だって僕達17歳

「ジェイドくーん?ボクの記憶が確かならぁ、ジェイド君から告白してくれてぇ、ジェイドとボクは恋人同士だよねぇ?」

ハルトはニコニコ笑ってジェイドにしがみつく。ジェイドもニコニコと笑って

「そうですね。もうすぐお付き合いして3ヶ月になりますね」

と答える。ハルトはジェイドの首に腕を回し、妖艶に微笑んでみせてから

「ならなんでキスしてくれないんですかねぇ?!」

とブチ切れた

「いえいえ、僕はいつキスして頂いても良いのですよ?」

「じゃあ屈むなり座るなりしてくれませんかぁ!?」

先程からハルトは恋人にキスをするべくジェイドの首にぶら下がっているのだが、ジェイドは笑うばかりで真っ直ぐとした姿勢を崩さない

身長差があるハルトがキスをするにはジェイドの協力がなければ不可能だというのに、ジェイドは頑なに屈まない

「くそ…山登りで鍛えられた体幹が恨めしい…」

「ありがとうございます」

「褒めてないんだよねぇ!?」

ハルトはしばらく諦めきれずにジェイドにコアラのように引っ付いていたが、ジェイドは恋人をひょいと持ち上げて荷物のように肩に乗せる

「ちょっとジェイド?」

「デートしましょうか。」

ジェイドはニコニコ笑って歩き出す。ハルトはジェイドの背中をポコポコ叩いて不満そうに頬を膨らませる

「なんでキスしてくれないの」

「まぁ、いいじゃないですか」

ジェイドは恋人のおしりを軽くポンポンと叩いた



「なんでジェイドはキスしてくんないんだと思う?そこのフロイド君」

ハルトは恋人の片割れの元を訪れていた

バスケをする気分ではなく、部活をサボって自室でスマホを弄っていたフロイドは面倒臭そうに

「それ俺に聞くー?」

と唸るように言う

「俺が知るわけないじゃん。そーゆー「相談」ならアズールにしなよ。」

てかジェイドは?と面倒臭そうにちらりとハルトを一瞥し、スマホを弄りながら尋ねる

「ジェイドは今キノコに電気流してるのでしばらく来ませーん」

「何それ意味わかんね。ウケる」

フロイドは思わずスマホを置いてケラケラ笑う

体を起こして腰掛け、勝手知ったる様子でジェイドのベッドに座っているハルトと向かい合う

「マジな話、アズールに聞いてみたらダメなの?キス出来るように手伝ってくれんじゃね?」

フロイドが胡座をかいてそう提案すると、ハルトは少し苦い表情になった。

近くにあったジェイド作のテラリウムを覗き込みつつ

「アズールさぁ、そんな相談したら絶対完璧なデートプランとか用意してくんじゃん。仮にも友達にそんなプラン組まれるのやじゃね?」

とアズールのメガネを上げる仕草を真似て笑う

「デート終盤で入江に2人乗りボートで漕ぎでて、カニ畜生の歌を歌い出すよきっと。シャララララ…」

「ちょっ急に歌うな!意味わかんねぇし、アズールのイメージクソじゃん!」

キッスしてーと妙にセクシーな声で歌い出すハルトの様子に、フロイドはしばらく腹を抱えて笑い転げる

ひぃひぃと呼吸を整えながら

「てかカニ畜生ってなんなの?カニに兄弟でも殺されたわけ?」

とフロイドが冗談混じりに聞けば

「カニ畜生ごときにしっとりとボクの心情歌いあげられると思うと、それだけで腹が立つじゃん!カニ畜生なんかに理解されてたまるかっての」

とハルトはケラケラ笑った

「カニに対する独特の恨み持ってんね、ハルト」

フロイドもまた腹を抱えてベッドに転がりながら、片割れがなんでこの子を選んだのかわかった気がすると脳内で呟く

素直で自然体で無理なく一緒に楽しめるタイプだし、次に何を言い出すか予想がつかなくて面白い。まさしく片割れが好きそうな子だ。

