竜の執着

ハルトはうつらうつら眠そうにしながら歩く

歩みを止めれば、そのまま寝入ってしまいそうだ

ジャックは躓きそうになったハルトを支えてやりながら

「おい大丈夫かよ」

と尋ねる。咄嗟に支えてやらなければ、ハルトは受身と取らずにひっくり返っていただろう

「あぁごめん…最近、悪夢ばっか見て寝れないんだ…ストレスかなー」

ふわぁと欠伸をしながら姿勢を正すが、すぐにまた体が傾いていく

ジャックが何か言おうと口を開きかけたが、突如感じ取った気配に耳を立てハルトの肩を掴んで後ろに下げた

びゅっと風を切る音がする

「お主、呪われとるな!!!」

「うわぁ!」

ハルトの目の前に、逆さまに誰かが落ちてきた

魔法で身体を支えているのか、天井からぶら下がった状態の人物と目が合う

予想外の状況に眠気が吹き飛んだらしいハルトは、目を大きく見開く

バクバクとうるさく主張する心臓を抑え

「リ、リリア先輩?!脅かさないで下さいよ…」

となんとか文句を絞り出す。

ジャックもハルト程ではないが驚いた。が、目の前の人物が言ったことが気になって

「呪われてるんスか?コイツが?」

と尋ねる。リリアはそうじゃ。と軽く頷いた

「一体、誰にどう呪われたんです?俺…」

不安そうなハルトの前によっと降りて、リリアは笑う

「そこまではわからん。が、気になるならディアソムニア寮に来るが良い」

呪いを解ける者を紹介してやろう。

ジャックとハルトはしばらく顔を見合わせた



リリアに連れられディアソムニア寮の談話室に通されたハルトは、椅子の上でガチガチに縮こまって収まっている

リリアが紹介した人物は、この学園内で力があるだけでなく謎が多く恐れられる存在…

「マ、マレウス・ドラコニア様…」

「そんな畏まらんでも、とって食いはせんわ」

リリアは怯えるハルトの様子を見てケラケラ笑う。

とてもじゃないが、畏怖の対象である人物が正面に座っている状況で安心できない。

頼むから2人きりにしないでくれと祈るハルトだが、ワシは茶でも淹れてくるからの。とリリアはあっさりと席を外した

マレウスは珍しい来客をじっと見つめている。

「あ、あの」

「マレウスでいい。」

何か言いかけたのを遮り、マレウスはそう言った

「マレウス…さん?」

「うむ。」

マレウスは少し口元を緩ませる。ハルトはマレウスを直視出来ず、机を見つめていた為それに気が付かなかった

「ところでハルト。お前、呪われてるな。」

マレウスは世間話のように言った

「呪われてるって、誰にですか?」

「…そんなこと知ってどうなる?」

足を組んで、マレウスは笑う

脳が現実逃避を始めたのか、ハルトはぼーっとその仕草を見て王様みたいだなと考える

マレウスはハルトのほうに手を伸ばし、パチンと指を鳴らした

突如としてハルトの身体から静電気のようにパチパチと黄緑色の魔力が弾ける

「うわっ」

「ほら、解けたぞ」

「へ?もう?!」

ハルトは驚いて思わず立ち上がってマレウスを見る。視線が絡むと、マレウスは歯を覗かせて笑った

「なんだ、不満か?」

「い、いえ…ありがとうございます!ただ、その、あまりに呆気なくて」

実感がないというか…

ハルトはストンと座った。マレウスに見られていると、身体の力が抜けていくような気がする。

また椅子に小さく収まったハルトをじっと見下ろし

「ふむ。なら、目に見えるように御守りをやろう」

と立ち上がった

「御守り?」

ハルトによく見えるように、ポケットから取り出したネックレスを垂らす

先程爆ぜた魔力のような黄緑色の宝石がついた金細工のネックレスだ

「キレイですね…」

「ふっ。肌身離さず持っている事だ。呪い除けや魔除けになる。」

少し身構えたハルトの首に手を回し、マレウスはネックレスを嵌めてやる

「ついでに、虫除けにもなるだろう」

「何か言いましたか?」

「いや?」

なんでもない。と笑って、ハルトから離れる

「でも、こんな高そうなもの、貰ってもいいんですか?」

ネックレスの飾りを手に取りつつ、ハルトは少し不安そうにマレウスを見る

「その程度のもの、いくらでもくれてやる。」

マレウスは肩を揺らして笑って、席に戻った。また足を組みつつ

「それより、魔除けの効果には期限がある。効果が薄れれば掛け直してやるから、いつでも気軽に僕を頼るといい。」

と微笑む。ハルトはようやく少し体の力を抜いた

「ありがとうございます…綺麗だし、大事にします。その、俺」

マレウスさんって、もっと怖い人かと思ってました

そうハルトが眉を寄せて少し気まずそうに笑う。マレウスは少し驚いたようだった

「そうか?僕はいつでも待っている。遠慮せずお茶にでも誘ってもらって構わんぞ」

「そうですね。これのお礼に、何かご馳走させてもらいますね」

高いものは無理ですけど。とハルトが笑う。

マレウスも目を細めて

「楽しみだな」

と笑った



鏡を通って自分の寮へと帰るハルトを見送ってから、マレウスは隣で呑気に手を振っていたリリアに

「あの呪いはお前の仕業だな」

と問う。リリアは

「ん?なんのことじゃ?」

とすっとぼけて笑った

「僕が気が付かないとでも?」

「あの子が気になっていたようだったから、キューピッドになってやろうと思ったのじゃ」

余計なお世話だったか?とリリアは悪びれた様子無く、わざとらしく首を傾げてマレウスを見上げる

「いや。」

マレウスは笑って、鏡を見つめる。

「早く僕のものになるといい。ハルト」



☆☆☆
ジャック「それ、どうしたんだ?」

「マレウスさんから貰ったんだ。魔除けの魔法がかかってるんだってさ。悪夢も見なくなったし、助かったよ」

ジャック「そうか…(なんというか、首輪だなコレは…)」




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