蝓だ見られたこれ死んだわ私!!変な声出しちゃってるしこれもう襲われてると思われたわ詰んだわ!!!

今だ首にすりすりしてくる不破様の下に居る私の横に抱きつき眠る鉢屋様。

この図はもう完全にどうみても昨日ヤったという感じだ。これやばい。いらん誤解与えた。絶対与えた。

違います!誤解です!と視線で訴えかけるように小刻みに首をふるのだが、「後で話し聞かせろよ」という視線を返してくる。蛞蝓は食事を運んで一礼。「夏子の分の食事はすぐに…」と声をかけ部屋から出て行った。


助けろよ!緊急事態だって見ればわかるだろ!



「…んー…?あぁ、雷蔵……おはよう…」
「おはよう三郎」

「…ふふふ、夏子もおはよう」
「お、おはようござい…まっ!?!?」


ほ、ほっぺにモーニングキッス頂きましたーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!









もうやだ仕事行きたい



























朝食を急いで食べ、私は二人を残して掃除の仕事へと向かった。
私の今朝の仕事は橋の前の油屋の入り口を箒掛けだ。

暖簾をくぐってググッと背伸びをすると昨日抱きしめられて寝ていたからか腰と背骨が痛い。本当は雑巾がけだったのだが、痛すぎるので外の箒掛けと変わってもらった。まじで痛い。

ザッザッといい音をたて、竹箒で枯れ葉や砂利を橋の上から掃き落とす。


「夏子」
「夏子ちゃん」

「あ、不破様、鉢屋様」


声をかけられクルリと後ろを振り向くと、さっきの神様方が二人、なんとも満足げな笑顔をしてたっていた。

「じゃ、夏子。僕らはもう帰るね」
「お帰りですかさようなら」
「…少しは寂しがってくれたりしないの?」
「お二人のせいで私は今朝仕事に遅刻しましたので」

「いいじゃないか。私たちの顔に免じて許してもらえたんだから」
「あと腰と背骨が痛いです!」


どんだけ強い力で抱きしめられていたんだろう。ろくに雑巾がけも出来やしない!


「すまないな。でも夏子に会えて本当に嬉しかったんだ」
「そ、…そんな言い方されたら、何も言えないじゃないですか…」

「お前はしばらく此処にいるみたいだ。近いうちに、必ずまた来る」
「絶対に此処に居てね。そしたらまた一緒に寝ようね」

「はいはい解りました次は私の分の布団も持っていきますね」
「ははは、それでは意味が無いだろう」


箒を握る手をグイと引き寄せられ、二人は私の髪に口を寄せた。



「!?」


「それじゃぁな」
「また来るからね」



「うおわああああああああああもうとっとと帰ってくださああああいい!!!」




振り回す箒をイタズラッ子のように笑いながら避け、二人はバク転をして狐に姿を変えた。

火の玉に囲まれるように宙に浮き、二人はそのまま姿を消した。














「ちょいと夏子!今のどういうことなんだい!」

「腰が痛いってどういうことだい!?」

「あの!あ、あの稲荷大明神様方と寝所を共にしたのかい!?」

「なんで名で呼ぶことを許可されているんだい!」


「「「夏子!!」」」







「えぇいうっさいわ蛞蝓どもぉお!!とっとと仕事しろ!!!!塩かけるぞこのやろう!!!!!!!!」











掃除はかどらねぇええ!!!!



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塩かけるぞ=殺すぞ







落書きおまけ




























衣装描けよクソ管理人コラいうご意見が何件か寄せられたので
10分シャーペンクオリティですがこんなんで如何でしょうか。

稲荷大明神二人はこんな感じで妄想しとりますです。

ギャラ無しです。

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