※下品

バスルームから出ると先にソファに座りながらビールを飲んでいるクロロがいた。ビール飲む姿もイケメンだし、なんなら少し濡れた髪がいつもの四倍くらいの色気を演出している。その余裕な態度がムカつくから追い出してやりたい。

俺さっき思いっきり手繋いじゃったのはなかったことになったの?肩に顔乗せるとか乙女みたいなことしちゃったんですけど?気まずいのは俺だけか、そうか。とことんムカつく野郎だな。

「先に飲んでるぞ」
「俺にも取ってー」
「ん」
「なんで飲みかけ渡した?」
「ん?」
「ん?じゃないから。新しいの取ってよ!」

我儘だなーと冷えたビールを渡される。クロロはソファに座っているけど、隣に座るのも恥ずかしい気がしてソファとテーブルの間に腰を落とす。かつん、とビールをテーブルに置いたクロロの手には見慣れたシルバーリングがはめられていた。

「え、すごいナチュラルに俺の指輪つけてる…」
「貰った」
「あげてないから!」
「外していいって言ったのはナマエだろ?」
「外していい=俺のってこと?盗賊の考えって怖い」
「……少し間違ってるな」
「んー?」
「ナマエは全部が俺のだ」

は。

近付いてくる整った顔から逃げようと退く腰を目敏くみつけて、体重を思いっきりかけるようにクロロが跨り見下ろされる。なおも近づいてくる顔を避けるには後ろに倒れこむしかないが、それは駄目だ。押し倒されるなんて、クロロの思う壺。しかし咄嗟についた後ろ手を崩せば二人で床へ倒れこむ形になってしまう。

どうやら逃げ道は無いらしい。

「むり、こうさん…」

床に背を預ける様に倒れ込めばクロロの手がそっと後頭部を支えてくれる。優しくされたことに本気で恥ずかしくなってきてしまって、バツが悪いから真っ直ぐ俺を見つめる両目から視線をそらす。少し抵抗したくなるのはこれからの行為がどっちが突っ込んで、どっちが突っ込まれるかが一目瞭然だからなのだ。

「…ん、まって、」

覆い被さっているクロロにちゅ、ちゅ、と可愛い音を立てながらキスをされ続ける。制止をかける俺の声も聞いてくれずねじ込まれた舌に必死に自分のを絡ませた。キスが上手くて無性に腹が立つ。負けじと頭を掴んで喉の奥まで舌を突っ込んでやれば、一瞬苦しそうな表情を浮かべるクロロに押し寄せる優越感。このままなら俺が突っ込んでも良さそう、と形成逆転を狙ったところでふとある事に気付く。

「盛り上がったところ悪いんだけど、ゴムもローションも無いや…」

普通に忘れてた。

このマンションに人なんか連れ込んだことないからそういうものは当たり前に置いてないし、ローションとか大体ラブホテルには備わってるから困った事ないし。

驚愕の顔で見つめるクロロにそもそもお前男にちんこ突っ込んだことあんの?とずっと疑問に思っていたことを聞けば、弱々しく無い…と答えながら凭れ掛かってきた。だろうね。その姿が余りにも可哀想で黒髪を撫でつけながら次は用意しようね、と宥める。

「次…次があるのか」
「ないの?そう思ってたの俺だけ?」
「ナマエに突っ込める…」
「嬉しそうな顔しないでキモい」
「俺が彼氏でお前が彼女か?」
「あ、付き合うの?」
「おまっ、ここまできて付き合わないのか!?体目当てか俺の!?」
「うるせえ耳元で叫ぶな!体目当てな訳あるか!」
「俺はナマエの体に触りたい」
「ほんとまじで黙ってお願い黙って。付き合うから黙って」
「言ったな?」

え…。勝ち誇ったように笑ったクロロにぎゅうぎゅうと抱き締められる。重いし痛い。嬉しい、と耳が掠れたクロロの声を拾ったとき無意識に弛む頬に慌てて気付く。

「やっぱだめ」
「…いやだ」
「ちゃんと言って」
「……」
「俺のこと、どう思ってるかちゃんと言って」
「なんだそれ可愛い…。好きだよ、好きなんだよナマエ。俺と付き合おう」
「ふふっ、俺も好き」

背中が痛いのも気にせずに床、かろうじてカーペットの上で抱きしめ合う。ちんこは勃ってるけど。多分クロロも勃ってるけど。そこには触れずに全体重をかけてくるクロロを受け止める。

よく考えたら、いやよく考えなくてもこいつはメンヘラの気があるし。よく考えたら盗賊団のリーダーだし。俺も一応マフィアだし。なんか前途多難な気もしなくもないし。それでも特定の相手なんかいらなかった俺にとって、内側に入れてもいいかなって思ったやつだし。まあ、なんだかその、うん。


付き合う事になりました。


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