甘えてハニー
「今日は少々疲れましたね。ハルトも大変でしたでしょう」
ジェイドは暗い夜道をスタスタと歩きながら、隣に声をかける
「僕は人払いをしてただけだし、大丈夫。ジェイドは交渉長引いたし、とても疲れたでしょ」
ジェイドの服の肘の辺りを掴んで歩きながら、ハルトは答える
ジェイドの歩幅が広すぎるのと夜目が効きすぎる為、服を掴んでないとうっかり置き去りにされてしまうのだ
2人はアズールの指示で少し厄介な取り引きを行っていた
といっても、ハルトは人払いの魔法が得意なので連れてこられただけで、取り引きの詳しい内容や交渉には関わっていない
ジェイドの後ろに立って、ここら一帯に結界を張っていただけだ
「本当に…だいぶ粘られて随分と帰りが遅くなりましたね。幸い、快くサインを頂けましたが」
ジェイドが懐に入った金の契約書をポンポン叩き、意味ありげに笑う
「快く、ねぇ?」
ハルトもクスクス笑う
「なんか最後の方、相手泣いてませんでしたっけ」
「おや?そうでしたか?」
ジェイドが口元を隠しながら笑う。ハルトは、その笑い方が好きだった
「ハルト、少し寄り道しましょうか」
「ダメですよ。ただでさえ帰りが遅いのに…アズールさんに怒られるよ」
「たまには、いいじゃないですか。恋人同士2人きりなんて久々ですし。」
ジェイドは少し眉を寄せる
ハルトは少し誘惑にかられたが
「そうだけど…やっぱり、ダメですよ」
と言いきった。
ジェイドは少し顎に手を当てて考えてから、足を止めてハルトを見下ろす。
そして、身体を屈めて目線を合わせ
「ショック・ザ・ハート」
と言った
ジェイドのユニーク魔法、ショック・ザ・ハートは相手の本心を1度だけ語らせるというものだ。
しかし、ジェイドは詠唱もしていないし、魔力も一切感じなかった
つまり、ユニーク魔法の名前を言っただけだ
「ぷっ。あは、あはははは!!」
ハルトはしばらくぽかんとしてから、堰を切ったように笑い始める
ジェイドは膝を着いて笑い転げる恋人を見つめてニコニコしていた
笑いすぎて腹を抱えて苦しそうに息をしながら
「ずっと人払いの魔法かけてて魔力めっちゃ使ったし、ちょー疲れました。ジェイドとデートしたいし、甘いもの食べたい」
と涙目で言う
「おやおや。」
ジェイドはニヤリと笑いながら、ハルトが立ち上がるのに手を貸してやる
「この時間だとコンビニくらいしか空いてませんかねぇ」
そのまま2人で手を繋いで、帰路からそれて歩き出す
「怒られる時は一緒ですからね」
「共犯ですからね」
2人はくすくすと笑いながら、コンビニへ入っていった
☆☆☆
アズール「こんな時間まで何してたんです?」
ハルト「相手がかなーりゴネて時間がかかって…でもちゃんと契約取れましたよ!」
フロイド「ショック・ザ・ハートw」
ハルト「バインド・ザ・ハート!w」
ジェイド「せっかく久々の2人きりでしたのでコンビニスイーツキメてきましたw」
フロイド「やっぱりwwコンビニの袋持ってシラ切るのは無理でしょw」
アズール「2人とも正座しなさい」
ハルト「待って!お土産あります!唐揚げ、春巻き、ポテト、フランクフルト…」
アズール「……明日食べます」
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