疲れた時には甘いもの2

「何してるんです、お前たち…」

後で来るようにと言っておいたのに一向に戻ってこない双子を探しに来たアズールが、呆れた表情で3人を見る

モストロラウンジ内に甘く芳ばしい香りが満ちている

「やっべ!バレた!」

フロイドは溶けて手に垂れたアイスをペロリと長い舌で舐めとって笑う

「アズールも食べますか?」

ジェイドも残りの1口を口内に収めて笑った

「あの、俺のメロンパンとアイスなんだけど?」

口端に付いたクリームを舐め取りつつハルトが苦笑いする

「まぁ、もし良ければどう?美味しいよ?」

「…何を食べるかにもよります」

アズールは先程から漂っている甘い香りを吸い込んでため息を吐く

「ハルトねぇ、超ウケんの。焼いたメロンパンにアイス丸々一個挟むのー!」

「とても美味しかったです。コーヒーに生クリームをいれていただきました」

「うぐっ」

脳内でカロリー計算をしたらしいアズールが呻く

しかし、モストロラウンジに漂う香りが空腹を意識させる。

「あー、焼きます?」

ハルトがまだメロンパンとアイスがいくつか入っているビニール袋を掲げる

「………。」

アズールはしばらく考える。今日は1日書類仕事で頭を働かせていたし、正直、今、めちゃくちゃ甘いものが食べたい

1日くらい甘いものを食べたって問題ない。明日少しカロリー調整して運動メニューを増やせば直ぐに取り戻せる程度だ

ハルトはアズールの沈黙に緊張する。

なんか怖い顔して黙り込んでるけど怒ってる?などと心配するハルトの後ろで、何となく幼なじみの葛藤を読み取った双子がハルトの手から袋を奪い取り、着々とメロンパンを切って焼き始める

「………僕も食べます。」

「あーい!インストックナーウ!!ってもう焼いてるー?!」

「俺もおかわりー!」

「あ、僕もおかわり頂きますね」

双子がオーブンにメロンパンを入れつつニコニコと歯を見せて笑う

「俺の分も追加焼いてよー」

ハルトは呆れたように目を細めつつ笑ってアズールを手招きする

「お疲れなアズールは椅子に座ってなよ」

「…お言葉に甘えます」

アズールははぁとため息をついて走ってきた椅子に座る

「………ん?今、この椅子、獣のように走ってきませんでした?」

「え?知らねぇ」

フロイドがケラケラ大口を開けて笑う。

「アズール、相当お疲れなのでは?」

ジェイドも眉を寄せてからかうように笑う

「……ハルトさん?」

「…アイスはチョコかバニラか期間限定の紅茶、どれがいいですか?」

「…紅茶で」

アズールはじっとりとハルトを見つめていたが、メガネを持ち上げふいと目を逸らす

許されたようだ。

ハルトはアズールの分のカップを用意しつつ

「コーヒーに生クリームは乗せちゃう?ウインナーコーヒーだよ。なんならマシュマロも入れるけど」

と尋ねる。アズールがカッと目を開いた

「はぁ!?あなたそんな悪行を重ねていたんですか?!」

「悪行て…じゃあブラックでいいですか?」

「……入れてください」

「カロリー無礼講!!いぇい!」

ハルトがブラックコーヒーの上にクリームを搾り入れる

「焼けたー!俺バニラー!」

「僕はチョコ貰っても?」

「はいはいどうぞー!はい、アズールの紅茶アイスメロンパン♪」

ハルトがアズールの前にコトリと皿を置く

焼き立てのメロンパンに丸々乗せられたカップアイス…思ったより分厚い。

ナイフとフォークで崩して食べるのだろうかと3人を観察するが、3人とも分厚さをものともせず大口を開けて齧り付くので、アズールは考えるのをやめた

「いただきます」

メロンパンを手に取り、3人を習って大きな口で齧り付く

ハルトはそれを眺め、双子程では無いが案外歯が鋭いんだなぁと呑気に考える

「うっま!」

「でしょー!!」

思わず叫ぶ様に声を上げたアズールに、何故かフロイドが誇らしそうに答える

「これは、」

アズールが何かボソボソと呟き始め、双子が楽しそうにニンマリ笑う

「なんか面白いこと思い付いた?」

「これはこれは…ふふふ」

「え、何?こわ…」

ドン引くハルトを他所に、3人組は胡散臭く笑いつつメロンパンを口に収めていく

なぜだか自分が皿の上に乗せられた気分になって、ハルトは苦笑しつつ控えめにパンに齧り付いた



☆☆☆
フロイド「メロンパンアイス入りましたー!」

ジェイド「大人気ですねぇ」

アズール「やはり思った通り…馬鹿な男共はこういう頭悪い高カロリーメニューに食いつくと思いました。大量購入で安く仕入れられましたしね!良くやりましたよハルトさん」

「ん?俺めちゃくちゃ馬鹿にされた?褒められた?」

ジェイド「ふふ、褒めてますよ」

「胡散臭っ」

アズール「あぁ、あとあなたのユニーク魔法を使ってショーを企画したのですが」

「ん?!聞いてないし、内緒って言ったじゃん?!」

フロイド「ごめーん。また踊りたくてバラしちゃった」

ジェイド「おやおや、バラしちゃいましたか」



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