お日様みたいな君

ジャックは冷え込んだ空気の中1人走っていた

昨晩は雪が降っており、まだ溶けきっていない雪が残っている

それを寒い国の育ちである彼は気にすることなく、ペースを落とさず走り抜けていく

まだ早い時間なこともあり、とても静かだ

ジャックは黙々と走っていく

「ジャック…」

「?」

ジャックは足を止める。急に立ち止まったため、足元の雪が跳ねた

誰かに呼ばれた気がしたのだが…と耳を立ててキョロキョロしていると

「ジャック、助けて…」

と今度はハッキリと聞こえた。確か、同じクラスのハルトの声だ

ジャックは声がした方に近寄っていく。道の脇にボロ布のようなものが落ちている。どうやら、その布が声の主らしい

「ジャック…」

「お前、何してんだ」

布を持ち上げると、ハルトがガタガタ震えていた

ジャックは驚く。ハルトの下半身には足がなく、ウロコに覆われた長い胴が続いていた

とぐろを巻いたハルトはジャックが自身の身体に驚いている事に気が付き、震えながら少し笑う

そういや、ジャックに本当の姿を見せたことは無かったか。

「変身薬解けちゃって、寒くて動けないんだ…。助けてくれ…」

「…あぁ、待ってろ」

ジャックは半分雪に埋もれたハルトの身体を掘り起こしにかかった



「いやー、ジャックが通りかかってくれて助かったー。俺ヘビだし、あんな雪の真ん中で元に戻っちゃって…危うく死ぬところだったよ」

ジャックの上着を羽織り、頭にしがみつく様にしたハルトは長い舌を出して笑う

ジャックは自身を中心にとぐろを巻くようにされた胴を抱えて呆れたようにため息をつく

「なんであんな所にいたんだ?」

「図書館で本を借りたんだ。アズール先輩に頼まれてさ、魔法薬の本。」

「お前、オクタヴィネルの奴らとつるんでるのか?!」

「やだなぁ、つるんでる程じゃないよ。変身薬を貰う代わりに雑用を任されてるんだ」

ハルトがケラケラ笑うと、ジャックはそうか。と短く返事をする

それ以上特に何も話さず、ジャックは黙々と歩く

一定のリズムで揺られながら、ハルトは呑気に

「ジャックってさー、暖かいね」

と口を開いた

「さっきまで走ってたからな。体温が上がっていたんだろ」

「お日様みたいな匂いがして、暖かい」

「おい、寝るなよ」

「寝ないよ。」

ジャックは少し笑って、ハルトの胴を軽く叩く

ハルトはしっぽの先をジャックの手首に絡ませた

「ジャックはお日様みたいだ」

「そうかよ」



「あー、ウニちゃんじゃん!ハルト見つけてくれたのぉ?」

校内に入るなり、そう出迎えたのはフロイドだった

「アズールに言われて昨夜から探してたんです。お預かりしますね。」

ハルトはシュルシュルと解けるようにジャックから離れ、ジェイドに担がれる

「まだ寒くて上手く動けなくって、すみません…」

「…おまえ、夜から動けなくなってたのか。」

「あはは、はは…そうです…ごめんなさい。」

ジャックに睨まれ、ハルトは気まずそうに目をそらす

「あ、上着返すよ」

「今度でいい。」

「そっか。ありがと、ジャック」

「それでは、失礼します」

「またねー、ウニちゃん」

ハルトは双子に連れられつつ、ジャックに手を振る

ジャックはしばらくそれを見送った後、朝の走り込みに戻って行った



☆☆☆
オマケの割とホワイト企業オクタ



「それで、1晩も雪に埋まっていたと?だから先に飲んでいけと言ったのに…」

「言い訳のしようもありません…」

湯船に放り込まれたハルトはアズールに説教をされて頭を垂れる

「一晩中探し回ったのに、雪ん中なんてわかんねーし。」

「まぁまぁ、無事に見つかって良かったではないですか。暖かいお茶をどうぞ」

「ありがとうございます。…紅茶にキノコ浮いてんだけど」


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