生理中の小エビちゃんは強い

通りかかったフロイドが見たものは、無表情で思いっ切り金的キックを繰り出す監督生の姿だった



事はほんの数分前

監督生はこの学園でただ1人の女の子だ。

それ故に、妙な絡み方をされることがたまにあった。

そのひとつが今目の前にいる何かしらの獣耳の付いた男のような下品で最低な性的なことに関わる絡み方…

「メスってさぁ、生理中ってめっちゃヤりたくなるんだろ?相手してやろっか?」

貴重なランチタイムを暖かな日差しのある中庭のベンチで過ごしたかっただけなのに、ろくでもない奴に絡まれた

獣耳がある姿から察するに、彼はとっても鼻がいいのだろう。

経血の匂いを嗅ぎつけて、その上でわざわざ1人になるところを狙って話しかけに来たようだ

監督生は生理が重い方だった。入院するほどではないが、薬なしで過ごせるほど楽ではない。

しかし薬は結構高い。生理用品だってタダじゃないし、グリムより多めに自分だけ出費するのも申し訳ない。

なので節約の為に、薬は極力飲まずに我慢して過ごしている

お腹も痛いし、頭も重い。本当なら授業を休んで丸くなって寝ていたい。

でも、グリムと自分は2人で1人の生徒として出席している。グリムの為に休む訳にはいかない

そうやって身体を引き摺るようにオンボロ寮から這い出し、午前の授業を何とかこなしたと言うのに…どうしてこんな仕打ちをされなきゃならないのか。

で、なんだったか。あぁそうそう、生理中は発情するから交尾させろって話。

監督生はニヤニヤするガタイの良い獣をしばらくじーっと見つめる。

子宮がぎゅっと握られているように痛いのに、こんな状態でヤるだと?

