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Domの中にはCommandをあまり使わず、Subを着飾ったり給餌するPrayが好きな人もいる

アズールはどうやらそういうタイプらしい

「口を開けて下さい」

何度目かになる指示に、監督生はうっとりとしつつ素直に従う

アズールの白く細い指には、サクサクで甘いクッキーが挟まれている。焼きたてでほのかにまだ暖かそれが唇に当てられる

甘くて芳ばしい香りが鼻腔を擽る

「食べて」

「…ん」

「ラウンジで提供しようかと思いまして、僕が自ら作ってみたんです。いかがですか?」

「とても、美味しいです」

「ふふ、嬉しいです。ありがとうございます」

アズールがちゅっ、ちゅっと唇のすぐ横に口付ける度に、監督生は「んっ」と鼻から抜けるような甘い声を出す

まるで頭のてっぺんから足の先までアズールの所有物だと言うように振舞う姿がとても愛おしい

次の機会があるなら好きに飾り付けてやりたい。衣装はもちろん、アクセサリーや下着まで、自分好みに染め上げてやりたくなる

「紅茶もいかがです?熱いのは平気ですか?」

「あの、猫舌で…」

「では少し冷ましましょうか」

アズールの形の良い唇が窄められ、ふぅと優しく息を吐いて紅茶の表面に波を立てる

何故かその様子に倒錯的な魅力を感じてしまい、監督生はアズールから目を逸らす

「ダメですよ、監督生さん。Look(見て)」

「んぅ…」

「ふふふ、少し意地悪でしたか?すみません。あなたが可愛らしく恥ずかしがるものですから…いい子ですよ」

艶やかな唇から視線を逸らすことを許されず、監督生は物欲しそうな目で見つめてしまう

「どうしました?して欲しいことがあるなら言って」

アズールの空色の瞳が企むように細められる。獲物を捕らえたかのように、瞳孔が広がる

「あ、…その」

「Say(言え)」

「…ふぅ…さっき、ちゅうされたのが、気持ち良くて…」

「それで?」

「んっ…ぁ…ちゅう、して欲しいです」

「随分と可愛いお願いですね。いいですよ、ちゃんと言えたご褒美です」

アズールは紅茶のカップをソーサーへ戻す。

膝に乗せた監督生の頬に手を添えて、唇を触れさせるだけのキスを求められるままに与えてやる

監督生はキスをされる度に潤む瞳を細めて、モヤがかかったように不明瞭になっていく思考を不安に思うことなく身を委ねる

「おや、もしや」

アズールは監督生の様子に気が付き、ふふと笑みを零す

どうやら、監督生はSub spaceとやらに入ったらしい。

信頼関係があり、相性が良いパートナーとplayをした際、Subは幸福感に満たされ一種のトランス状態になるらしい。

それがSub spaceと呼ばれる状態なんだとか。

彼は思いの外、自分に気を許してくれていたようだ。とレンズ越しの瞳に熱を帯びさせ、監督生を見下ろす

監督生の目はぼんやりとアズールを見つめ、唇は半開きで熱い吐息を繰り返している。

アズールが触れる度に幸せそうに惚けた瞳がゆっくりと瞬く

監督生の額に汗で張り付いた髪をどけてやり、そこにもちゅっと口付ける。

「あぁ愛おしい。このまま閉じ込めて僕のものにしたい」



「そろそろ戻ってきてください、監督生さん。終わりましたよ」

アズールがそう声をかけて膝からソファーへ降ろしてやる

監督生はぱちぱちと瞬きを繰り返す。熱っぽく潤んだ瞳が普段のお気楽そうなものへと戻っていく

「あれ、俺、」

「随分と気持ちよさそうでしたね。spaceとやらに入っていたようですよ」

「あー…めっちゃ相性良かったみたいですね…」

少し気まずそうにしている監督生にアズールはにっこり笑いかける

「あなたが望まれるなら、いつでもお相手しますよ。ぜひご贔屓に」

するりと顎を撫でられ、背筋に甘い痺れのような感覚が走る

「…、考えておきます」

対価が怖いから結構です、と口にすればなんとなーくだが酷い目に合わされる気がして、監督生はただ苦笑いした


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