内緒のないしょ
ハルトはハーツラビュル寮の生徒だ。法律を重んじ、法律に従う
厳格な精神に基づく資質をもった生徒だ
ハルトは物凄く優秀、という訳では無いが寮長に首を刎ねられたことは無いし、それなりに上手くやっている
そんなハルトには、誰にも言えない秘密があった
夜中、ハルトはルームメイトに気付かれないように静かに寮を抜け出して、誰もいない食堂まで来ていた
真っ暗な中、慣れたように電気のスイッチを手探りでつける
時折ラギーやジェイドやジャミルと出くわすことがあるのだが、今日は誰もいないようだ
鍋で湯を沸かし、隠し持っていたものを取り出す
ハルトはこの背徳感がたまらなく好きだった
ご機嫌で取り出した袋を開けようとしたところで
「ハルトちゃん、見っけ」
「?!」
唐突に声をかけられ、ハルトは持っていた袋を落としかけた
慌てて袋を後ろ手に隠す
「け、ケイト先輩…?!」
「いけないんだーハルトちゃん。リドル君にバレたら首を刎ねられちゃうよ?」
ケイトはスマホを構えてニコニコしている
どうやら、撮られていたらしい
「ケイト先輩、何故ここに…」
「悪い子がコソコソ出てくのを見掛けちゃってね」
つけて来ちゃった。とケイトは笑う
ハルトははぁ…とため息をつく。自分の楽しみが今日で奪われてしまうのかと。
「ケイト先輩、次からやめるんで、今日は勘弁して貰えませんか?」
ハルトは背中に隠していた袋をケイトにみせる
ケイトは目を見開いて、それは…と呟く
その袋の正体は…
「うんまぁーい!」
マジカメにあげられないのがザンネーンと大袈裟に嘆くケイトを見て、ハルトは笑う
ハルトの取り出したものとは…数量限定、ニンニクマシマシ激辛ラーメンかやく200%増量唐辛子付きと書かれたインスタント麺の袋だった
「トレイ先輩には悪いんですけど、パイとかタルトじゃ食った気がしないんですよねー」
ハルトの秘密とは、夜な夜な寮を抜け出して1人で夜食を取っていることだった
夜中に寮を抜け出すこと、校内を歩き回ることは禁止されている。キッチンの使用ももちろん許可されていない。しかし、空腹に耐え兼ねハルトはよくここを訪れていた
「まさかケイト先輩もこれが好きなんて思いもしませんでしたよ」
甘いものが好きなんだと思ってました。とハルトが笑うと
「バエるから見た目は好きなんだけど、甘いの得意じゃないんだよね。あ、これ秘密ね」
「わかってますって」
ケイトはズルズルと勢いよく麺をすする。それが本当に美味しそうで、ハルトはなんだか嬉しくなる
「おれ、いつものケイト先輩より今のケイト先輩のが好き」
「え?」
「ナイショですよ、ケイト先輩」
今度から誘いますから。と口の前に人差し指を立てて、ニヤリとハルトはいたずらっ子のように笑う
「仕方ないなー、ハルトちゃんに付き合ってあげる」
ケイトも真似して人差し指を口の前に当て見つめ合うことしばし
「あー、秘密の味って最高!」
「それね!」
と2人してケラケラと声を上げて笑った
☆☆☆
別の日
「あ、ラギーさん。またレオナさんの夜食作り?」
「ハルト君こそ、またこっそりお夜食っスか?悪い子ッスねー」
「おや、今日は2人ともお揃いで」
「ジェイドさんも散歩に来たんですね。良ければ一緒に食べます?今日は濃厚豚骨ワンタンですよ」
「ゴチでーす。じゃあ、俺もレオナさんの夜食分けてあげるっス」
「ご馳走になります。今日採ってきた山菜もいかがですか?」
「わ!美味しそう!天麩羅にしたい…」
「俺もいいか?頼まれてたスパイスも持ってきたぞ」
「ジャミルさん!あーマジ夜食最高…」
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