花咲く 恋咲く

「ハルトちゃーん!今日も1枚撮らせてー」

「ケイト先輩!いいですよ!」

ハルトはドリアードの血を引いているらしく、頭から花が咲く

ケイトはマジカメ映えするハルトと朝昼晩と写真をあげるのが日課になっていた

「はいチーズ☆今日の花は何?タグ付けするから教えてー」

ケイトは撮ったばかりの写真を見せる。

ハルトは自分の頭に咲いた花が見えない

ちなみに、頭に咲く花は自分で制御出来ないらしく、いつの間にか咲いたり実ったり無くなったりしている様だ

ごく稀に珍しい貴重な植物が生えているらしく、クルーウェルやサイエンス部の部員やアズールに譲ってくれと頼まれることもある

正直ハルトにとっては気が付けば生えてる付属品程度の認識なので報酬など要らないのだが、お菓子などを大量にくれるのでありがたく貰っている

花が咲くと栄養と体力を使うのか、お腹が空くのだ

2人は並んでスマホを覗き込む

「んー、白い小さい花…リナリアかな?」

「へぇ!可愛い花だね!#今日のハルトちゃん #リナリア #可愛いお花ちゃんっと」

ケイトがマジカメに写真をアップする。満足そうにしているケイトを見上げ、ハルトは笑う

「ふふっ、僕とばっか写真撮って飽きません?」

「飽きないよー!いっつも違う花が咲いてて可愛いし、ハルトちゃんとのお話しも楽しいしね」

「ふふ、ならいいんですけど」

ハルトは花が綻ぶように微笑む。ケイトはポンポンと後輩の頭を撫でた

「ねー、よかったらこのままランチ行かない?お腹すいてるでしょ」

「ケイト先輩の奢りですか?」

「仕方ないなー、可愛い後輩ちゃんだからね。他の子には内緒だよ」

「はい」

ハルトが返事すると同時に、ぽぽぽんと頭に新しい花が咲く

ケイトはまたスマホを構えて笑う

「あ、また咲いたねー。これはけー君もわかるよ、シロツメクサと四つ葉のクローバーだね」

「なんで勝手に咲いちゃうんでしょう」

ハルトは不思議そうに自分の頭を触る

「まぁ、細かいことはいいじゃん!ご飯行こー」

ケイトは自然にハルトの手を引いて歩き出す。

ポンッとまた違う花が咲く

赤とピンクのポピーの花が歩行に合わせてふわふわ揺れた



「おはよー、ハルトちゃん!今日も写真撮ろー?」

「はい!」

ハルトの姿をみつけ、ケイトが声をかける。隣にいたトレイは毎日楽しそうだなと笑って先に行く

慣れた様子でカメラに収まり、2人でスマホを覗き込む

その様子は傍から見ても花が咲いた様にキラキラして楽しそうだ

「今日はなんの花?」

「これは…紫のはライラックで…もう一個はエーデルワイスかな」

「ホントに毎日いろいろ咲いてるね」

「僕は見えないんで、あまり実感無いんですけどね」

ハルトが頭にある花を適当にちぎって自分の目の前に持ってくる

ケイトはこらこらとそれを諌めて頭を軽く撫でる

「せっかく綺麗なのにちぎったらもったいないじゃん!」

「そうです?」

「そうです!こんなに可愛いのに見えないなんて勿体ないなぁ。もう1枚撮る?」

「あはは、僕でよければどうぞ」

ウインクして笑うケイトにつられるように、ハルトも笑う

ぽぽぽんと頭に咲いている花が増える

「あ、また咲いた。これはなんの花?」

「これは、…ゼラニウムでしたっけ?」

「ピンクも赤もあって綺麗だねー」

ケイトはニコニコ笑ってハルトの写真を撮る

ケイトのスマホに写るハルトは、いつも花が咲くように可愛らしく笑っていた



「ケイトさん、こんにちは」

「あれ、リーチ兄弟の…ジェイドくん?」

「はい」

ケイトは珍しい人物に声をかけられ驚く。ジェイドは口元に手をあててクスクスと笑った

「マジカメ、拝見してますよ」

「うそー、意外なんだけど!フォローありがと」

ケイトはニコニコ笑って手をヒラリと上げる

