10.状況を把握

庄ちゃんと彦四郎が帰ってこない。

私も勘ちゃんも不思議に思い始めた。



出ていったのは昼過ぎ頃。


あそこは最近開店したばかりの店で結構な人気を集めている団子屋だ。
並んでいるだろうと最初は思っていたが
、日が傾き始めている。ちょっと遅すぎやしないか?


そういえば庄ちゃんは一年は組だ。

あの一年は組のことだから、もしかしたら彦四郎と一緒にまた厄介ごとに巻き込まれているのかもしれないと、
私と勘ちゃんは目を合わせて苦笑いをし、おやつに団子は諦め始めていた。


それからしばらく私はクナイの手入れをしながら、勘ちゃんは本を読みながら、二人が帰ってくるまで時間を潰していた。


気がつくと、もう夕刻。


勘ちゃんが部屋の明かりをつけた。



これは、いくらなんでもおかしいのではないだろうか。



あの二人が買い物を放棄して何処かへ行ったとは全くもって考えられない。

迷子になったとも考えられない。

町までは言うほど遠くもない。
あの二人ならすぐ帰ってくるはずだ。



私と勘ちゃんで庄ちゃんの部屋を訪ねた。
伊助もおらず、部屋には誰も見当たらない。

部屋には帰ってきていないのか。



私と勘ちゃんは部屋を出て、食堂へ顔を出す。

食堂では一年生が夕飯を食べ始めていた。



全員いる。

だがやはり、二人の姿は見当たらない。



「あ、鉢屋三郎先輩と、尾浜勘右衛門先輩!」
「やぁ伊助。なぁ、庄左ヱ門はいるか
?」
「庄ちゃんですか?庄ちゃんなら…そういえばお昼頃から姿を見ていません」




やはり、まだ帰ってきていないのか!


勘ちゃんも顔色を悪くする。
これは本当に、何かあったのかもしれない。



「庄ちゃんがどうしました?」
「あ、いや、さっき町まで買い物に、彦四郎と一緒に出掛けてくると言ってたんだ。まだ出発してなかったら私の買い物も頼もうかと思ってね」

「こんな時間に、町にですか?」
「あ、あのー、ふ、筆が折れて!宿題が出来なくなったらしくてね!」
「なるほどー」

「伊助にあったら先にご飯食べているようにと、さっき伝言を預かったよ」
「態々ありがとうございます!」
「いや、いいよ。じゃ、邪魔して悪かったね」
「いいえ、とんでもないです。鉢屋先輩、ありがとうございました!」

「伊助、一年い組のやつらにも、彦四郎が同じようなことを言ってたとつたえておいてくれないか」
「わかりました、尾浜先輩!」


笑顔で伊助をなでる。

伊助はご飯の乗ったおぼんを持ったまま伝七のところへ向かった。
伝七は了解したらしく伊助の話に頷いていた。



かわいい後輩を騙すのは心苦しいが、今騒がれたら捜索どころじゃなくなる。
一年には申し訳ないが黙っておこう。


「勘ちゃんは土井先生と山田先生に報告を。俺は雷蔵たちに捜索を手伝ってもらう」
「わかった」

勘ちゃんもは屋根裏へ移動した。


五年長屋へ急ぐ。空気が湿ってきた。

まずい、そろそろ降り始めるかもしれない。
時間が無い。



私は五年長屋へ戻り矢羽音を飛ばす。
運よく全員長屋にいたらしく、三人が出てきた。


「三郎どうしたの?緊急事態?」
「三郎が矢羽音で集めるなんて珍しいのだ」
「ふぁ…悪いちょっと寝てた」

「すまん、お前らの手を借りたい」

「どうした、何があった」

「……昼過ぎ頃町に買い物に出た庄ちゃんと彦四郎が帰ってこないんだ」

「「「なんだって!?」」」



それから三人に状況を説明する。

町の団子屋へお使いにいったこと。

多分あいつらは今丸腰だということ。

土井先生と山田先生には今勘ちゃんが伝えに言ってること。

一年生には今出掛けたと伝えたこと。



「まずいね、丸腰で夜道は危険すぎる」
「それにこのままじゃそろそろ降り始めるかもしれない」

「狼たちを連れてくる。あいつらなら夜道でも大丈夫だ。あいつらつれて町までの道を探してみる」
「すまんハチ、頼んだ」

「俺も八左ェ門についていく。脇の山道も探してみる」
「ありがとう兵助」

「僕は六年の先輩方に協力してもらえるよう、話をしてくるよ」
「悪いな雷蔵」



そう言い仲間たちは各所に散った。
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