愛の対価
寮長室にて
作業する自分の隣で宿題を広げているハルトを、アズールは眼鏡越しにちらりと見る
ハルトとアズールは付き合っている。ハルトから告白され、別に害はなさそうだったので付き合ってみた。
アズールにとってはその程度の認識で、特別にハルトに好意があった訳では無い。同じ寮の生徒の1人と言うだけだった
付き合ううちに、多少好感度が増しているのは否定しないが
初めは正直、自分を利用しようとして近付いて来たのではないかと疑ったりもしたが、ハルトはアズールに何も要求しなかったし、隣にいるだけでニコニコしているのですっかり毒気を抜かれてしまった
「ハルトさんは、僕の横にいるだけで楽しそうですね」
「そうですか?」
ハルトは宿題から視線を上げ、アズールをみて首を傾げる
目が合うと照れたように笑って
「好きな人のそばにいると、無意識に浮かれちゃうみたいです。」
「……ほんとに貴方は、僕に何も求めないんですね。」
アズールは少し不思議そうにして、クルクルとペンを回す
また首を傾げたハルトだが、少しするとハッとした表情になった
「あぁ!アズールさん!僕がアズールさんを利用しようとして付き合って欲しいって言ったとおもってるんですね?!」
ショックです!と頬を膨らませる
その頬をぎゅっと掴んで空気を吐かせながら、アズールは少し笑った
「最初はそう考えたこともありましたが…あなたは馬鹿正直過ぎるのでそんな器用なこと出来ないでしょう?」
「ん?貶されました?褒められました?」
「さぁ?どちらでしょうね」
アズールは片方の頬を持ち上げて意地悪く笑い、ハルトの髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜる
「あははっ、アズールさん、止めてくださいよォ」
アズールの手を掴んで止めながら
「まぁ、要求していいなら、したいことはありますよ」
とハルトは笑う
「一緒にいてくれるだけでも良いんですけど、手を繋いだり、ちゅーしたり、それ以上だったり…もっと恋人らしいこともしてくれたら、なんて、思ったり…」
「そんなことですか。」
要求と聞いて一瞬身構えたアズールだが、あまりに純粋な願い事に呆気にとられる。何を食べたらこんな無垢な生命に育つんだ
「そんなことで悪かったですねー」
ハルトはアズールに向けてべっと舌を出す
アズールはふふっと笑って、舌を掴んだ
「んぐっ?!」
「この僕に願い事をしたのですから、対価を貰ってもいいでしょう?」
「おひうりでふよ」
「押し売りだなんて失礼な。宿題が終わったら少しデートでもと思ったのですが、やめておきますか?」
「デート!」
アズールは舌を離してやり、ケラケラと笑う
「早く宿題を済ませて下さい。僕もコレを終わらせますから」
「ふふ、僕貰ってばっかりになりますね」
ハルトはペンを持ちアズールを見上げる
「告白した時、男同士なのに気持ち悪いとか言われたらどうしようって思ってました。だけど拒否しないでくれた。」
僕にとって、それで充分だったのに欲張りになっちゃいましたね。とハルトは笑う
アズールはしばらくの間、ポカンとしてハルトを見下ろしていたが、急に
「ぶはっ!」
と、吹き出して笑った
「え?アズールさんひどい!笑うことありました?!」
「お前は、お前は本当に馬鹿で素直で、困った子です。ハルト」
アズールはひとしきり笑ったあと、ハルトの髪をまたぐしゃぐしゃと撫でた
☆☆☆
ジェイド「案外長続きしていると感心していたら、ゾッコンのようですねw」
フロイド「あんなアズール初めて見たしww」
アズール「うるさいですよ!!」
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