「僕、山登りにハマってまして、植物には多少詳しいんです。それで、少し面白いことに気が付きまして」

これをどうぞ。とケイトに1冊の本を差し出す。受け取ったケイトは不思議そうに表紙を見る

「花言葉の本?」

「ええ。ハルトさん、アズールを見ると猫柳とピンクのグラジオラスを咲かせることが多いんです」

フロイドはサワギキョウとアジアンタム

「僕の時はベルフラワーとアガパンサスが咲くことが多いんです」

ジェイドはニコニコと植物の名前を並べていく。ケイトは首を傾げた

「会う人によって咲く花が違うってこと?俺の時、毎回違う花が咲いてるんだけど…」

ジェイドは歯を見せてニンマリ笑い

「ハルトさんには貴重なキノコを分けて頂いたので、その御礼ですね」

では。と言い置いて踵返して言ってしまった

「………?」

質問に答えてもらえず、残されたケイトは本を抱えてまた首を傾げた



「#今日のハルトちゃんで検索っと」

ケイトは図書室で自分のアカウントを見返していた。ジェイドに渡された(押し付けられた?)本をお供に花を調べていく

「リナリアの花言葉は、…この恋に気づいて」

ケイトは一瞬動きを止めるが、しばらくしてまた調べ始める

シロツメクサは私を思って
四つ葉のクローバーは私のものになって
ライラックは初恋、恋の芽生え
エーデルワイスは初恋の感動
ゼラニウムは愛情、君ありて幸福

ケイトはタグに並ぶ花をどんどん調べていく

ベゴニア、ブルースター、朝顔、マリーゴールド、桔梗、カスミソウ…

「ハルトちゃんってもしかして、」

ケイトは本人のいない所で見てはいけないものをみた気がして、無性に申し訳ない気持ちと恥ずかしさに苛まれる

「あー…」

ケイトは後頭部をかいてハルトを探すため図書室から出て歩き始めた

目的の人物は目立つ為、いつもの様にすぐに見つかった

「あ、ケイト先輩!また写真ですか?」

声をかける前に気が付いたハルトが笑う

「あの、ハルトちゃん。そのー、ジェイド君からコレ借りてさ」

不思議そうに表紙を見たハルトだが、書かれている文字を見て段々と顔を赤くしていく

「花言葉の本…あ、あの、もしかして」

「あー、うん。ごめん、咲いてた花を調べたんだ」

「あの、僕も最近まで気分とか人とかで花が咲くなんて知らなくて…ジェイド先輩に言われて始めて気が付いて…その…」

ハルトは俯いてボソボソと話す

ケイトは林檎のようになってしまった後輩の頭をポンポン撫でる

「折角だし、付き合っちゃう?」

「ケイト先輩と、僕が?」

「うん。可愛い後輩ちゃんにそんなに熱い告白させて、応えないわけにはいかないでしょ?」

バッと顔を上げたハルトの頭に、ポンと花が咲く

「ほら、付き合った記念で1枚撮ろっか」

「…はい。」

ハルトとケイトはいつものようにカメラにおさまる。ハルトは赤い頬のままだったし、ケイトは少しいつもよりニヤけた表情になっていたが

「ハルトちゃん、この花はなに?」

「あー…」

ハルトは言い淀む。

ケイトは何かを察し、意地悪く笑って持っていた本をパラパラと捲る

「あ、やめて!ケイト先輩!」

慌てて阻止しようとするハルトを躱し、ケイトは笑う

「あったー。ハナキリン花言葉は…」

ケイトはニッコリと笑った。逃げようとしたハルトの襟首を掴んで無理やり引き止め、自分の方を向かせる

「ケイト先輩…」

ハルトは潤んだ目でケイトを見上げている

ハナキリンの花言葉は

早くキスして



☆☆☆
ピンクのグラジオラス→弛まぬ努力
猫柳→努力が報われる

サワギキョウ→特異な才能
アジアンタム→天真爛漫

ベルフラワー→楽しいおしゃべり
アガパンサス→知的な装い



[ 331/554 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -