監督生「言葉、わかんない」

「prefect!!」

とエースがこちらに大きな声を張り上げる

グリムが

「エースが呼んでる。いくぞ!」

と声をかけてくれる

それに大きく頷き、グレートセブンの石像前を通り過ぎた



ジェイドがキノコの世話をしていると、監督生が植物園へと入ってきた

珍しく一人らしく、あの魔獣や目に痛いカラフルなオトモダチは居ないようだ

ジェイドは霧吹きを置き、軽く膝を払って立ち上がる

監督生は何やらこの学園の不手際で連れてこられ、帰ることが出来ないため入学を許された生徒らしい

あの人間を調べれば、学園の弱m…じゃなくて、いい感じに使える情報を提供して貰えるかもしれない

ジェイドはニッコリと微笑んで、何やら探すようにキョロキョロしている監督生の方へと歩み寄った



「こんにちは、監督生さん」

ジェイドが声をかけると、監督生はビクリと大きく肩を揺らした

「ふふふ、そう怖がらないで。別にとって食おう等と思っていませんよ」

クスクスと笑うジェイドに、監督生はただただ困ったように微笑む

「何やら探しているように見えましたので…よければお手伝いしましょうか?」

「……。」

監督生は困った笑みのまま動かない

ジェイドは少し首を傾げる

「耳が聞こえていない訳ではありませんよね?まさか、言葉がわからないとか?」

嫌味のつもりだった。驚きのあまり、思考が停止してしまっているのだと思ったから

しかし監督生は、嫌味にも反応せず、ジェイドを真似るように首を傾げる

「…監督生さん?」

「…はい?」

耳は聞こえているらしい。

「言葉、わかります?」

トントンと唇を人差し指で叩きながらそう尋ねると、監督生はとても困った顔をして

「グリム…」

と呟くように答えた



監督生は困っていた

グリムを探していただけなのに、何故かジェイドに手を引かれ、オクタヴィネル寮へと連れて行かれたからだ

しかも、なんかこう、子供扱いされてる。迷子センターに連れていく感じ

手を握っているのに、何度も振り返ってついてきてる?ちゃんといる?と確認するようにこちらを見るのだ

普段なら困っている人を、ニンマリ歯を見せて何を考えているか分からない笑顔で見ている彼が、である

手を引かれて水族館のような廊下を抜けて、VIPと書かれた部屋へと通された

奥で正しくボスのように座っていたアズールが立ち上がり、両手を広げて歓迎してくる

え、なに?獲物認定されてるの?なんで?

