てめぇは俺の物だろうが
ハルトはレオナの傍にいることが多い。
別に誰が頼んだでもないが、いつの間にかラギーと共にレオナの世話をするようになっていた。
ハルトは犬系の獣人なので、本能的にボスの世話を焼きたくなるのだろう
レオナとしても、ラギーよりかは多少口うるさくもないし時計代わりに置いてやっている。その程度の認識だった
放課後、レオナは植物園に向かって歩いていた
部活の練習をサボる為だ
「レオナさーん」
後ろからハルトの声がし、レオナはちっと舌打ちをする
どうせ呼び戻しに来たんだろう。追い払ってやろうと振り向き、レオナは耳をピクリと動かす
ハルトはゆるくしっぽを振りつつレオナの前まで駆け寄ってきて
「ラギーさんが探してましたよ?」
といつもの様にニコニコと話し始めた。
しかしレオナには話しの用件など耳に入らなかったようで、眉間にシワを寄せて引く唸る
「それ、どうしたんだ」
「え?あぁ、コレですか…」
ハルトは少し気まずそうに耳を後ろに下げて、左の頬を指差す。頬には大きなガーゼが貼られ、少し腫れているように見える
「なんか、3年の先輩に殴られたんですよ」
「あぁ?」
レオナの耳が少し立ち、尾がしなって大きく振られる。
ハルトは何故か苛立ち始めたレオナに、耳を立てて慌てて説明を加える
「その、昼休みに知らない先輩に声をかけられてですね、告白されたんです」
「…断ったんだろうな」
「もちろんですよ!でも、そしたらすごい怒っちゃって、「僕のことを何も知らないくせに否定するのかー!!」って殴りかかってきたんです」
一緒に着いてきてくれてたジャック君がすぐに止めてくれたんですけど、1発もらっちゃって…とハルトはレオナを見上げて申し訳なさそうにする
「サバナクローの寮生として、ちょっと情けないですよね」
耳をぺしょんと倒し、尾を股に挟みながらハルトはレオナの様子を伺う
レオナは無性に苛立っていた。
別に目の前の犬っころに特別な感情など持っていなかったし、付き合ってもいない。
しかし、自分の知らないところでこいつが傷つけられたと考えると、何故だか腹の底が煮えるようにムカムカとする
レオナはハルトの胸ぐらを掴んで体を寄せると、ガーゼを力任せに剥ぎ取った
「いたっ!…レオナさん…?」
レオナはガーゼに隠されていた所をじっと観察する
ハルトの口の端は殴られた時に切れたのかカサブタになり、頬はやっぱり腫れて紫色になっていた
かなりの力で殴られたらしい
レオナはべろりとハルトの口の端を舐める
ハルトは驚いたようだが、抵抗はしなかった
「いくぞ。」
「へ?どこへですか」
レオナは胸ぐらから手を離すとハルトの首根っこを掴んで歩き出す
「大切な後輩が世話になったんだ、その先輩とやらに挨拶しないとなぁ」
「で、でも、顔も名前も知らない先輩でしたよ」
「ジャックが、見てたんだろ。アイツに聞きゃわかんだろ」
颯爽と歩くレオナに引き摺られながら、ハルトは
「なんでそこまで…」
と口にする。
レオナはピタリと足を止め、困った様に自身を見つめる犬を見下ろす
「誰の所有物に手を出したか、わからせてやらねぇと気がすまねぇんだよ。」
わかったか、ハルト。とレオナは軽く笑い、また颯爽と歩き出した
☆☆☆
この後荒ぶるサバナセコム
ジャック「この人っす。ハルトをぶん殴ったのは」
ラギー「あらら、うちの寮の可愛子ちゃんに手を出してくれちゃって、どう責任とってくれるんスかぁ?シシシッ」
レオナ「てめぇ、よくも俺の所有物を傷もんにしてくれたなぁ…なぁに、殺しはしねーよ。ただ、ちょっとツラ貸せ。」
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