ウィリアム・テル

ポムフィオーレ寮の談話室でヴィルが雑誌に目を通していると、賑やかしい足音が迫ってきた

「ヴィルさんー!また振られたー!」

泣きついて服に汚れやシワがつくと怒られるので、ハルトはヴィルの前に屈む

ヴィルは面倒臭そうに雑誌を閉じて頭を撫でてやりながら

「またなの?」

と尋ねた。ハルトは涙目でヴィルを見上げる

「…またです。いつもみたいに慰めて下さい」

はぁ。とため息を着いて、ハンカチで涙を拭ってやる

「あんたも懲りないわね」

「何もしてないのに振られたんですよ?自信なくしますよ…」

「もう誰かと付き合うのやめなさいよ」

ハルトは唇を尖らせる

「だって、告白されたら付き合ってみたくなるじゃないですか」

ヴィルはまた大きなため息をついた

ハルトは可愛らしい容姿をしており、とてもモテる。

ここは男子校なのだが、多ければ週一ペースで告白されている

しかし、何故か長続きはしない。

「なんで毎回1週間ともたずに振られるのでしょうか…」

「アンタには元より合わなかったのよ。」

まだいじけている様子のハルトを隣に座らせ

「そんなことより、化粧直すわよ。顔を上げなさい」

とヴィルは指示する

ハルトは大人しく指示に従い、無防備に目を閉じる

ヴィルはしばらくハルトの顔を見つめ、化粧直しをはじめた



「ハルトに手を出したバカはどうしたの?」

「きちんと、二度と近付かないように言い聞かせておいたさ」

ヴィルが尋ねると、ルークはニッコリと笑って答えた

ハルトが誰とも長続きしない理由…それは、ヴィルの指示でルークが別れるように脅しているからだ

「あの子はヴィルのお気に入りだからね。悪い虫がついてはいけない」

「アタシがこんなに世話を焼いてあげているのに、あの子はいつまで気が付かないつもりかしら。」

ハルトから、アタシのそばに居たいと思わせてやらないといけないわね。とヴィルは美しく笑う

ルークは目を細めてそれを見つめていた



「ルーク先輩、また邪魔しましたね?」

ハルトは振り返り、気配を消していたルークに声をかける

「さぁ、なんの事だい?ハルトくん」

ルークは少し驚いたが、それを微塵もみせずに笑う

ハルトは肩を竦める

「別にいいですけど…ヴィルさんも案外まどろっこしい事しますよね?」

クスクスと、イタズラをした少女のようにハルトは笑って続ける

「僕、ヴィルさんから告白されるの待ってるんです。」

「なんだって?」

普段滅多なことでは驚かないルークだが、思わず笑顔が引っ込む

「ヴィルさんてば、僕から告白させるつもりでしょ。ダメですよ」

僕のことは、ちゃんと射止めてくれなくちゃ。

「じゃないとその内逃げちゃいますよ。だって僕、結構悪い子だもの」

ハルトはベッと舌を出して笑い、小走りで去っていく

ルークはその背中に

「可憐なだけでなく、毒も棘もある…ボーテ!」

と賞賛の声をかける。

ハルトは、いつものようにヴィルに甘えに行くのだろう

「どちらが先に射止めるのかな?実に楽しみだ。トレビアン」

ルークは誰に言うでもなく、ニッコリと笑った。



☆☆☆
早く僕を捕まえて 真っ赤な林檎に矢を刺して
じゃないと僕って悪い子だから
林檎をガブッと齧っちゃう
食べ終わっちゃうその前に 早く射止めて捕まえて

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