毒と人魚

アテンション
「お前なんて嫌いだばーか」の毒を吐くハルト君とオクタが出会うだけ
毒ゲロばっか吐いてる
汚い
ちょっと暴力的



ジェイドの場合

「……うぅ…」

毒を吐く前は頭を殴られたようにクラクラと目眩がし、胸が苦しくて息が出来なくなる

ハルトは口を抑え、邪魔にならないように廊下の端にしゃがみ込む。

ハルトを知る生徒は足早に離れていった。それでいい。ハルトとて自分の毒で他人が死ぬのはごめんだ

そんな中、わざわざ近付いてくる足音1つ

「おや、ハルトさん。どうされました?」

「……離れろ…」

「おや、つれませんね」

ジェイドは口元に手をやり、クスクスと笑う

「……おぇ…ごぼ…げほ…」

ハルト自身は吐き出す毒で死ぬことは無い。

しかし、強力な毒で喉は爛れて、血を吐いて泣きながら全てを吐き終わるまで息もたえだえに苦しむ

びちゃびちゃと涙と毒で床を汚す様子を、ジェイドは愉快そうにニコニコと眺めていた

「そういえば、この前はカリムさんがお手伝いしていましたね」

思い立ったようにポケットからゴム手袋を取り出し、ジェイドは怯えた目で見上げてきたハルトに近付く

「少しお手伝いしますよ」

「…ばか、やめ…う"う”!!」

「おや。なかなか、難しいですね」

ジェイドは苦痛に顔を歪ませるハルトの口内に無理矢理手を突っ込む

「もっとこう、喉の奥を刺激するんでしたっけ」

「…お”え”ぇ”」

ハルトはジェイドの手を噛み抵抗したが

「こらこら、いけませんよ」

と子供のイタズラを窘める様に穏やかに声をかけ、その声にそぐわない力で喉奥に指先を進めていく

「…やめ…お願…や……ぐうぅ」

ハルトはボロボロと涙を零し、ジェイドの手を掴む

「もう少しですよ、がんばって、ハルトさん」

ジェイドは目を細めて、穏やかに楽しそうに歯を見せて笑った



フロイドの場合

フロイドは気分が良かった

目の前で這いつくばってゲロゲロ黒いヘドロを吐き出すハルトを見下ろし、鼻歌でも歌いそうな様子でニコニコしている

わざわざ嘔吐する人物の正面を陣取ってしゃがみ込み、自らの膝に頬杖をついて

「また泣いてるねーかわいそー」

と笑う。鼻を突く強烈な匂いも不思議と気にならなかった

「イカちゃん、全部吐き終わるまで止まらないんでしょー?それ」

フロイドはハルトをイカちゃんと呼ぶ。以前毒を吐く姿が墨を吐くアズールを彷彿とさせたからだ。

「アズールはタコだから、ハルトはイカちゃんねぇ」

とフロイドの独断と偏見で決められたあだ名だ

「ジェイドが言ってた。口の中に手ぇ突っ込んで吐かせるんでしょ?」

ハルトは毒に溺れず呼吸をすることに必死で、何一つ答えなかった。

吐瀉物を撒き散らしながらえずくだけだが、フロイドは気分を害すことなく続ける

「でも俺、ジェイドみたいに手袋持ってねぇし…あ、そうだ」

フロイドは反動をつけて立ち上がり、ハルトの背中に回りこむ

背中から抱え込むようにし、四つん這いの状態のハルトのみぞおち辺りに右手の拳を置き、左手でその拳を握り込む

ハルトは何をされるのか予想がつき、血の気が引くのを感じた

「…ゴホッ、…まって、やめろ…」

「イカちゃん、俺ねぇ、絞めるの上手いから安心してね」

毒を吐くあいだに何とか絞り出した言葉は、フロイドにあっけなく無視された

フロイドは、拳を勢い良く自分の方へ引き寄せる。鳩尾に拳がくい込み、腹の中身を強制的に押し出す

「っっ!!!!!」

ハルトは勢い良く噴水のように大量の毒を吐き出し、力尽きたように倒れ込んだ

「危ねっ」

毒の水溜まりの中に落ちそうだったハルトを抱え、フロイドはケラケラ笑う

「すごい量出たね、イカちゃん。えらいえらい」

ハルトは虚ろな目で空を眺めて、笑い転げるフロイドから解放されるのをただ呼吸を繰り返し待っていた



アズールの場合

「お困りの様ですね、ハルトさん?」

「…失せろ…」

「これは手厳しい」

アズールは、今にも床に倒れ込みそうなハルトにニッコリと笑いかけた。その後ろにニヤニヤと口元を緩ませる双子が控えている

「毎度床にぶちまけた毒を片付けるのも大変でしょう?こちらをどうぞ」

嫌味ったらしく差し出されたバケツを見て、ハルトは思いっきり顔を歪める

「…冗談を聞いてる、時間は、無いんだが?」

「いえ、冗談ではありません。ハルトさんの毒を少し分けて頂きたいだけです。」

もちろんタダでとは言いません

「こちらの解毒薬と回復薬を差し上げます。もし呪いを解く手掛りがわかればお教えします。いかがです?」

アズールが呑気に説明する間に、ハルトはどんどん真っ青になりバケツを抱え込んでしゃがみ込む

「まぁ、契約は全て吐き出した後で構いませんよ。バケツの中に吐いてくださいね?」

アズールは胡散臭く笑ってハルトを見下ろす

「フロイド、ジェイド、手伝って差し上げなさい」

「はぁい」

「前回でコツは掴みましたし、安心して下さい」

「かわいそーなイカちゃん、優しくしたげるからねぇ?」

ハルトはゴボッとバケツに毒を吐く。

フロイドに体の自由を奪われ、ゴム手袋の準備をするジェイドを眺め、早くこの時間が終わることを祈った



☆☆☆
機嫌の悪い時のフロイドは「汚ねぇなぁ」って言いながら腹蹴ってくれますたぶん。

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