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夏油傑

「お風呂ありがと」

風呂場からリビングに戻ると、傑がソファで寛いでいた。特徴的なお団子結びは解かれ、髪を下ろしている姿は日中よりも色気を感じさせる。
TVには、二人で見ようと昨日レンタルショップで借りた映画のチャプター画面が表示されていた。机には私の好きなジュースとお菓子。それと傑のお酒。
私がお風呂に入ってる間に準備してくれていたみたいだ。

「おかえり。ちゃんと温まった?」

「うん。ありがとう、準備もしてくれて。よくわかったね、どれが見たいって」

借りた映画は沢山あったなか、傑は私が最初にと決めていたものを当てていた。
ふふっと笑いを零し、キミのことだもの、分かるよと言った。
ここに座れとばかりに叩かれた傑の横に腰掛けると、肩に腕がまわされた。それならば遠慮なく甘えてやろうと、私は鍛えられた厚みのある上半身に寄りかかった。
すると、傑がそわそわと身じろぎをした。

「…名前、シャンプーの匂いがする」

「そりゃあ今さっき入ってきたんだもん、するよ」

さもありなん、といった顔でそう返すと、傑は少し照れや居た堪れないような表情で口元に手をやった。

「なんて言うか、その、名前から私と同じ匂いがするなと思って。」

「…は?」

「それで急に、今日ウチに名前が泊まるんだって意識しちゃって。」

「…」

「なんか、その、照れるね?」

傑は耳を少し赤らませながら、こっちを見てはにかんだ。
その表情と言葉で意識させられ、私の顔に熱が集まった。今の私はきっと茹で蛸のように赤いことだろう。

傑が映画観よっか、と照れを誤魔化すようにリモコンを操作し始めた。
触れてる肩、顔の傍に落ちる髪、背中から伝う腕の熱。今になって気になりだした距離の近さで、私は映画など集中出来そうになかった。

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