身体は鉛のように重いし、頭は体が揺れる度にガンガン疼く。こんな状態でヤるだと?ふざけんな。

監督生は普通の子よりちょっと思い切りの良い女の子だった。

乱れまくりの自律神経が指示するがまま、怒りに身を任せて足に力を込める

そして、同じ痛みをプレゼントし体験させるべく、思いっきり相手の股間を蹴りあげた



「ひゅっ」

思わずそう喉を鳴らしたのは通りすがりのフロイドだ。

モロ股間に入ってる。フロイドがオスだからこそ攻撃しない部分に、めっちゃ容赦なく蹴りが入った

「今私、お腹めっちゃ痛くて機嫌最悪なんです。で、男なら『そこ』かなって。」

監督生は痛みのあまり声も出せずに地面に転がった獣を冷たく見下ろす

「その状態でさっきと同じこと言えるならセックスしてやるよ、童貞が」

いつもの可愛い小エビちゃんはどこへやら…フロイドは思わず足を止めて

「小エビさん…いや、シャコさん?」

と呟く。

フロイドが話しかけるとビクッと震えて、とりあえず取り繕ったように微笑むだけのあの小エビちゃんが、今や歴戦の勇者のように仁王立ちしている

「小エビちゃぁん、めっちゃ怒ってんねぇ。そいつになんか言われたのぉ?」

フロイドはまだ怒りが冷めやらない様子の監督生に近付き、地面に転がって呻いているオスをコツンと軽く蹴飛ばす

「メスってさぁ、生理中ってめっちゃヤりたくなるんだろ?相手してやろっか?とお優しぃーく声をかけて頂きました」

「oh......」

フロイド・リーチ。論外が服を着ている男。しかし実はメスには手を出さないし、親から厳しーーーく教育を受けているので女の子には優しい一面がある

というより、無闇にメスをいじめるような真似をすれば「メスを大事にしないオスなんて生きる価値がないクソだ」と鉄拳制裁では済まないお仕置が待っている家庭だ

うぅ…尾鰭が縮み上がりそう…

え?海の中で追い回した経験があるだろ?あんなもん、本気じゃなかったしノーカンノーカン。本気だったら秒で捕まえてギューッと絞めて八つ裂きだっての

「…ねぇ、フロイド先輩、生理中ってそんな臭います?」

「え?いや、別に…」

正直言うと、生理中のメスはちょっと体臭が強くなるし、血の匂いがするので生臭い

珍しく言い淀むような仕草を見せたフロイドに気が付き、監督生は顔を顰める

「……体臭消しってサムさんのとこに売ってますかね」

「そんなの要らないよ。小エビちゃん、甘くていい匂いだよ」

「うっそだぁ。フロイド先輩、いま一瞬言葉詰まったもん。見てましたよ、私」

「…小エビちゃん、変なとこばっか見てるね。」

フロイドはいつもより話しやすい監督生の頭をぽんと撫でる

「あ、頭ダメです」

「なんでぇ?」

「痛いから」

「…小エビちゃん、薬は?」

フロイドは急に真面目な声色で問う

「結構高いし、合うヤツわかんないから、あんま飲まないようにしてて…今空腹だし」

「小エビちゃん、セイリって、適当にすると子供産めなくなるんだよ?ダメだよそんなの。」

上着を脱いで、監督生の腰に巻き付ける。その際、思ったより腰が細いことに驚く

あぁ、メスじゃん。この子、メスだわ。ちっさくて弱っちい女の子。

監督生もフロイドの行動に驚く。大きな制服は先程でフロイドが着ていただけあって暖かい

思ったより優しく、キツくないように巻いて袖を縛る

冷えていたお腹に温もりが染みる

「アズールに頼んであげよっか。」

「うーん、払える対価なんてないです」

「さっきの話聞いてたァ?そーゆーので対価とらねぇっつーの。」

フロイドは眉間に皺を寄せ、はぁー…とため息を吐く

「おいで。アズールが信用出来ねぇなら、イシダイ先生でもいいし、ちゃんと薬飲みなぁ?」

体壊してからじゃ遅いんだからね。と言いつつ、フロイドは小さな女の子を抱き上げる

「ほ?乙女の夢、お姫様抱っこ?!」

「乙女の夢なの?よかったねぇ、夢が叶って」

「私の夢とは言ってませんけど…あ、わざと揺らさないで…頭がガンガンする…」

「体調悪い時くらいいい子にしてな」

片手で軽く監督生を抱え、もう片方の手を頬に当てる。少し低めの体温が監督生の頬の火照りを冷ます

「あ、それ、気持ちいいです」

すりすりと子猫のように自分の手のひらにすり寄ってくるちょっと弱ったメス

可愛いじゃん…

フロイド・リーチ。大人に見えて実は童貞だし思春期真っ只中な男の子。

「…あー、落ち着けオレ。ここで変な気起こすと家に帰れないぞ…」

ギリリと歯を食い縛り、下半身に棲むウツボを落ち着ける

とりあえずやることは

「小エビちゃん、お薬飲んで寝んねしようねぇ…」

とにかくこのメスを守ってやらないと。

そんで

「あー、お前絶対番にするからな…」

クソ弱いけど思い切りのいい強いメス、絶対俺のもんにしまぁす!!



☆☆☆
生理中で情緒バグってた小エビちゃん、我に返ってから金蹴りした獣人に仕返しされないか怖くて震えるし

アドレナリンドバドバ中にフロイドと絡んでたので素に戻って後悔するし

なんか急に優しさMAXになって絡む様になったフロイドにどうしていいかわからずエースとデュースの背中にしがみついてギャン泣きするし
(それでご機嫌斜めになったフロイドに2人は絞められた。なんで?)

アズール君からはホントに対価なしで凄くよく効くお薬を無償で貰えるようになった
(大丈夫ですか?合わなければすぐ教えて下さいね。あなた女性でしょう?身体を大事にするのは当たり前です。オスより脆いのですから、もっと気をつかって…ちゃんと聞いてます?)

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