フロイドはしばらく仰向けで考え込んでから、ニンマリ笑って体を起こす

「ハルト、ちょっと来て」

「ん?」

フロイドがベッドに腰掛け手招きすると、ハルトはなんの警戒もせず近付いてくる

フロイドは目の前までのこのこと歩いてきたハルトの肩を掴み、可愛く上目遣いで見つめて

「ジェイドがキスしないなら、俺とちゅーしちゃう?」

と尋ねる。

「どうせ顔一緒だし、ジェイドはしてくんないんでしょ?」

フロイドはぽかんとしたハルトに顔を近づける

「あ、ちょ、フロ…」

焦るハルト等気にもとめず、フロイドはハルトと唇を重ね…

バァン!!と激しい音がし、ハルトは勢い良く後ろに身体を引かれ、ギュッと抱きしめられる

「フロイド!」

「盗み聞きとか、ジェイド趣味悪ぅ」

珍しく焦った様子で声を荒らげるジェイドを見て、フロイドはゲラゲラ笑ってベッドにひっくり返った

状況が飲み込めずに動揺しているハルトは、ジェイドの腕に閉じ込められたまま上を見たり前を見たりと双子に視線を忙しなく移動させる

「ジェイドォ…その子は俺と違うんだから、ちゃんと話してあげないとわかんないし。そのうち他のオスに取られちゃうかもよ?」

フロイドは反動をつけて立ち上がり、警戒する片割れとその恋人の背中をグイグイと押し部屋から追い出す

「ドア、後でちゃんと直してよね。」

フロイドはヒラヒラと手を振って笑い、先程ジェイドが蹴破ったドアを適当に閉じた

「え、その、ジェイド?」

「…はぁ。」

部屋から追い出された2人は、しばらく立ち尽くしていたが、そのうちジェイドが手を引いて歩き出した

オクタヴィネル寮には、海の中が見える廊下がある。そこでジェイドは立ち止まってハルトと向かい合った

「聞いて下さい。実は僕、お付き合いするのはあなたが初めてなんです」

ジェイドは言いにくそうにしながら、ハルトの肩を掴む

「その、ですから、キスもしたことがなくて」

恥ずかしくて出来なかったんです

そうジェイドは少し頬を赤らめて言った。ハルトは、普段大人びている恋人が急に年相応になったようで少し可笑しくなる

「それがボクのキスを拒んでた理由ってこと?」

「不安にさせたい訳ではなかったのですが、その、」

下手だと思われたら嫌じゃないですか。

ジェイドは口元に手をやり、恋人から視線を逸らす

ハルトは少し笑って

「ボクも付き合うのジェイドが初めてだし、ファーストキスなんだ。だから、下手とかわかんないし。」

とジェイドの首に手を回す

「ボクってば思春期真っ盛りの17歳の男の子なわけで、恋人とキスしたくて仕方ない訳だけど」

ジェイドはボクとキスしたくないの?とハルトはわざとらしく尋ねる

ジェイドはしばらくハルトを見下ろしていたが、すっと腰を曲げて目線を合わせる

「ハルト、僕も好きな子にキスを1つするのに緊張してしまう17歳の男の子なんです」

「あっはは、「男の子」なんて似合わねぇ」

「そうですね。」

ハルトは恥ずかしそうに笑いながら、目線を合わせてくれた恋人の頬に手を添える

「でもいいよね、ボクらまだ青臭いガキなんだから」

キス1つで浮き足立ってもいいじゃないか!!

ジェイドもハルトの頬に手を添え、互いに引き合うように唇を重ねる

触れるだけのキスをして、少し赤い頬で2人はケラケラと笑った



☆☆☆
フロイド「やっとちゅーできたんだ。おめでとー。これでキスしてなかったらカニ畜生の歌を俺が歌うとこだったし」

ジェイド「なんですかカニ畜生の歌ってwww」

フロイド「ハルトに聞いてみなよwwまじウケるからwww」



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