ジェイドはビビる監督生をソファーへと座らせる

これも子供対応だった。ソファーまで手を引き、座面をポンポンと叩いて示してから肩を軽く上から押してポスンと座らせられ、監督生は目をぱちくりするしかない

ジェイドは監督生に手のひらを見せた。多分ここに居なさいってことだろう

監督生が頷くのを確認し、ジェイドはすすすとアズールの元へ向かい、何やら話し始める

なんか餌になるような話題あったかな…とか、オンボロ寮はあげれないんだけど…とか、監督生はわりと失礼なことを考える

なんとなく居心地が悪く、座りが悪いわけではないがモゾモゾと意味もなく姿勢を正す

逃げたら怒るかな…なんて考えつつアズールとジェイドを見ていると

「little shrimp!!」

と背後からドンッと勢いよくぶつかられる

驚いて見上げるとフロイドがニコニコしていた

「What happened? Any troubles? It's unusual, isn't it?」

「???」

「Don't ignore it.」

「?????」

フロイドの表情が笑顔が消え去り、表情が抜け落ちる

何も答えない監督生の首に手をかけようとすると、アズールが

「フロイド」

と呼んで止める

監督生は困惑顔のまま、フロイドやアズールやジェイドをキョロキョロと眺めているだけで、何も言わなかった



「監督生さん」

そう呼びかければ、冴えない人間は

「はい」

と答える。その目はサメの影を目にした稚魚のように、不安そうに揺れている

「あなた、僕の言葉、わかります?」

アズールがゆっくりと区切りながらそう話しかけると、監督生は視線をさ迷わせる

「ゆっくりで構いません。」

そう促してやると、監督生はうんうん唸ってからようやく口を開く

「…言葉、ダメ。グリム、喋る、わかる。…わかる?」

「なるほど。グリム君の言葉だけは通じていると」

ジェイドが顎に手を当てて何か考え込み、監督生は所在なさげにソワソワする

フロイドはそんな監督生に『小エビみ』を感じ、ニンマリと笑う

ソファーに腰掛ける監督生の前に屈みこみ、少し低い位置から見上げるように

「小エビちゃん」

と甘い声を出す。監督生は目をぱちぱち瞬いてから

「なに、ですか?」

と首を傾げる

「あは、小エビちゃんってのはわかるんだね」

機嫌よく監督生の小さな空っぽの頭を撫で回す。

されるがままに頭を揺らしながら、監督生はちょっぴり困ったように微笑む

「監督生、小エビちゃん、トリックスター、呼んでる。違う?」

「んーん、合ってる合ってる。エラいエラい」

「小エビちゃん、言葉、違う。聞く、わからない。困る」

「それさ、授業わかんの?ついてけてる?」

「??」

「じゅ、ぎょ、う!…んー、勉強、宿題?黒板?あー、せんせぇの話」

「…黒板、読む、出来ない。じゅぎょ?も、分からない。調べる、わからない、…疲れた」

「え、普通に可哀想…よく頑張ったねぇ、小エビちゃん」

たどたどしく説明する小エビの隣にドカりと腰掛け、小エビをギュッと抱き締める

アズールからソファーが壊れるだろ!と怒声が飛ぶと、監督生がビクりと震えた。自分が怒られたと思っているらしい

「アズール!小エビちゃんビビってんじゃん!」

「お前のせいだろうが!」

言い争いが始まると、監督生はおろおろし始める

ジェイドはそんな監督生にクスクス笑って、フロイドの反対側に腰掛け目線を合わせる

「学園長は、あなたが、お話できないこと、知っていますか?」

「がくえんちょ?」

「学園長、ディア・クロウリー先生です」

「クロウリー、知らない、…多分」

「あいつクソだな…」

不安そうな監督生に、アズールはメガネを外して目頭を揉みながら思わず毒吐く

全く未知の異世界に連れてきた挙句、その後のフォローをほとんどせずにオンボロ寮へ放置した様子がありありと見て取れる

普通異世界で生活させるなら常識から学ばせてやらねばならないし、その過程で監督生が読めず聞けず話せずなのも把握出来たであろう

学園長が把握していないなら、恐らくほかの教師たちも監督生の現状を理解していないだろう

え、無理。僕なら泣く。可哀想

オンボロ寮取り上げようとしただろって?流石にここまで無知な稚魚だと知っていたらあそこまでやらなかった。

それに、オンボロ寮を改装したらちゃんと管理人として雇いがてら住ませてやるつもりだったし。身一つで追い出すほど鬼じゃない

そこでアズールはふと思い当たり

「……あなた、僕と契約した際、契約書の中身、読めてました?」

と尋ねる。

「??」

「これです。」

伝わっていないと判断し、ユニーク魔法の契約書を取り出して、読めたのかと再度尋ねる

監督生は言葉がよく分からなかったらしく、何か契約させるんですか?と警戒するように表情を強ばらせた

そのなけなしの警戒が、懸命に武器として全く役に立っていない小さなハサミを持ち上げて威嚇する小エビにしか見えず、フロイドとジェイドは思わず眉尻を下げる

「この様子だと、わけも分からずサインしたようですね」

「大人しい方だとは思っていましたが、言葉が分かっていなかったとは…」

「小エビちゃんかわいそー…。オレらで学園長にお話してきてあげるからねぇ」

小エビのちっちゃな警戒なんて気にせず、アズールは契約書を片付け溜息をつき、ジェイドは何やら顎に手を当て長考をはじめ、フロイドは小エビを稚魚のように抱きしめ頭に頬ずりする

小エビはよくわからず頬擦りされるがまま目をぱちくりしている

契約させるんじゃないの?なんで?と困惑する監督生を置き去りに、アズール達は他寮の寮長達に連絡を取り始めた

とりあえず、寮長に報告して協力を仰いでから、学園長をつるし上げる所存である

そんなこんなで次の日から、羽を毟られた学園長に首輪をつけて連れてきた担任や先生方に謝られ、こくごのおべんきょうをすることになった



☆☆☆
監督生からみると、いつもこんな感じだったよって説明。Google翻訳先生。



学園長「I will bother you」

「?…こんにちは」

学園長「It's sudden, but please clean it.」

グリム「げぇ!掃除なんてやなんだゾ!!」

(あ、掃除頼まれたのか)

学園長「Don't say such a cold thing」

グリム「やだったらやなんだゾ!」

学園長「……Food costs are high and spicy…」

グリム「ぐぬぬ…食費を盾にするとは卑怯なんだゾ」

「(食費出しませんよ的なことを言われたのかな?それは困るなぁ)掃除、します」

学園長「Will take care of it!thank you!!!」

グリム「オレ様はしねぇからな!」

「ダメだよ、お掃除しなきゃ、ご飯食べさせて貰えないのは困るよ」

グリム「ふなぁ…」



☆☆☆
保護者ヴィネルになった



ジェイド「いいですか、監督生さん。誰かに絡まれたらすぐこれを押してください。出来ますか?」

「??(防犯ブザー?)」

フロイド「コレ押すとね、オレかジェイドがすぐ行くから。わかったぁ?」

アズール「イデアさんに作っていただきました。録画と録音機能があり、各寮長にも連絡が行きます。すぐに押すんですよ。ここを、伸す。」

「ここを、押す。」

ジェイド「よく出来ました!」

(うーん、子供対応…)




[ 422/554 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -