見た目と中身

「助かったわ、今回の奴しつこくてさー。昼なんか奢るわ」

ありがとなーデュースとハルトは教科書を抱えて歩きながら笑った

「プリン1つで手を打とう。今回で何回目だ?」

「記念すべき10回目…くらい」

ハルトは指折り数え、べっと舌を出す

デュースは肩を揺らして笑った

ハルトは長い髪と微笑むように口角のあがった唇、大きな瞳をしており美少女と言われてもおかしくないような容姿をしている

それゆえ、告白してくる男子が絶えないのだ。…男子校なのに。

先程もしつこく食い下がる生徒にハルトは困らされていた。

通りかかったデュースが声をかけると、相手はそそくさと逃げていったが

「あいつさー「一目惚れしたんだ!運命だ!付き合えば俺のことが分かるから付き合ってくれ!!」とか意味わかんねーことばっか言うのよ」

お前のこと知りたくないし、そもそも俺を理解してから告白しに来いよな。とハルトは毒吐く

「きっついな。」

デュースは横で頬を膨らませているハルトをみて苦笑する

「お前は結構男らしいというか、見た目と中身にギャップがあるからな。」

「1回デートしてやると、大抵理想と違うって勝手に離れてきやがる。僕から告白したことねーし。結局女の代わりにしたいだけで、僕と付き合いたい訳じゃないんだから。」

教科書を持ち直し、ハルトはため息を吐く

「髪を切ったら多少印象が変わるんじゃないか?」

「あのなぁ…僕、腐ってもライオンだからたてがみは切れないの。レオナさんの前で一緒のこと言うなよ…殺されるぞ」

「獣人も色々大変なんだな…」

「たてがみと毛艶は特に大事だな。」

「ふーん。」

デュースは隣の生徒を見る。確かに、綺麗な髪をしている

「んじゃ、僕はこっちだから、またお昼な!」

ハルトはにへらと笑ってデュースと別れて教室に入る

「あぁ、プリン忘れるなよ」

デュースも軽く手を振って、隣の教室に入っていった



授業が終わるベルが鳴る

昼食の約束があるので迎えに隣のクラスまで迎えに行ってみたが、ハルトの姿がない

デュースは首を傾げなにやら考えてから、中庭の方へ向かう

目的の人物は、朝見た奴に絡まれて嫌そうにしていた。手首を掴まれ、顔を歪め声を荒らげる

「いい加減にしてください!僕はあなたと付き合うつもりはありません!」

かなりの力で握られているのか、何度か振り払う仕草をするのだが相手の手は離れない

デュースはハルトの顔をしばらく見つめ、中庭に降りる

震える拳を握りしめ、ゆっくりとした動きで、しかし大股で距離をつめる

「おい、離せよ。嫌がってるだろ?」

「なんだお前は!関係ないだろ!」

ハルトに告白していた生徒がデュースを怒鳴りつけ、殴りかかろうとする

デュースはその拳をあっさり受け止め、胸ぐらを掴み返した

「こいつは俺のツレなんで…手を出さないで貰えるか…?」

ドスの効いた声に、相手は震え上がる。手を離してやると、あっさりと逃げていった

デュースはその背中を冷たく睨みつけていたが、ふと我に返り頭を抱える

「…またやってしまった…僕は優等生なのに…」

ハルトは格好良かったデュースから一転、いつもの様子に戻ったのをみて少し呆気に取られてから笑った

「ありがと、デュース。また助けられたな」

「ん?あぁ。手首、大丈夫だっか?」

「ちょっと痛いけど、別にどうもないよ」

ハルトはヒラヒラと手を振る。手首にはしっかりと手型が残ってしまっている

「…やっぱ1発くらい入れときゃ良かったな」

「優等生のセリフとは思えんな」

ハルトがケラケラ笑うと、デュースもつられたように肩を揺らして笑いだす

「ハルトと僕は少し似てるかもな」

「あー、そうかもな。」

さぁ、飯でも食いに行こうぜとハルトが歩きだし、デュースもそれに続く

「さっきのデュース…優等生かどうかは知らんが、めっちゃカッコ良かった。ホントにお前のツレになりたくなったよ」

ハルトはデュースの少し前を歩き、振り返らずにそう言った

デュースはハルトを見る。

ふわふわ揺れる髪からちらりと見える丸い獣耳が伏せられている

デュースはハルトの隣まで走って追いつき、顔を覗き込んだ

ハルトは赤い頬をして、口元を手で隠す

「あんま見んな。」

「付き合うか?」

「………別に、構わねぇけど。」

ハルトは目をそらす。

「僕、見た目と違って可愛くないけど、デュースはそれでもいいんだな?」

「お前の性格も趣味も、よく知ってるよ」

デュースは意地悪く笑って、ハルトの髪をぐしゃぐしゃと撫でた



☆☆☆
勉強よりスポーツが好きで
甘いものより辛いものが好きで
紅茶なんかより炭酸が好きで
大口開けて笑って、くだらんジョークが好きで、やんちゃでバカ騒ぎが好きで…

他人に押し付けられた理想で、否定され傷付いて
それでもなんて事ないように胸を張ってるお前を見てたんだから。

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