4.海へ落ちる

「…っ、あ、」

聞きたくなかった声だった。

「ここにいたのか。随分探したんだぜ?」

見たくない姿だった。

「あのあとお前を売ったのをどれほど後悔したことか」

忘れたい話だった。


こいつの顔は覚えてる。




私を、


奴隷として扱い、

首輪をはめ、

自由を奪い、




挙句の果てに、

ヒューマンショップへ

売り飛ばしたやつだだった。



さっき逃げたやつが目に入る。
どうやらこいつを呼んできたらしい。

クソが、そのニヤニヤ顔後でぶっとばしてやる。


「生きて、いたの…」
「俺が新世界で死んだかもしれねぇと心配してくれてたのか?」


あんたなんかすぐ死んだと思ってたよ。

なんで、ここにいるの。


「お前は、ヒューマンショップに売られたんじゃねぇのか」
「…残念だったね。あの後すぐ、パパが私を買い取ったのよ……」
「パパ!老いぼれた白ひげのことか!」
「私のパパをバカにするな!」
「愛されてんだな、自由を手に入れたんだな、なぁ香織?」

「近寄るな!!!」





愛銃を構える。

変な汗が出る。

脚が震える。


近づいてくる。

距離をとる。




「い、嫌…!」
「なんだ、俺のことが嫌いになっちまったのか?」

「こ、こ、…来ないで……!」
「ちゃぁんと首輪も用意してあるんだぜ?いつお前にまた巡り会ってもいいように!」

「黙れ!!」
「ほら見ろ、お前の好きな赤い色だ」

「っ、嫌ァアア!!!!」



あの時はめられていたのと、同じ首輪。


爆発すると、毎日のように脅された、首輪。




視界に入ってすぐ、吐き気が抑えられなくなり、
私は口元を押さえ、その場にうずくまった。


「ぅ、…!」
「思い出したか、あの時俺が愛してやったのを」


耳元で声が聞こえ






カチリ




嫌な音が、首元から聞こえた。









「また一緒に冒険しようぜ?なぁ、香織?」




「い、嫌アアァァアアアアアア!!!!」



私は近くにいたそいつから逃げるため、
弾かれたように走り出した。


「っ、!逃げんじゃねぇよ!」



「香織!!」



叫び声に気づいてくれたマルコ隊長が前にいた。

あぁ、もう少しで







「逃がすな!逃がすくらいなら殺せェ!」






連続した銃声が聞こえて





背中に小刀だか矢だかが刺さった衝撃が襲い







私は海へと足を崩した。














伸ばしたマルコ隊長の腕を



掴むことは出来なかった。











エース、ごめん。


やっぱりちょっと泳いでくる。
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