触れて愛でる


ジェイドは好奇心旺盛だった

興味を持ったものは自分の目で見て、直接触れてみないと気が済まない

興味本位で毒キノコを食べて腹を下したのは1度や2度では足りないし

アズールとフロイドと共に陸に上がって、1番に炎に触って火傷したのもジェイドだった

フロイドは未だにその事をからかって笑う。

「だって熱いから危ないし触るなって再三言われたのに、思いっ切り指突っ込んでたじゃん」



キラキラ輝いて、ゆらゆら揺れて

それがどうしても気になって手を伸ばしてしまう。心を囚われる、とはこういう事を言うのだろう

「ジェイド、止めたげなよぉ」

フロイドがジェイドの手首を掴む

「ジェイドってば。ハルト、泣いてるし」

「へ?」

ジェイドが我に返ると、ハルトが泣きながら離してくれと懇願していた

ジェイドは左手でハルトの頭を押さえつけ、右手で眼球を触っていたらしい。

指でグリグリと直接目に触れられ瞼を閉じることも出来ずに、ハルトは縋り付くようにジェイドの服を握って

「ジェイド先輩、いたい、いたい、やめて」

と涙を零している

「すみません」

パッと手を離すと、ハルトは目を抑えて屈みこんだ





VIPルームにて

「すみませんでした」

フロイドに連れられて保健室から戻ってきたハルトに、ジェイドは謝罪する

アズールはハルトに

「どうでした?視力に異常はなさそうですか?」

と尋ねる

「傷はついてないみたいですが、暫くは保護が必要みたいです」

ハルトは左目に眼帯をつけ、フロイドの背中に隠れている。フロイドはその様子を見てケラケラ笑ってから、申し訳なさそうな片割れに

「ジェイド、なんでハルトの目なんか触ってたの?」

と聞く。ジェイドは少し困ったような表情をした

モストロラウンジで給仕に出ていたハルトの声と皿が割れる音がしてキッチンから出てみれば、ジェイドは夢中で小柄な生徒を覗き込み眼球を触っていた

ハルトが痛がって喚いても抵抗しても、全く意に介せず、一心不乱に

「どうしても気になってしまって…本当にすみませんでした」

「気になったからって…せめて確認とるか拒否ったらすぐやめるかどっちかしてくださいよ… 」

ハルトはフロイドの背中から顔半分だけ覗かせてそう言う。ジェイドは少し驚いたように半分だけ見える顔を見返す

「確認をとれば、触ってもいいんですか?」

「目とかは、まぁ、困りますけど。顔とかその程度なら、多少は構いませんよ。」

「そう、ですか。」

ジェイドは許可を得るという発想すらなかったらしい。

アズールははぁ…と面倒くさそうにため息をつく

「ハルトさんはしばらく店を休んでもらうしかなさそうですね。お前が責任を取ってその分働いてくださいよ、ジェイド。」

「はい。」

ジェイドはそう返事しつつ、視線はハルトの潤む片目から離れなかった



ジェイドは次の日からハルトの世話を焼いていた

一時的に片目が使えなくなったハルトはよく人や物にぶつかったり、物を落としてしまう。

その度にジェイドがフォローしてハルトを誘導し物を拾ってやる

「その、ありがとうございます」

「いえ、元はと言えば僕のせいですので」

ハルトの隣を歩きながら、ジェイドは困った様に笑う

「さすがにあれはビックリしましたけど、でも助かってます」

ハルトはニコニコ笑ってジェイドを見上げる。キラキラとした瞳が眩しそうに細められる

不意に、ジェイドは

「ハルトさん、手を握っても?」

と尋ねた

「え?」

「許可を取れば、触れてもいいのでしょう?」

「まぁ、いいですけど…」

「この方が、安全に誘導できますから」

ジェイドはハルトの手を握ると、クスクスと笑って自分の方へ軽く寄せる

「ふふ、こうしてると付き合ってるみたいに見られちゃいますね、きっと」

「…そうですね」

ハルトが少し恥ずかしそうに笑う。ジェイドは少しキョトンとしてから、ハルトにつられるように笑った

「ハルトさん」

「はい?」

「キスしても?」

「…はい?」

ハルトはジェイドを見上げ、片目を瞬かせる

きらきら、ゆらゆら、水面に反射する陽の光のような瞳を、ジェイドはずっとずっと見つめていたいと思った

欲を言うなら触れたいけれど、それよりも大切にしたい気持ちが湧き上がる

「…付き合ってもないのに?」

「ふふふ、そうですね。では、僕と付き合って下さい。」

「……はい。」

ハルトは少し悩んで、少し笑って、そう答えた



☆☆☆
ジェイド「では、改めてハルトさん…キスしても?」
アズール「公共の場でイチャイチャしないで頂けます?」
フロイド「やっぱりジェイド、ガチじゃんww」
ジェイド「おやおや」



☆☆☆
未収録シーン
保健室から帰ってきて、ハルトが退室した後



「全く、危うくハルトさんの目を潰しかけるなんて…」

「すみません。何故か触りたくて仕方なくなってしまって」

「ジェイドさぁ、ハルトのこと好きじゃん」

フロイドは面倒くさそうにそう言う

「僕が?ハルトさんを?」

「だって、ジェイドって好きなもんとか気になったもんをさぁ、実際に触んなきゃ気が済まないじゃん。逆に嫌いなもんには一切触んねぇし。」

「…ふむ。」

「無自覚だったの?ウケる」

「…これは自覚させない方がよかったのでは?」


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