僕ら卑怯者同盟

監督生はラギーが好きだ

元の世界を捨ててもいいと思える程、ラギーが好きだ。

しかし、監督生はその気持ちを伝える気は無い。

何故なら、来た時と同じように急に帰るかもしれない。好きな人を置いて、突然の永遠の別れになるかもしれない。

監督生は、何も持っていない。異世界から身体ひとつで連れてこられ、ラギーに渡せる様なものを何一つ持っていない。

あるのは好きな人を想う気持ち、ただ1つ

だから監督生は想いを伝えない。どれだけ辛くとも、どれだけ好きであっても



ラギーは監督生が好きだ

自分の全てを捧げてもいいと思う程、監督生が好きだ

しかし、ラギーはその気持ちを伝える気は無い。

何故なら、告白すれば世界と自分を選ばせなければならない。帰りたくなっても監督生を我慢させ、この世界に縛り付けてしまうかもしれない。

ラギーは何も持っていない。貧しいスラムの生まれで、監督生に渡せる様なものを何一つ持っていない。

あるのは好きな人を想う気持ち、ただ1つ

だからラギーは想いを伝えない。どれだけ辛くとも、どれだけ好きであっても



監督生とラギーは仲が良かった。一緒に遊んで、たまに悪さして、仲間達にからかわれる程に仲が良かった。

しかし「付き合ってんのかよ」と茶化されると、2人して否定する。少し困った様に、少し寂しそうに

「ねぇ、ラギー先輩」

「なんスか、監督生くん」

「もし、元の世界に帰れないなら…ラギー先輩と」

「監督生くん。それは、言わない約束でしょ」

「…そうですね」

ラギーはこの関係を壊したくなかった。互いに踏み込めば、いざと言う時の傷が深くなるだけだ。

この関係でいいのだ。馬鹿やって、くだらないこと喋って、トモダチらしく楽しく出来れば、これでいいのだ。

監督生はなにか言いたそうにして、やっぱり言わなかった。監督生も、この関係を壊したくなかった。

「…こんな想いになるのなら、いっそ、出会いたくなかったなぁ」

小さな、小さな監督生の呟きに

「そうっスね…」

とラギーも小さく呟いた

互いに牽制しあって、告白は聞かないフリをする。そうやって二人の関係は、なんとかバランスを保っている

だって彼らは、卑怯者同盟

背中合わせに愛を語る

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