エクスカリパラソル誕生秘話

あてんしょん
ほぼモブ



ハルトは常に日傘をさしている

彼はれっきとした人間なのだが、皮膚が日光に触れると火傷したように熱く赤く皮膚がただれたり水脹れが出来る体質なのだ

学園側にも許可を貰って使用しているのだが、体力育成でも日傘を手放さないハルトは目立つらしく、時折ガラの悪い生徒に傘を奪われたり壊されたりすることがあった

そのせいで傘を新調せざるを得なかったり、日光に晒されて身体中痛かったり治療費がかさんだりしたハルトは、ついに切れた

部活も晩御飯も終わり、のんびりタイムになった頃

「はい、有志共集合!!」

と、ハルトはディアソムニア寮の談話室で大声を出した

「どした?」

「何かあったの?」

「珍しいな」

と同級生達が集まってくる。ちらほら先輩も集まってくれた

ハルトはディアソムニア寮生にしてはかなり緩い方なので、人に好かれやすいのだ

ハルトはプンスコ怒りながら

「傘壊れたり奪われないようにみんなで祝福して!!」

と恐喝のような勢いのお願いをした

「あー…」

ルームメイトが可哀想なものを見る目をする。ハルトが自分で治療のために薬を塗っているのを見る機会が多いので、シンプルに気の毒だと思っていた

だって爛れた皮膚は真っ赤だし、水脹れは出来てるし、痛いやら痒いやらと嘆きつつも下手に保護をして蒸れると余計悪化するので、薬の塗布以外何も出来ず剥き出しのままなのだ

「お前日光ダメなのに、やたら傘狙われてるもんな」

「普通に気の毒」

「祝福してやろ…」

てなわけで、ハルトの傘に色んな祝福やら魔法やらをかける流れが出来た。…どんなわけだ

「手始めに、物体保護の魔法は絶対だよな。」

「盗難防止に、持ち主が呼んだらすぐ転移するようにしようぜ」

「普通に高度で笑うわ」

「攻撃魔法防止もかけた方がいいですよね?燃やされたりとかしたら困りますし」

「傘としての機能も上げておこう。防水と、傘の範囲にあるものは決して濡れない祝福を授けよう」

「さらっと祝福が強い。」

「メインが日傘なんだからUVカット強化しろよ。紫外線を許すな」

お堅いイメージのディアソムニア寮だが、結局男子高校生の集まりである

ノリよく魔法と祝福を重ねがけしていく。

初めはみんな真面目に考えていたが、未だ大人になりきれない…もとい大人になんかなりたくない男子高校生の集まりなので途中からネタやオフザケが入り始める

「悪意のある攻撃は反射しようぜ!正当防衛だ正当防衛」

「傘の色を気分で好きに変えられるようにしよ」

「お、じゃあ傘の中に景色投影できる魔法仕込むわ!めっちゃお洒落じゃん」

「防御は最強の攻撃だから無敵の盾になるまで物体強化しとこ。ついでだからレポート書く予定だった魔法試そうかな」

「傘の中でも顔色良く見えるように明るさ調整機能いるだろ」

「プリクラかよ。誰にアピールしてんだよそれ。それより傘の中だけ音楽流そうよ」

「じゃあ外部のノイズキャンセリング機能もつけとこ。もちろん中からも防音で」

「カラオケの個室かな?」

「傘の範囲内は温度調節機能で常に適温になるようにした」

「有能」

「WiFi付けよ」

「俺がWiFiになるってことだ…ってコト…??」

「ネタと魔法が飽和しそう」

そんな風に盛り上がっているところに、マレウスがふらりと帰寮してきた

盛り上がる談話室にマレウスはお目目を幼女のごとくぱちくり瞬かせる

天下の何様王様マレウス様の登場に若干緊張で表情の固くする寮生達

また僕がいない間だけ楽しそうにする…と幼女の如くちょっぴり拗ねたマレウスに、ハルトは傘を持ってとてとて寄っていく

「こんにちは、ドラコニア寮長」

「あぁ」

「ドラコニア寮長もこれに参加しませんか?」

「これ?」

不思議そうに差し出された傘を見るマレウス

見た目は何の変哲もない雨晴れ兼用のシンプルの傘だが、魔法と祝福が雁字搦めになった呪物になっていた

「実はですね… 」

自分の体質やら傘を奪われたり壊されたりされるのが腹立つやら金返せやらをぼかしてマイルドに言い替え

「てわけで、最強の傘を作ってます」

と、ハルトがのんびりと説明する

マレウスは改めて傘を見下ろす

傘を壊されないように頑丈にして、盗難防止の魔法をつけるという話だったが、どう見てもオーバーキルな仕上がりである

高度な魔法が絡み合い、悪意には倍加した悪意を叩き返す過剰防衛の権化になっているし、傘の中に入れば騒音も猛暑も寒波もミサイルの雨とて防げる絶対防御の守りが発揮させるだろう

この傘が量産されたら戦争すら無傷で勝ててしまいそうな、とんでもない状態である

本来なら、ひとつの物体にここまで魔法の重ねがけは出来ないはずなのだが、ハルトのユニーク魔法の効果か…とちょっぴり真面目な顔で見下ろし、ハルトをビビらせること10秒

マレウスはふっと強者の微笑みを見せつける

まぁせっかくの男子高校生満喫中なのだし。親交を深めるにはノリよくしろってリリアも言ったし

「よかろう、僕からも祝福をやろう」

と手に魔力を溜めつつ下々の者たちに言い放った。仲間外れにされなくて嬉しかったので、ノリノリである

見た目は世界を滅ぼす魔王のようだったが、とりあえず機嫌を損ね無かったらしいので談話室の住人達は内心ホッとした

余談だが、みんなでなんかやる時にはマレウス君も仲間に入れてあげましょうと本人不在の寮内会議で決まっているのだが、中々お声がけしづらくあまり守られていない

世界屈指の魔法師の腕前を見ようと身を乗り出す皆の期待の視線を受けながら

「この傘にかけられた魔法は、ドラコニア一族の血筋が耐えるまで消えぬであろう」

と朗々とした声で傘に祝福を与える

マレウス・ドラコニア、全力の祝福である。ついでに自分レベルの魔法師でないと複製出来ないようにもしておいた。この傘の大量生産はちょっとお国的にも不味い

「やべぇ、家宝になっちゃったや」

皆の祝福を受け、オーロラのごとく7色の光を放つ傘を掲げる

「エクスカリパラソルと、エクスカリアンブレラ、どっちがいいですかね?」

「…エクスカリパラソル」

そう、これがマレウス命名、エクスカリパラソル誕生の時である

談話室の全員が名前ダセェ…と思っていたことなぞ、知る由もない



☆☆☆
どうでもいい補足
ハルト君のユニ魔のおかげで傘は大爆発を起こさなかった。以上!
分離と融合が出来て、例としてはカフェオレから牛乳だけ取り出したり戻したり出来るユニーク魔法??
使い方次第ではトレイ先輩みたいにちーとになりそうだけど、細かい設定は長くなったのでカット!

このあとリリアちゃんは傘をみて爆笑する。
何これ魔法パンパンで怖っww
マレウスに複製させて国へ持ち帰っている、かもしれない




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