ここはなんでも売っている

時は放課後。購買部につくと、髑髏のようなペイントを施した褐色肌の男が、白い歯を見せて笑いかけてくれた

この建物…Mr.Sのミステリーショップは、秘密の仲間の伝手でなんでも揃ってる不思議なお店。食材や勉強道具だけでなく、ミイラに謎の円盤、魔法薬の材料など、ほんとになんでも売っている。

彼はここの店長さんなのだ

「サムさん!」

「Hey!小鬼ちゃーん!今日は何をお探しかな?」

声をかけて走りよると、いつものようにカウンターから身を乗り出して聞いてくれる

何を隠そう、彼は私の想い人なのです!かっこいい!

「サムさん、こんにちはー!ツナ缶と卵と…生クリームくださいー」

「IN STOCK NOW!すこし待っておくれよ」

「あと、サムさん下さい!」

「悪いけどそれは売れないなぁ、小鬼ちゃん」

「えー」

サムさんにいつものように言うけど、軽く流される。割と本気なのに。

「いいじゃないですか、常連さんでしょ?」

毎日買ってるんですよ?ツナ缶ばっかり。同居人…同居猫?同居モンスター?が毎日ツナ缶食べたいって言うから

ちょっとむくれた私を見て、サムさんはウインクしながら歯を見せて笑う

「常連さんでも売れるものと売れないものがあるんだよ」

ほら、ツナ缶と卵と生クリーム。と商品を袋にいれて手渡してくれる。

「ありがとう、サムさん!」

晩御飯の材料を受け取り、軽く手を振る。サムさんも片手を上げて、ニッコリ笑ってくれた

「いつもThank You!君の未来に幸運あれ!」

「また明日も来ますね」

「待ってるよ、小鬼ちゃん」




放課後、エース達と別れて、やって来ました購買部!

「サムさーん。今日はツナ缶と、パスタ下さい!」

「IN STOCK NOW!すぐに持ってくるよ」

ジェイドさんからキノコを沢山貰ったので、晩御飯はキノコパスタとキノコ炒めの予定だ。モストロラウンジでも出し切れないくらい収穫出来たんだとか

それから、忘れちゃいけない大事な商品

「あと、サムさん下さいー!」

「それは残念ながら……Hey、小鬼ちゃん?」

「なんですか?サムさん」

いつものように軽く流されちゃうと思ったのに、店の奥に行きかけたサムさんが、急に思い付いたようにこちらを振り返る。

店に立つサムさんはいつも笑顔なのに、今は少し困った様な、考えてる様な顔

「小鬼ちゃん、少し参考に聞きたいんだけど」

「はい?」

「なんでそんなに俺が欲しいの?」

「そりゃ格好良いし、声もいいし…理由は沢山あるけど」

サムさんは静かに瞬きをしてこちらを見ている。なんだか少し恥ずかしい

「好きになっちゃったからですかね?」

首を傾げてサムさんを見上げるといつもの笑顔はなく、なんとも言い難い表情でこちらを見下ろすだけだった



今日も今日とて、放課後のミステリーショップに足を運ぶ

「今日は何をお求め?小鬼ちゃん」

「今日はカレーを作るのでにんじんとー」

たまねぎでしょ、お肉と…といつものように買いたいものを上げていく

「あと隠し味のリンゴと蜂蜜もお願いします!」

「Thank You!他にお望みは?」

「んー、大丈夫です!」

大荷物だねーなんて言いつつ、いつものように荷物を詰めてくれる

その手を見ていると、そういえば…とちらりとこちらに目をやってイタズラを思い付いたような笑顔になるサムさん

「今日は、俺はいらないの?」

一瞬、世界中の時が止まった気がした。いつも軽く告白を流す目の前の彼が、今、なんと言った?

サムさんはもう一度ゆっくり、俺はいらないの?と聞いてくる。すごくすごく、いい笑顔で。

「………へ?まさか、くれるんですか?」

「IN STOCK NOW!………と、言いたいけど売れないね!」

肩を大きく揺らして、目の前の男は笑った。…からかわれた?

「なんで期待させたんですか!!!」

恥ずかしいやらちょっと腹立つやらでついつい大きな声が出てしまう。

「それはね、」

俺が小鬼ちゃんを買うからだよ。なんていいつつ、ポケットから取り出された小さな箱

「え、指輪…」

開けられた箱の中身には、シンプルながらも可愛い小さな指輪が収まっていた

「小鬼ちゃん、お一つくださいな」

「は、はい!大事にしてください!」

ここはMr.Sのミステリーショップ。なんでも売ってる不思議なお店。



☆☆☆
やりやがったな。ツイステ…
こういうことですかわかりません。

サムさんの第一印象は「声低っ」
第二印象は「笑顔胡散臭っ」でした

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